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88】隣国からの客人②

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88】隣国からの客人②

「アラン様、良いところに!」

レオ殿の姿を数日見かけておらず、最後に会った時の自身の態度に不味いと焦り出した。もしかして私の態度に怒って、会わないようにしているのでは? 考え出すと、焦りが一気にやってくる。すぐに謝らなくてはと、私は急いで部屋を出て。文官殿たちの窓口を訪れた。残念ながら、レオ殿の姿は無い。しょうがないと思いつつ、レオ殿へと伝言を聞いてくれようとする文官殿に、感謝を述べつつ自分で伝えると話していた時だった。

「ア、 アラン様―!」

別の文官殿が、私の名前を呼びながら走ってやって来る。
はぁはぁと呼吸も荒く、よほど何かあったのだろうかと、文官殿に大丈夫ですかと声をかけながら、呼吸が落ち着くのを待っていると、客人が来ていると教えてくれた。


「来賓です。王様とアラン様にお会いしたいと、隣国のナイト様がお見えになっております。今待合室で賢者様がご対応頂いているのですが、アラン様はとおっしゃっておいでで……」

(ナイト殿が?)

ナイト殿。隣国の国の方で、私と同じ騎士団長だ。身分は貴族だというのに、騎士団を希望し文武両断の才能を見せ騎士団長となっている。
最近お会いしていないので、再会できるのは嬉しい。だが、今レオ殿が対応頂いていると聞き、どうしようかと思ってしまった。

(公私混同は良くないな)

「分かった。私もすぐに向かおう」

「有難うございます!」

切り替えなければ。私はすぐに返事をし、ナイト殿に会うべく待合室へと急いだのだった。


 待合室までは、距離がある。コツコツと歩く速度を速め、途中自身の恰好に不備が無いか確認。軽装ではあるが、休日のようなラフさはない。失礼にはあたらないだろとう思いつつ、もうすぐ待合室だ。廊下を抜け、城門に近く草花に囲まれた待合室が見えて来て、そこに二つの人影が見えた。一つは探していた白いローブ姿と、もう一つは一括りされた艶やかな長髪の後ろ姿。

「ナイト殿!」

私を呼びに来た文官殿ほどではないが、子供のように私も駆け出してしまった。私の声に、後ろ姿の身体がクルリと振り返る。

「おや、アラン殿」

ニコリと穏やかに微笑んだ顔は、間違いなくナイト殿だった。
待合室に入れば、二人の視線が一斉にこちらを向いてくる。はしゃぎ過ぎてしまったようで恥ずかしかったが、嬉しいのは事実なので仕方がない。

「ナイト殿。お久しぶりです、お元気そうで何よりです」

「こちらこそ、アラン様。アラン様もお元気そうで何よりです」

「レオ殿も有難うございました」

ペコリと会釈して、もう大丈夫ですよと目配せすれば、レオ殿の方もニコリと微笑む。その笑顔が、どこか機嫌が悪い時の笑顔に似ていて、まだ私に怒っているだろうかと内心傷ついた。

「レオ殿?」

「アラン様。俺の方も、久しぶりですね。本当にお元気そうで何よりです」

「ええ、ああ、はい……まぁ」

「どうされました? アラン殿」

「いえ、ナイト殿はお気になさらず」
「賢者殿。あなたのお話は楽しかったです。流石、国一番の賢者様ですね」

「ええ、それほどでもありますけど」

「レオ殿!」

なんだか二人の空気がチクチクしている……? いや、そんなまさか。
おかしいな? と思いつつ、私は二人の間に静かに座ったのだった。

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