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40】次の日の朝、どこからともなく現れた

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40】次の日の朝、どこからともなく現れた

 自慰を控えていたものの、レオ殿の助言に魔が差した私がいけなかった。

(つい昨日は心の中でレオ殿のせいにしてしまったが、私が欲に負けてしまった私が一番悪かったな……)

朝。昨日の今日で寝不足の身体を、ゆっくりとベッドから起こす。
昨夜はペニスに溜まった熱だけじゃない。胸部、身体全体に溜まった熱が冷めるまで時間がかかり、なんだかんだで眠れなかった。

「まずは起きなければ……」

身支度を整えようと鏡で見た自分の顔に、久しぶりに隈を見た。これでは、周囲にも私が寝不足だとバレてしまう。

「しっかりしろ、私」

自慰をし過ぎて眠れませんでした、なんて言えるはずない。すーっ……と深呼吸を一つ。それからパンッ! と両頬を叩き。部屋から一歩出て、今日も私は騎士団長・アランとして気を引き締めようと外に出た。

「今日は何か依頼があるだろうか」

コツコツとブーツの足音を鳴らし、いつものように文官殿の元へ。

「おはようございます、文官殿」

「おや、アラン様」

「はい」

朝の挨拶をすれば、文官殿が何かに気づいたように「おや」と言った。私は極力笑顔を作っていたが、内心焦る。

「アラン様、大丈夫ですか?」

「何がですか? 私はほら、この通り元気ですよ」

ね? と隈について触れられそうな気配を察し、話を終えようとしたが甘かったらしい。


「どうしたんですか?」


「賢者様」
「レオ殿」

ニコリと笑って、私と文官殿の間に現れたのはレオ殿だ。まるで私たち騎士団員が戦闘に臨む時のように気配を消して、ヌッ……と現れた。

(よりにもよって、レオ殿がいるだなんて……!)

絶対に揶揄われてしまう。
どうにかその場を離れようと、穏便に文官殿との会話を終わらせようとしたが、私を気遣ってくれる文官殿の言葉は私よりも早く口から出ていた。

「賢者殿。アラン様の顔が、酷く疲れていて」

「どれ? おや、本当だ」

またヌッ……と、私の前にレオ殿の顔が現れる。文官殿にはレオ殿の背中しか見えないが、私にはレオ殿端正な顔が笑っているのが丸見え。最後に離れていく際、僅かに目を細め、何か意味ありげに笑った顔に焦った。

(まだ長い付き合いではないが、こんな表情をする時のレオ殿は大体意地悪だ)

それからヒラリと踵を返し、おおげさな様子で言った。

「文官殿。これは確かに、文官殿がおっしゃる通り。クッキリとした隈がありますね。アラン様は寝不足なのでは? やはり騎士団長ともあれば、我々民と国のことを王様の次に思ってくれているはず」

「アラン様、なんとお優しい……」

これは何だが不味い方向に話が進みそうだぞ? と焦るのが分かった。

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