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174】「とある悩み」の今後について③
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174】「とある悩み」の今後について③
レオ殿の家まで、そう時間はかからなかった。道中、声を掛けられた記憶はあるが、どうやって返事をしたのかも曖昧だ。これからレオ殿の家に行くと思ったまま、緊張して時間の感覚が無かったんだと思う。
「アラン様。見えてきましたよ」
「あ! はい!」
その一言に、ハッとしたのが少し前。周囲には街並みも人の姿も無く。生い茂る自然の緑ばかりだった。
(着いてしまった)
緊張しているのは、私だけだろう。レオ殿は、いたって普通だ。何だか私ばかり、本当に変だ。気にし過ぎなのだ。私だって大人だし、いくら恋愛経験が無いとはいえ何を考えているんだ。
うんうんと家に着くまでの残りの距離は、自分を落ち着かせるのに必死だった。
「さぁ、どうぞ」
「お邪魔します……」
扉を開けてくれたレオ殿。仕草の一つ一つが以前よりも恰好良く見えるようになってしまったのは、私がレオ殿を好きだと意識しているせいだろうか。
チラリと視線が合ったまま、一歩家の中へ。ギィッ……とレオ殿が最後に扉を閉めようとしたかと思えば、ガチリと鍵が締まる音とともに、私は壁とレオ殿に挟まれていた。
「レオ殿……!? んっ、ぅ……────!」
ローブのフードが、私に口づけする勢いで脱げた。綺麗な顔がすぐに近づいて、一度触れた唇が、今度は舌をねじ込んでくる。
「ふ、ぅ、ぁ゛……っ」
ちゅっ……ヌロッ……クチチッ……ちゅっ、ちゅぷっ……♡
「は……ぁ……♡」
くちゅっ……♡と最後に小さな水音を立て、ようやくレオ殿の舌先が出て行った。一気に酸欠だ。クラリとする頭に、背中に板があって良かったと思う。
「なんっ……」
何ですか。何をするんですか、突然。
そんなことを言いたいが、私の口は回らない。それどころか、トロリと頭も身体も溶けようとしている。駄目だ。力が入らない。はぁっ……と呼吸をしながら、レオ殿を見れば、嬉しそうな表情を浮かべ、眼差しは優しく。
「すみません、余裕なくて。嬉しくて口づけをしてしまいました」
「そう……ですか……」
そう言われてしまえば、叱ることも出来ない。
「ふふっ」
「何で笑ってるんですか?」
近い。視線を逸らすことも出来ないくらいレオ殿の顔が近くて、また呼吸が苦しくなる。
「嬉しい気持ちが止まらなくて」
「嬉しい?」
「はい。だって、今の。俺たちにとって、初めての恋人同士の口づけでしょう?」
今までと特別だと言うあたり、レオ殿は意外とロマンチストなのかもしれない。
「恋人で良いですか? 私たち」
「え!? 俺たち、両想いですよね? もう一度、言いますよ。いや、何度でも言いますよ。アラン様、好きです。俺の恋人になって下さい」
「……はい、宜しくお願いします」
気になっていた一つは解決して良かった。ちゃんと私たちは、恋人同士になった。
「レオ殿は、意外とロマンチストなんですね」
ついうっかり、思ったことを口にしてしまった。そうすれば、今度は触れるだけの口づけを落とされる。すぐに離れたかと思えば、またまっすぐに私を見つめたままレオ殿が言った。
「アラン様限定ですけどね」
「……あなたって人は……!」
随分と甘い空気に、やはり私も浮かれているのだ。
******
更新しました
お気に入り・エール・イネ・コメント有難うございます!嬉しいです
レオ殿の家まで、そう時間はかからなかった。道中、声を掛けられた記憶はあるが、どうやって返事をしたのかも曖昧だ。これからレオ殿の家に行くと思ったまま、緊張して時間の感覚が無かったんだと思う。
「アラン様。見えてきましたよ」
「あ! はい!」
その一言に、ハッとしたのが少し前。周囲には街並みも人の姿も無く。生い茂る自然の緑ばかりだった。
(着いてしまった)
緊張しているのは、私だけだろう。レオ殿は、いたって普通だ。何だか私ばかり、本当に変だ。気にし過ぎなのだ。私だって大人だし、いくら恋愛経験が無いとはいえ何を考えているんだ。
うんうんと家に着くまでの残りの距離は、自分を落ち着かせるのに必死だった。
「さぁ、どうぞ」
「お邪魔します……」
扉を開けてくれたレオ殿。仕草の一つ一つが以前よりも恰好良く見えるようになってしまったのは、私がレオ殿を好きだと意識しているせいだろうか。
チラリと視線が合ったまま、一歩家の中へ。ギィッ……とレオ殿が最後に扉を閉めようとしたかと思えば、ガチリと鍵が締まる音とともに、私は壁とレオ殿に挟まれていた。
「レオ殿……!? んっ、ぅ……────!」
ローブのフードが、私に口づけする勢いで脱げた。綺麗な顔がすぐに近づいて、一度触れた唇が、今度は舌をねじ込んでくる。
「ふ、ぅ、ぁ゛……っ」
ちゅっ……ヌロッ……クチチッ……ちゅっ、ちゅぷっ……♡
「は……ぁ……♡」
くちゅっ……♡と最後に小さな水音を立て、ようやくレオ殿の舌先が出て行った。一気に酸欠だ。クラリとする頭に、背中に板があって良かったと思う。
「なんっ……」
何ですか。何をするんですか、突然。
そんなことを言いたいが、私の口は回らない。それどころか、トロリと頭も身体も溶けようとしている。駄目だ。力が入らない。はぁっ……と呼吸をしながら、レオ殿を見れば、嬉しそうな表情を浮かべ、眼差しは優しく。
「すみません、余裕なくて。嬉しくて口づけをしてしまいました」
「そう……ですか……」
そう言われてしまえば、叱ることも出来ない。
「ふふっ」
「何で笑ってるんですか?」
近い。視線を逸らすことも出来ないくらいレオ殿の顔が近くて、また呼吸が苦しくなる。
「嬉しい気持ちが止まらなくて」
「嬉しい?」
「はい。だって、今の。俺たちにとって、初めての恋人同士の口づけでしょう?」
今までと特別だと言うあたり、レオ殿は意外とロマンチストなのかもしれない。
「恋人で良いですか? 私たち」
「え!? 俺たち、両想いですよね? もう一度、言いますよ。いや、何度でも言いますよ。アラン様、好きです。俺の恋人になって下さい」
「……はい、宜しくお願いします」
気になっていた一つは解決して良かった。ちゃんと私たちは、恋人同士になった。
「レオ殿は、意外とロマンチストなんですね」
ついうっかり、思ったことを口にしてしまった。そうすれば、今度は触れるだけの口づけを落とされる。すぐに離れたかと思えば、またまっすぐに私を見つめたままレオ殿が言った。
「アラン様限定ですけどね」
「……あなたって人は……!」
随分と甘い空気に、やはり私も浮かれているのだ。
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