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169】思い出だけでは足りないらしい③
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169】思い出だけでは足りないらしい③
変だ。病気でも無い。走ったわけでもないのに、呼吸が苦しい。心臓が速くて、煩くて。ドキドキと鳴り続ける心臓を沈める術を教えて欲しい。
レオ殿のローブに隠れた身体を、そっと腕の力を籠めるように。身体に引き寄せるようにレオ殿の腕に力が籠るのが分かった。隠れたいと言うのに、レオ殿が私の顔を見たいという。見せられるわけない。
「私は、変なのに……!」
また顔をレオ殿のローブに押し当てたが、レオ殿はそんな私を変じゃないと言った。
「変じゃないですよ。アラン様。いい加減、諦めて俺と答え合わせしましょう?」
もうしょうがない。迷ったって仕方がない。それに、苦しさにも開放されたい。そう思った私は、レオ殿の言葉にまたコクリと首を縦に振った。
「アラン様」
レオ殿が私の背中から腕を離す。私も一歩下がって、身体を離した。観念したように顔を上げれば、優しい。それでいて、私の方が照れるくらい何だか甘い表情をしたレオ殿と目が合った。
「やっぱり変じゃないですよ。可愛いです」
ニコリと笑ったレオ殿に、また胸がドキンと鳴る。モンスター退治の時や、危険な状況の時のようなドキドキとした心臓は、死と隣り合わせの恐怖とは異なり。表現しがたい歓喜と切なさを感じていた。
「アラン様。今度は俺に触ってみて下さい」
レオ殿が私の手をとって、先ほど隠れたローブの下。ローブで隠れているが、鍛えられた身体に衣服超しに触れる。
スーッ……ハァー……。
レオ殿が深呼吸して、置かれた手の平が胸が上下する大きさに沿って動いた。
…………ドキドキドキ。
「え……?」
心臓は常に動いていることは知っている。ただ、それがレオ殿と一緒にいると。不意に意識すると、速くなってしまう。今だってそうだ。変だと思い、助けて欲しいと思っていたのに、沈黙の中。手の平の脈のように伝わってくる心音は、私と同じく。何だか早く脈打っている気がした。
「分かります? 俺ね、今凄いドキドキドキしてるんですよ。今だけじゃなく、結構二人きりの時とか。余裕ぶってましたが、全然余裕なんか無かったんですよ」
「私と同じ……?」
「ええ、同じです。好きな人のことを意識してたら、なんかこう……ドキドキしちゃうんですよね」
「好きな人……」
「まだ納得しませんか? じゃあ、アラン様。俺が他の人と、口づけしていたらどうしますか?」
「それは……レオ殿のことなので、私がどうこう言える問題では……」
「じゃあ、質問を変えます。想像したら、どう感じましたか?」
レオ殿が、誰かと口づけをしていたら?
それこそ、街中で女性と仲睦まじい姿を見た時も、私の胸はチクリと痛んだ。同時に、根底にあるのは、「嫌だ」という気持ち。だが、これは我がままじゃないだろうか? 押しつけにならないだろうか? だけれど、私は答えを見つけるために言わなければならない。
「アラン様?」
「……です。嫌です……すみません。きっと我がままだと分かっているんですが、嫌です」
「なら、答えは出てるじゃないですか」
「わ……私は……レオ殿が好き……?」
「ははっ、何で疑問形何ですか。ちゃんと言って下さいよ、アラン様」
「すき……好きです……」
一度口に出してしまえば、ストンと何か納得する感覚があった。それから、一気にキラキラと光って見える。
私の言葉に、今まで見た中で一番の笑顔を見えたレオ殿。クシャリと笑った顔が可愛く思え、思わず抱きしめたくなった。
そんな時だ。
夢でも見ているような、それこそ二人の世界は現実へと呼び戻される。
「アラン様? アラン様はいらっしゃいませんか?」
「あ! 呼ばれているようなので、私はこれで!」
「待って下さい。今の言葉、絶対忘れないで下さいよ?」
「……分かっています」
「じゃあ、また今度」
「はい」
そうして私は、レオ殿の傍から離れ。レオ殿の背後、廊下の離れたところで名前を呼んでいる文官殿の方へと向かった。
******
更新しました!
