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56】料理チャンネルはしないらしい
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56】料理チャンネルはしないらしい
「圭。今時間ある?」
「ありまくり。どうした?」
俺がうっかり好きだと言って、数日。俺たちの生活は、別段大きな変化はない。どうにか上手く誤魔化せたようだ。
「良かったら、新しい動画上げてみたから見て」
「見る見る!」
今日も北斗が作った夕食を食べ終え、ゆっくりとしていた時だった。北斗が俺の名前を呼んで、パソコンを持ってくる。片付けの終わったテーブルの上に置いて、俺たちのチャンネルに繋げた。
「何をアップしたんだ?」
「見てからのお楽しみ」
「変なのじゃないよな?」
「圭が可愛いやつだから大丈夫だよ」
そんな会話をしていれば、北斗が投稿したという新しい動画が流れ始めた。配信と違ってドラマなんかの始まりみたいに俺たち二人の紹介が流れたあと、「はい!」と俺たち二人の姿が現れる。エプロン姿の俺たちがいて、俺は準備万端とばかりに座っていた。
『今日は、北斗の手料理を自慢したいと思います』
どうやら料理特集らしい。そういえば前に、北斗の手料理を沢山食べたことがあったな。
「料理沢山食べた時のか!」
「うん」
動画は、料理チャンネルとも思えるくらい丁寧に食材の分量だとか、作っている工程を見せていた。俺が待っている間に、北斗はワザワザ工程まで録画していたのか。
コメント欄は、また温かいコメントが付き始めている。美味しそうだとか、お料理男子だとか。途中俺が野菜スティックを食べている動画も入り(いつの間に撮ってたんだ)、ウサギだとかリスだとか言われていた。
動画はよくある、それから数分後……とテロップが入り、美味しそうな料理が並ぶ。動画の中の俺も嬉しそうなリアクションをしていた。
『わ~~! 俺が好きな料理ばっかりだ! 北斗、有難う! 大好き!』
『圭の胃袋も掴んでおこうと思って』
『もう俺、北斗に掴まれまくりなのに!?』
動画の中と俺は、また平気で「好き」だとか「大好き」だと言っていた。自分自身とはいえ、羨ましくなる。俺が急に黙り込むものだから、画面ではなく北斗の顔が俺の前に現れた。
「圭? どうしたの?」
「あ、いや! この時の北斗の料理美味しかったなって思って」
「圭の好きなものなら、いつだって作るよ。今日食べる?」
「良いのか? じゃあ、この鮭のムニエル? 食べたい」
「じゃあ、あとで一緒に買い物に行こうか」
俺に甘い北斗に、甘える俺。ニコリと微笑む顔に、俺もつられて笑顔になる。
「機嫌治った?」
「別に機嫌が悪かったわけじゃ……」
ツンと唇と尖らせば、両頬を軽い力で掴まれた。更に口が尖ってタコみたいになる。
「!?」
「ふふっ。可愛いタコだ。今日はタコも買おうかな?」
「もう!」
気づけば動画は終わっていて、チャンネル登録と評価が増えていた。
「北斗、別に料理チャンネルをしても良いかもな」
俺とのカップルチャンネルが無くなったら、と付け加えてしまいそうになった。
「俺は圭とカップルチャンネルしかしないよ」
「そうなのか?」
「そうなの」
北斗の言葉一つで、俺は嬉しくなってしまうのだ。
(く、くそ~~!)
その晩。
俺たちの夕食は、鮭のムニエルだった。(美味しかった)
******
更新しました。お気に入りほか有難うございます
「圭。今時間ある?」
「ありまくり。どうした?」
俺がうっかり好きだと言って、数日。俺たちの生活は、別段大きな変化はない。どうにか上手く誤魔化せたようだ。
「良かったら、新しい動画上げてみたから見て」
「見る見る!」
今日も北斗が作った夕食を食べ終え、ゆっくりとしていた時だった。北斗が俺の名前を呼んで、パソコンを持ってくる。片付けの終わったテーブルの上に置いて、俺たちのチャンネルに繋げた。
「何をアップしたんだ?」
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「圭が可愛いやつだから大丈夫だよ」
そんな会話をしていれば、北斗が投稿したという新しい動画が流れ始めた。配信と違ってドラマなんかの始まりみたいに俺たち二人の紹介が流れたあと、「はい!」と俺たち二人の姿が現れる。エプロン姿の俺たちがいて、俺は準備万端とばかりに座っていた。
『今日は、北斗の手料理を自慢したいと思います』
どうやら料理特集らしい。そういえば前に、北斗の手料理を沢山食べたことがあったな。
「料理沢山食べた時のか!」
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コメント欄は、また温かいコメントが付き始めている。美味しそうだとか、お料理男子だとか。途中俺が野菜スティックを食べている動画も入り(いつの間に撮ってたんだ)、ウサギだとかリスだとか言われていた。
動画はよくある、それから数分後……とテロップが入り、美味しそうな料理が並ぶ。動画の中の俺も嬉しそうなリアクションをしていた。
『わ~~! 俺が好きな料理ばっかりだ! 北斗、有難う! 大好き!』
『圭の胃袋も掴んでおこうと思って』
『もう俺、北斗に掴まれまくりなのに!?』
動画の中と俺は、また平気で「好き」だとか「大好き」だと言っていた。自分自身とはいえ、羨ましくなる。俺が急に黙り込むものだから、画面ではなく北斗の顔が俺の前に現れた。
「圭? どうしたの?」
「あ、いや! この時の北斗の料理美味しかったなって思って」
「圭の好きなものなら、いつだって作るよ。今日食べる?」
「良いのか? じゃあ、この鮭のムニエル? 食べたい」
「じゃあ、あとで一緒に買い物に行こうか」
俺に甘い北斗に、甘える俺。ニコリと微笑む顔に、俺もつられて笑顔になる。
「機嫌治った?」
「別に機嫌が悪かったわけじゃ……」
ツンと唇と尖らせば、両頬を軽い力で掴まれた。更に口が尖ってタコみたいになる。
「!?」
「ふふっ。可愛いタコだ。今日はタコも買おうかな?」
「もう!」
気づけば動画は終わっていて、チャンネル登録と評価が増えていた。
「北斗、別に料理チャンネルをしても良いかもな」
俺とのカップルチャンネルが無くなったら、と付け加えてしまいそうになった。
「俺は圭とカップルチャンネルしかしないよ」
「そうなのか?」
「そうなの」
北斗の言葉一つで、俺は嬉しくなってしまうのだ。
(く、くそ~~!)
その晩。
俺たちの夕食は、鮭のムニエルだった。(美味しかった)
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