171 / 175
171】【番外編】とある賢者の報告
しおりを挟む
171】【番外編】とある賢者の報告
「王様、王様、王様~~!」
「おおっ! どうしたんじゃ、レオ。お主、先ほど帰ったばかりじゃろうに」
大変です! という様子ではないが、俺は速足で王様の元へとやって来た。それこそ、アラン様を穏やかに見送って、俺は出来る男なのでと雰囲気を醸し出し。アラン様の姿が見えなくなったのを確認し、すぐに王様の所へ。(だって、好きな人の前では格好良くいたいだろう?)
王様の言葉通り。俺は、恋バナをするだけして、出て行ったばかり。それこそ、お昼から仕事が無いぞと浮かれていた。だが、状況が変わったんだ。
「王様と、また内緒の話があるので!」
そう言って、今度は自分で門番に伝え門を閉めた。ローブが暑いと、汗をかき。速足で僅かに乱れた呼吸を整える。
「なんじゃ、お主……そんな嬉しそうな顔をして」
「ああ、顔に出てます?」
不味いな。そっと隠すように口元を手で覆ったが、遅かったらしい。
「出てるもなにも、嬉しそうにニヤついておるぞ」
「ニヤついてって……ゴホン、王様」
「うん?」
そのままズカズカと、いつものように王様の元へ近づく。耳打ちするように口元を覆った手を、今度はそっと王様の耳元へ。
「何じゃ、誰にも言えぬことか?」
ひそっ……と俺は王様に囁いた。
「俺の恋、実ったみたいです」
「なんと!!??」
バッ! とすぐに俺の方を見る王様。驚いた表情に、俺の方もニンマリと笑う。(ああ、駄目だ。今度は自覚があるくらい、笑ってしまっている)
「いつの間に!? 先ほど出て行ったばかりじゃろうが、一体何があったんじゃ! 教えてくれ、レオ!」
「仕方ないですねぇ……また俺が恋バナしてあげましょう!」
「れ、レオ~!」
とまぁ。手の平返しも良いところな勢いで、俺は恋バナ。もとい、ついさっきあった出来事を伝え、自慢しようとした。
「いいですか? また、絶対誰にも話してはいけませんよ?」
「勿論じゃ! 頼む、早く聞かせてくれ!」
「分かりましたよ。さっき、戻っている最中に偶然好きな人の姿を見かけましてね。まぁ、色々あって待ち伏せするようにその人の通る道に先回りしたんですよ」
「ちょっとお主怖いのぅ」
「やっぱり俺に辺りが強いままなんですが?」
「気にせず続けてくれ」
「まぁ、色々あったのでね。色々見てしまったので、もうこれは一言言わなくちゃって思って」
「色々見て、色々あった?」
「ここは言えないので。まぁ、それを素直に相手に伝えたんですよ。それから、相手の気持ちを確認するように囲い込んだんです」
「囲い込む?」
「王様、何でちょっと引いているんですか」
「いや、お主。その相手にだけは普段と違って随分としゅ……熱心じゃと思ってな」
「何も怖いことはしていませんよ。俺は賢者ですよ? それは優しく教えてあげたんです。その気持ちはどういうものか。俺も同じ気持ちですよって。言っときますけど、結構ロマンチックな雰囲気だったんですよ」
「そうか……まぁ、お主と相手が幸せなら良いかのぅ」
「そうですよ。野暮ってもんです」
「それで? 相手はきちんと気持ちに気付いたのか?」
「そりゃあもう! 好きだと俺の目を見て言ってくれました。忙しい人なので、すぐに別々になったところなんですが……! 好きですよ? 好き。もう俺たち、恋人同士ってことでいいですよね?」
「そうじゃのぅ……。好きならば、そういうことなんじゃろうて。しかしまぁ、良かったの! レオ!」
「はい!」
「お主のそんな顔、初めて見たわい」
「また俺、ニヤついてます?」
「まぁ、それなりに」
「ということで、王様」
「うん?」
「ちょっと俺、一週間くらい休み貰いますね」
「は?」
「それと、アラン様も」
「アランも?」
「王様は名探偵なんですよね?」
「!? お主、まさか……!?」
「じゃあ、そういうことで。今度こそ俺は帰りますね」
「レオ、レオッ……! アランに無理をさせるでないぞ……!」
「善処します」
隠しておくつもりが、うっかり口を滑らせたのは今後の牽制のためか。それとも浮かれてしたからか。
*******
更新しました
お気に入り・エール・イイネ・コメント有難うございます!