お気に入り・エール・イイネ・コメント有難うございます!(⌒∇⌒)嬉しいです
もうこのまま終わりそうですね…!よければお付き合い頂ければ幸いです
といいつつ、次することないので白紙ですorz
変だ。病気でも無い。走ったわけでもないのに、呼吸が苦しい。心臓が速くて、煩くて。ドキドキと鳴り続ける心臓を沈める術を教えて欲しい。
レオ殿のローブに隠れた身体を、そっと腕の力を籠めるように。身体に引き寄せるようにレオ殿の腕に力が籠るのが分かった。隠れたいと言うのに、レオ殿が私の顔を見たいという。見せられるわけない。
「私は、変なのに……!」
また顔をレオ殿のローブに押し当てたが、レオ殿はそんな私を変じゃないと言った。
「変じゃないですよ。アラン様。いい加減、諦めて俺と答え合わせしましょう?」
もうしょうがない。迷ったって仕方がない。それに、苦しさにも開放されたい。そう思った私は、レオ殿の言葉にまたコクリと首を縦に振った。
「アラン様」
レオ殿が私の背中から腕を離す。私も一歩下がって、身体を離した。観念したように顔を上げれば、優しい。それでいて、私の方が照れるくらい何だか甘い表情をしたレオ殿と目が合った。
「やっぱり変じゃないですよ。可愛いです」
ニコリと笑ったレオ殿に、また胸がドキンと鳴る。モンスター退治の時や、危険な状況の時のようなドキドキとした心臓は、死と隣り合わせの恐怖とは異なり。表現しがたい歓喜と切なさを感じていた。
「アラン様。今度は俺に触ってみて下さい」
レオ殿が私の手をとって、先ほど隠れたローブの下。ローブで隠れているが、鍛えられた身体に衣服超しに触れる。
スーッ……ハァー……。
レオ殿が深呼吸して、置かれた手の平が胸が上下する大きさに沿って動いた。
…………ドキドキドキ。
「え……?」
心臓は常に動いていることは知っている。ただ、それがレオ殿と一緒にいると。不意に意識すると、速くなってしまう。今だってそうだ。変だと思い、助けて欲しいと思っていたのに、沈黙の中。手の平の脈のように伝わってくる心音は、私と同じく。何だか早く脈打っている気がした。
「分かります? 俺ね、今凄いドキドキドキしてるんですよ。今だけじゃなく、結構二人きりの時とか。余裕ぶってましたが、全然余裕なんか無かったんですよ」
「私と同じ……?」
「ええ、同じです。好きな人のことを意識してたら、なんかこう……ドキドキしちゃうんですよね」
「好きな人……」
「まだ納得しませんか? じゃあ、アラン様。俺が他の人と、口づけしていたらどうしますか?」
「それは……レオ殿のことなので、私がどうこう言える問題では……」
「じゃあ、質問を変えます。想像したら、どう感じましたか?」
レオ殿が、誰かと口づけをしていたら?
それこそ、街中で女性と仲睦まじい姿を見た時も、私の胸はチクリと痛んだ。同時に、根底にあるのは、「嫌だ」という気持ち。だが、これは我がままじゃないだろうか? 押しつけにならないだろうか? だけれど、私は答えを見つけるために言わなければならない。
「アラン様?」
「……です。嫌です……すみません。きっと我がままだと分かっているんですが、嫌です」
「なら、答えは出てるじゃないですか」
「わ……私は……レオ殿が好き……?」
「ははっ、何で疑問形何ですか。ちゃんと言って下さいよ、アラン様」
「すき……好きです……」
一度口に出してしまえば、ストンと何か納得する感覚があった。それから、一気にキラキラと光って見える。
私の言葉に、今まで見た中で一番の笑顔を見えたレオ殿。クシャリと笑った顔が可愛く思え、思わず抱きしめたくなった。
そんな時だ。
夢でも見ているような、それこそ二人の世界は現実へと呼び戻される。
「アラン様? アラン様はいらっしゃいませんか?」
「あ! 呼ばれているようなので、私はこれで!」
「待って下さい。今の言葉、絶対忘れないで下さいよ?」
「……分かっています」
「じゃあ、また今度」
「はい」
そうして私は、レオ殿の傍から離れ。レオ殿の背後、廊下の離れたところで名前を呼んでいる文官殿の方へと向かった。
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もうこのまま終わりそうですね…!よければお付き合い頂ければ幸いです
といいつつ、次することないので白紙ですorz
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