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■人間の街にやって来た⑤
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■人間の街にやって来た⑤
「あ、もう街から出てたのか」
夢中で街の中を歩いていたんだろう。ソラが俺を置いていくかもしれない不安を考える前までに見ていた街中の風景は、すでに無かった。視界に多いのは、緑色。
ピタリと脚を止めて後ろを振り返る。巨人の市場と似ているが、やはり違う。人間の街 がそこにはあった。
俺は人間で、ソラは巨人。きっと、俺が生活するなら人間のところの方が、生活に支障は無いだろう。けどやっぱり俺は────。
「……ソラ」
やっぱり俺は、ソラと一緒が良い。
理由なんて単純だ。ただ、俺がソラと一緒にいたいから。好きだから。
きっと異世界にくる前の世界にいたら、色んな理由と屁理屈を並べ行動に移せていなかった。けれど、この世界に俺を知っている人はいないし、駄目だと言う人だってきっといない。全部、俺の人生だし。
「ソラ」
もう一度前を振り返り、俺は森の方へと脚を進めた。まだ日は高いが、沈んでしまえば視界が悪くなる。それに、野生動物に襲われる心配だって出て来る。それまでにソラに会わなくては。
「ソラ」
「ソラッ……!」
森はまだ遠い。唯一の救いは、平原で森がどのあたりか目視できるところ。だが、そこにソラの姿はない。
「おや、人とは珍しい。どうしたんだい、お兄さん。慌てているようだけど」
「森にっ……森に行かなくちゃいけなくて」
持久走なんて学生の時以来のことに、脇腹が痛くなった。ギュゥゥッと誤魔化すように脇腹を歩きながら、脚は速度を落とし徒歩に。それでも森を目指して歩いていれば、馬に乗った行商と思われる人が俺に声を掛けてくれた。俺が森に行くと言えば、馬に乗った二人が顔を見合わせる。
「森は止めておきなさい。巨人に食べられてしまうから」
「そうだ。俺たちも、巨人の姿が見えて気づかれないうちに馬を走らせて来たところさ」
「巨人?」
「ああ。最近見ないと思っていたのに、またやって来やがった」
「巨人がいるんですか?」
「間違いない。あんなに大きな身体を見間違えるはずないからな、っておい!」
危ないぞ! と俺を心配してくれている言葉が聞こえたが、今の俺には不要だった。それどころか、少し不快。
「食われるぞ!」
「大丈夫です!!」
今度は街を振り返ったように、後ろを振り向くことなく。痛い脇腹を押さえる力を込めながら、もう一度歩く速度を上げた。
「はっ……はぁっ……!」
(良かった、俺を置いて行ったりしてない)
不安が解消されたことが嬉しい。早く、早くソラに。
遠かった森との距離が近づいて来る。見えていなかった大きな影をとらえ、ソラには聞こえていないかもしれないが叫んでいた。
「ソラ!!」
移動を続けていたせいで、俺の喉を通った声は掠れたような声だった。言葉になっているかも怪しい。それでも、思い切り名前を呼べば、ソラがキョロキョロと辺りを見渡す仕草を見せた。
*****
【宣伝】支部に久しぶりに二次投稿しました(^^)短いですが、読んで頂けると嬉しいです
「あ、もう街から出てたのか」
夢中で街の中を歩いていたんだろう。ソラが俺を置いていくかもしれない不安を考える前までに見ていた街中の風景は、すでに無かった。視界に多いのは、緑色。
ピタリと脚を止めて後ろを振り返る。巨人の市場と似ているが、やはり違う。人間の街 がそこにはあった。
俺は人間で、ソラは巨人。きっと、俺が生活するなら人間のところの方が、生活に支障は無いだろう。けどやっぱり俺は────。
「……ソラ」
やっぱり俺は、ソラと一緒が良い。
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「ソラ」
「ソラッ……!」
森はまだ遠い。唯一の救いは、平原で森がどのあたりか目視できるところ。だが、そこにソラの姿はない。
「おや、人とは珍しい。どうしたんだい、お兄さん。慌てているようだけど」
「森にっ……森に行かなくちゃいけなくて」
持久走なんて学生の時以来のことに、脇腹が痛くなった。ギュゥゥッと誤魔化すように脇腹を歩きながら、脚は速度を落とし徒歩に。それでも森を目指して歩いていれば、馬に乗った行商と思われる人が俺に声を掛けてくれた。俺が森に行くと言えば、馬に乗った二人が顔を見合わせる。
「森は止めておきなさい。巨人に食べられてしまうから」
「そうだ。俺たちも、巨人の姿が見えて気づかれないうちに馬を走らせて来たところさ」
「巨人?」
「ああ。最近見ないと思っていたのに、またやって来やがった」
「巨人がいるんですか?」
「間違いない。あんなに大きな身体を見間違えるはずないからな、っておい!」
危ないぞ! と俺を心配してくれている言葉が聞こえたが、今の俺には不要だった。それどころか、少し不快。
「食われるぞ!」
「大丈夫です!!」
今度は街を振り返ったように、後ろを振り向くことなく。痛い脇腹を押さえる力を込めながら、もう一度歩く速度を上げた。
「はっ……はぁっ……!」
(良かった、俺を置いて行ったりしてない)
不安が解消されたことが嬉しい。早く、早くソラに。
遠かった森との距離が近づいて来る。見えていなかった大きな影をとらえ、ソラには聞こえていないかもしれないが叫んでいた。
「ソラ!!」
移動を続けていたせいで、俺の喉を通った声は掠れたような声だった。言葉になっているかも怪しい。それでも、思い切り名前を呼べば、ソラがキョロキョロと辺りを見渡す仕草を見せた。
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