【完結・BL】異世界転生してみたら、出会った巨人がめちゃくちゃタイプだった件【巨人×人間】

彩華

文字の大きさ
上 下
25 / 53

■人間の街にやって来た⑤

しおりを挟む
■人間の街にやって来た⑤

「あ、もう街から出てたのか」

夢中で街の中を歩いていたんだろう。ソラが俺を置いていくかもしれない不安を考える前までに見ていた街中の風景は、すでに無かった。視界に多いのは、緑色。
ピタリと脚を止めて後ろを振り返る。巨人の市場と似ているが、やはり違う。人間の街 がそこにはあった。
俺は人間で、ソラは巨人。きっと、俺が生活するなら人間のところの方が、生活に支障は無いだろう。けどやっぱり俺は────。


「……ソラ」


やっぱり俺は、ソラと一緒が良い。
理由なんて単純だ。ただ、俺がソラと一緒にいたいから。好きだから。
きっと異世界にくる前の世界にいたら、色んな理由と屁理屈を並べ行動に移せていなかった。けれど、この世界に俺を知っている人はいないし、駄目だと言う人だってきっといない。全部、俺の人生だし。

「ソラ」

もう一度前を振り返り、俺は森の方へと脚を進めた。まだ日は高いが、沈んでしまえば視界が悪くなる。それに、野生動物に襲われる心配だって出て来る。それまでにソラに会わなくては。

「ソラ」

「ソラッ……!」

森はまだ遠い。唯一の救いは、平原で森がどのあたりか目視できるところ。だが、そこにソラの姿はない。

「おや、人とは珍しい。どうしたんだい、お兄さん。慌てているようだけど」

「森にっ……森に行かなくちゃいけなくて」

持久走なんて学生の時以来のことに、脇腹が痛くなった。ギュゥゥッと誤魔化すように脇腹を歩きながら、脚は速度を落とし徒歩に。それでも森を目指して歩いていれば、馬に乗った行商と思われる人が俺に声を掛けてくれた。俺が森に行くと言えば、馬に乗った二人が顔を見合わせる。

「森は止めておきなさい。巨人に食べられてしまうから」

「そうだ。俺たちも、巨人の姿が見えて気づかれないうちに馬を走らせて来たところさ」

「巨人?」

「ああ。最近見ないと思っていたのに、またやって来やがった」

「巨人がいるんですか?」

「間違いない。あんなに大きな身体を見間違えるはずないからな、っておい!」

危ないぞ! と俺を心配してくれている言葉が聞こえたが、今の俺には不要だった。それどころか、少し不快。

「食われるぞ!」

「大丈夫です!!」

今度は街を振り返ったように、後ろを振り向くことなく。痛い脇腹を押さえる力を込めながら、もう一度歩く速度を上げた。



「はっ……はぁっ……!」

(良かった、俺を置いて行ったりしてない)

不安が解消されたことが嬉しい。早く、早くソラに。
遠かった森との距離が近づいて来る。見えていなかった大きな影をとらえ、ソラには聞こえていないかもしれないが叫んでいた。

「ソラ!!」

移動を続けていたせいで、俺の喉を通った声は掠れたような声だった。言葉になっているかも怪しい。それでも、思い切り名前を呼べば、ソラがキョロキョロと辺りを見渡す仕草を見せた。

*****
【宣伝】支部に久しぶりに二次投稿しました(^^)短いですが、読んで頂けると嬉しいです
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...