次の話くらいで完結出来たらなと思っています><
「王様、王様、王様~~!」
「おおっ! どうしたんじゃ、レオ。お主、先ほど帰ったばかりじゃろうに」
大変です! という様子ではないが、俺は速足で王様の元へとやって来た。それこそ、アラン様を穏やかに見送って、俺は出来る男なのでと雰囲気を醸し出し。アラン様の姿が見えなくなったのを確認し、すぐに王様の所へ。(だって、好きな人の前では格好良くいたいだろう?)
王様の言葉通り。俺は、恋バナをするだけして、出て行ったばかり。それこそ、お昼から仕事が無いぞと浮かれていた。だが、状況が変わったんだ。
「王様と、また内緒の話があるので!」
そう言って、今度は自分で門番に伝え門を閉めた。ローブが暑いと、汗をかき。速足で僅かに乱れた呼吸を整える。
「なんじゃ、お主……そんな嬉しそうな顔をして」
「ああ、顔に出てます?」
不味いな。そっと隠すように口元を手で覆ったが、遅かったらしい。
「出てるもなにも、嬉しそうにニヤついておるぞ」
「ニヤついてって……ゴホン、王様」
「うん?」
そのままズカズカと、いつものように王様の元へ近づく。耳打ちするように口元を覆った手を、今度はそっと王様の耳元へ。
「何じゃ、誰にも言えぬことか?」
ひそっ……と俺は王様に囁いた。
「俺の恋、実ったみたいです」
「なんと!!??」
バッ! とすぐに俺の方を見る王様。驚いた表情に、俺の方もニンマリと笑う。(ああ、駄目だ。今度は自覚があるくらい、笑ってしまっている)
「いつの間に!? 先ほど出て行ったばかりじゃろうが、一体何があったんじゃ! 教えてくれ、レオ!」
「仕方ないですねぇ……また俺が恋バナしてあげましょう!」
「れ、レオ~!」
とまぁ。手の平返しも良いところな勢いで、俺は恋バナ。もとい、ついさっきあった出来事を伝え、自慢しようとした。
「いいですか? また、絶対誰にも話してはいけませんよ?」
「勿論じゃ! 頼む、早く聞かせてくれ!」
「分かりましたよ。さっき、戻っている最中に偶然好きな人の姿を見かけましてね。まぁ、色々あって待ち伏せするようにその人の通る道に先回りしたんですよ」
「ちょっとお主怖いのぅ」
「やっぱり俺に辺りが強いままなんですが?」
「気にせず続けてくれ」
「まぁ、色々あったのでね。色々見てしまったので、もうこれは一言言わなくちゃって思って」
「色々見て、色々あった?」
「ここは言えないので。まぁ、それを素直に相手に伝えたんですよ。それから、相手の気持ちを確認するように囲い込んだんです」
「囲い込む?」
「王様、何でちょっと引いているんですか」
「いや、お主。その相手にだけは普段と違って随分としゅ……熱心じゃと思ってな」
「何も怖いことはしていませんよ。俺は賢者ですよ? それは優しく教えてあげたんです。その気持ちはどういうものか。俺も同じ気持ちですよって。言っときますけど、結構ロマンチックな雰囲気だったんですよ」
「そうか……まぁ、お主と相手が幸せなら良いかのぅ」
「そうですよ。野暮ってもんです」
「それで? 相手はきちんと気持ちに気付いたのか?」
「そりゃあもう! 好きだと俺の目を見て言ってくれました。忙しい人なので、すぐに別々になったところなんですが……! 好きですよ? 好き。もう俺たち、恋人同士ってことでいいですよね?」
「そうじゃのぅ……。好きならば、そういうことなんじゃろうて。しかしまぁ、良かったの! レオ!」
「はい!」
「お主のそんな顔、初めて見たわい」
「また俺、ニヤついてます?」
「まぁ、それなりに」
「ということで、王様」
「うん?」
「ちょっと俺、一週間くらい休み貰いますね」
「は?」
「それと、アラン様も」
「アランも?」
「王様は名探偵なんですよね?」
「!? お主、まさか……!?」
「じゃあ、そういうことで。今度こそ俺は帰りますね」
「レオ、レオッ……! アランに無理をさせるでないぞ……!」
「善処します」
隠しておくつもりが、うっかり口を滑らせたのは今後の牽制のためか。それとも浮かれてしたからか。
*******
更新しました
お気に入り・エール・イイネ・コメント有難うございます!
次の話くらいで完結出来たらなと思っています><
63
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる