【完結・BL】異世界転生してみたら、出会った巨人がめちゃくちゃタイプだった件【巨人×人間】

彩華

文字の大きさ
上 下
26 / 53

■人間の街にやって来た⑥

しおりを挟む
■人間の街にやって来た⑥

「ソラ!!」

木々の間から見える、大きな身体に色白の肌。それから、短く切った俺の好きな髪が見えて、思わず叫んだ。俺が知ってる巨人で、あんな姿をしているのは、ソラ一人だけ。
だが移動を続けていたせいで、俺の喉を通った声は掠れたような声だった。言葉になっているかも怪しい。それでも、思い切り名前を呼べば、ソラがキョロキョロと辺りを見渡す仕草を見せた。

「ソラ……っ」

だがもう俺の体力は無い。流石に若くない、人によっては俺をおじさんと呼ぶ年齢の身体には、もうこれ以上の力は出せないらしい。上を見ていた顔は、下を向き。膝に手を置いてゼーハーと呼吸を整えることで精一杯。自分でも、こんなに必死になるなんてと驚くが、それがきっと「好き」だということなんだろう。

会いたくて仕方ない。置いて行かないで欲しい。
そんなドラマや漫画でしか、見たり聞いたりしたことないことを自分がやっている。

「も……っ、無理だ……っ」

ゼーハーと未だ息は荒いまま、膝に置いていた手をどかしヘタリと座り込んだ。

「すぐそこにソラがいるのに」

なんで、と悔しさが口から出てしまいそうになった時だった。晴れていた空が曇ったように、ヌッ……と天候が一気に暗くなる。先程まで、雲は無かった。急な雨なはずがない。

「……!」

バッ! と座り込んだまま顔を上げれば、予想通りの顔が俺を見つめていた。

「高見」

出会った時と同じ。綺麗な瞳をキラキラと輝かせながら、俺を見つめている巨人が一人。違うとすれば、俺の名前を知っていて、俺の好きな髪型をしていること。

「高見」

その目が穏やかに微笑んで、俺の名前を呼ぶ。

「……ソラ」

ははっ、と笑えばソラ手が伸びて来て俺の顔を指が撫でた。

「高見、髪の毛が僕より短くなったね」

ソラの大きな目尻が細くなり。器用に顔を撫でていた指が、今度は俺の首筋を撫でた。

「可愛い」

ソラの方が、どう見ても可愛いのに。首を撫でていた指が離れ、手の平になり俺の前にやってきた。その手の平に乗ろうと、座っていた身体を起こし歩き出す。ソラの手の平に乗れば、一気に急上昇。木々が今では俺の下に見えて、代わりにソラの顔がすぐ近くに見えた。

「おかえり、高見」

「ただいま、ソラ」

ソラの顔が、俺と同じでホッとした表情に変わる。向かいあったまま、思わずポロリと消えたと思った不安が漏れた。

「良かった。置いて行かれたと思った」

「そんな!……僕は、もう高見が戻ってこないんじゃないかって思ったよ」

なんだ。俺たち二人して、同じような不安を抱えて一日過ごしてたのか。
そう思うと、さっきまでの不安は何だっただろうと思ったし、ソラが一層大事に思えた。

********
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...