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4】淫魔の男②
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4】淫魔の男②
私の名前はアラン。
つい先日、この町に赴任して来たばかりの神父だ。身を清め、清く正しく。まっとうな人生を送ろう、町の人たちの相談に乗ろうとやって来たはずが、どういうわけか淫魔が使い魔になっていた。(信じたくない)
「アラン様?」
アラン様と私を呼んだ男。いや彼が、自称淫魔だという。赴任して早々、起きたら彼にキスされていた。更には覚えていないのかと問われるままに、昨日の出来事を思い出せば昨日も彼にキスされていたことを思い出した。しかも不思議なことに、キスをしていると力が抜けていった。
「君は、本当に淫魔なのか?」
「はい、そうです。ところでアラン様、俺の名前はナイトですよ」
ちゃんと名前を呼ぶようにと、自称淫魔に指摘されてしまう。コホン、と咳払いをして、言葉を続けた。
「ナイト、君は本当に淫魔なのか?」
全身黒づくめに近い恰好を除けば、人間にしか見えない。子供も所作も、どちらかといえば丁寧で、イメージしていた人間以外の悪い魔族ではないし、悪い要素は人の寝込みを襲う以外は別段無い。
(姿だって、どう見ても人間にしか見えないのに……)
しげしげと見ている様子に気づいたのだろう。
「今は隠してるんですが、本当ですよ。ホラ」
そう言うや否や、バサリと突然ナイトの背後に羽と尻尾が現れた。
褐色の肌に、夜の月のような黄色みがかった色の瞳。低いながら耳に残る声は色っぽく、「アラン様」と私を見て笑う彼。その色気は、確かに淫魔といっても差支えがないだろう。
「本当に淫魔……?……っ、私は神父ですよ? なら、貴方を退治するまで……っ!」
「俺は別に悪いことをしていないのに?」
「う゛っ……」
確かにそうだ。現行犯といえば、私にキスしたくらいで、それ以上に酷いことはしていない様子。
「私に会う以前に、何かしていたんじゃないですか?」
「いやいや。俺、最近地上に来たばかりだし。何なら、対人間での淫魔デビューはアラン様が初めてですよ。こんな罪の無い俺に、アラン様は酷いことをしようっていうんですか?」
「うう゛っ……」
そうなってしまえば、退治することも出来ない。(というか、退治ってどうするんだろう)
本当は退治出来ないかもという事は秘密にして、「仕方がないですね……」と渋々とした様子で言った。
「分かりました。ですが、何かしたら、すぐに退治しますからね! というか、使い魔契約なんて、いつの間にしたんですか?」
「昨日アラン様が気を失っている間に、ちょちょっとしました」
パチリとウインクまでつけて、そう言ったナイト。
「はぁ……。ただ、ここに住むなら、家事をすること。いいですね?」
「勿論。俺、結構なんでも出来ますよ」
「……これは興味程度なんですが、どうして私のところに? いけないことですが、淫魔なら同性のところに来るよりも、女性のところへ行くはずでは?」
「いきなりソコ聞いちゃいます? まぁ、アラン様が気にしてくれるなら、俺としては良い傾向ってことで、教えてあげますね。一目惚れです」
「は?」
「だから、俺はアラン様が好きになったので、アラン様から食事を貰えばいいのではと思って。悩むより行動したんです」
「は??」
淫魔が? 私を?? 好き???
何だかおかしなことになっている気がするが、この時の私は深く考えることが出来なかった。
*******
更新しました!
お気に入り・エール・イイネほか有難うございます(^^)
私の名前はアラン。
つい先日、この町に赴任して来たばかりの神父だ。身を清め、清く正しく。まっとうな人生を送ろう、町の人たちの相談に乗ろうとやって来たはずが、どういうわけか淫魔が使い魔になっていた。(信じたくない)
「アラン様?」
アラン様と私を呼んだ男。いや彼が、自称淫魔だという。赴任して早々、起きたら彼にキスされていた。更には覚えていないのかと問われるままに、昨日の出来事を思い出せば昨日も彼にキスされていたことを思い出した。しかも不思議なことに、キスをしていると力が抜けていった。
「君は、本当に淫魔なのか?」
「はい、そうです。ところでアラン様、俺の名前はナイトですよ」
ちゃんと名前を呼ぶようにと、自称淫魔に指摘されてしまう。コホン、と咳払いをして、言葉を続けた。
「ナイト、君は本当に淫魔なのか?」
全身黒づくめに近い恰好を除けば、人間にしか見えない。子供も所作も、どちらかといえば丁寧で、イメージしていた人間以外の悪い魔族ではないし、悪い要素は人の寝込みを襲う以外は別段無い。
(姿だって、どう見ても人間にしか見えないのに……)
しげしげと見ている様子に気づいたのだろう。
「今は隠してるんですが、本当ですよ。ホラ」
そう言うや否や、バサリと突然ナイトの背後に羽と尻尾が現れた。
褐色の肌に、夜の月のような黄色みがかった色の瞳。低いながら耳に残る声は色っぽく、「アラン様」と私を見て笑う彼。その色気は、確かに淫魔といっても差支えがないだろう。
「本当に淫魔……?……っ、私は神父ですよ? なら、貴方を退治するまで……っ!」
「俺は別に悪いことをしていないのに?」
「う゛っ……」
確かにそうだ。現行犯といえば、私にキスしたくらいで、それ以上に酷いことはしていない様子。
「私に会う以前に、何かしていたんじゃないですか?」
「いやいや。俺、最近地上に来たばかりだし。何なら、対人間での淫魔デビューはアラン様が初めてですよ。こんな罪の無い俺に、アラン様は酷いことをしようっていうんですか?」
「うう゛っ……」
そうなってしまえば、退治することも出来ない。(というか、退治ってどうするんだろう)
本当は退治出来ないかもという事は秘密にして、「仕方がないですね……」と渋々とした様子で言った。
「分かりました。ですが、何かしたら、すぐに退治しますからね! というか、使い魔契約なんて、いつの間にしたんですか?」
「昨日アラン様が気を失っている間に、ちょちょっとしました」
パチリとウインクまでつけて、そう言ったナイト。
「はぁ……。ただ、ここに住むなら、家事をすること。いいですね?」
「勿論。俺、結構なんでも出来ますよ」
「……これは興味程度なんですが、どうして私のところに? いけないことですが、淫魔なら同性のところに来るよりも、女性のところへ行くはずでは?」
「いきなりソコ聞いちゃいます? まぁ、アラン様が気にしてくれるなら、俺としては良い傾向ってことで、教えてあげますね。一目惚れです」
「は?」
「だから、俺はアラン様が好きになったので、アラン様から食事を貰えばいいのではと思って。悩むより行動したんです」
「は??」
淫魔が? 私を?? 好き???
何だかおかしなことになっている気がするが、この時の私は深く考えることが出来なかった。
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