【完結・BL】異世界転生してみたら、出会った巨人がめちゃくちゃタイプだった件【巨人×人間】

彩華

文字の大きさ
上 下
22 / 53

■人間の街にやって来た②

しおりを挟む
■人間の街にやって来た②

 何となくモヤモヤするような。歯がゆい気持ちを切り替えるように、俺は目印の噴水へと走って行った。早く稼いで、早く髪を切らなくては。

「こんにちは。洋服を売りたいんですが、ココ空いてますか?」


「大丈夫よ。早い者勝ちだから、早くした方が良いわ」

「有難うございます」

噴水の側でパンを売ろうとしていた女性がいたから聞いてみる。早い者勝ち形式か、理解。急いで持っていたカバンから布を取り出し、それから洋服を並べた。多いのは、やっぱり女性ものの服。ワンピースや、リボンがついたような上着もある。

(リタさんの感覚、結構現代よりかもしれないな)

街中で見かけた女性たちは、どちらかといえば映画やゲームに出て来る昔の洋風キャラのような恰好ばかりだった。これは新しいし、一気に売れるのでは? と内心自信を持つ俺。この世界なら、俺は天才バイヤーになれるのでは? と思ってしまった。

「あら、お兄さん。可愛い洋服ばっかりじゃない。やだわぁ、私も欲しくなっちゃった。後で来たときに無かったら嫌だから、これをくれる? いくら?」

そう言ってくれたのは、さっき場所は早い者勝ちだと教えてくれた女性だ。ウエストがゴムになっているロングスカートを手に取って、「可愛いわぁ」と言ったあと俺に買いたいと言ってくれた。幸先が良いと思いながら、まず金銭感覚が分からない。一応、ソラに出かける前に人間のお金についてレクチャーを受けているが、持ち金もないため返答に困った。

「有難うございます! それなら、銅貨5枚はどうですか?」

「良いわ、はい」

「お買い上げ有難うございます」

リタさん、やったよ~~! と心の中でガッツポーズをしながら、俺の営業は良いスタートを切った。

スカートが一枚減ったため、そこに補充するように新しいスタートを並べる。そして俺は敷物の上へ。よし! と座り込み、笑顔を浮かべた。

(こういうのは、恥ずかしがってたら駄目だからな)

「こんにちは~。素敵な洋服を持って来ました! 良かったら見て行って下さい!」

声を普段より高く、営業スマイルとばかりに、笑顔を作り。見るだけでも大丈夫ですよ~と雰囲気を作っていると、朝も早いというのに街の人たちが一人。また一人と俺の前で足を止めた。

「見ない顔の人ね?」

「はい、初めてこの街に来ました」

「なになに、何を売っているの?」

「洋服です。男性用、女性用と両方お取り扱いがありますよ」

「なかなか見ない形の服ね」

「そうですね。結構先取りなデザインで、お洒落ですよ」

「先取り?」

「最先端ってことです」

「私、これが欲しいわ」

「有難うございます。そちら、銅貨5枚です」


質問も多く、一つ一つに応えていく。商売には大切なことだ。その結果か。
チャリンチャリンと、俺の手の平に次々に銅貨が渡されていく。商売繫盛。これはリタさんに良い土産話が出来たぞと心の中で大興奮。

(書類なんかが机に積まれるわけでもなく。ひたすら商品が売れていく……!)

気分だけは天才バイヤー。いや、待てよ? これがもしかして俺の異世界転生物語なのか……!? 今からバイヤーとして無双していくのか!? なんて調子に乗ったりもした。
人が一人、二人と集まるように俺の前に並べていた洋服は一枚、二枚と無くなり。鞄の中の洋服も少なくなり。随分軽くなったなと思いつつ、代わりに受け取った銅貨を入れた袋は重くなった。

「さて、あんまり遅くなったら髪を切る時間も無くなるし……」

(ソラが俺を一人で待ってるからな)

ここらで店じまいにするかと、敷物を畳の凝っていた残り少ない洋服を丁寧に鞄に戻した。

「あら、もうお店閉めちゃうのかい?」

「はい。有難いことに大繁盛しまして……。ところで、髪を切ってくれるお店はこの辺にありますか?」

「ああ、お兄さん髪の毛伸びてるもんね」

「ははっ。そうなんです。もう気になっちゃって」

「良いよ。おすすめなのは、ここをまっすぐ歩いた先にあるお店ね。看板が出てるから、すぐ分かると思うわ」

「有難うございます」

「こちらこそ。また良かったら、この街に着て可愛い洋服を売って頂戴ね」

「勿論!」

ペコリと小さく会釈して、俺は女性が指さした方へと歩いて行った。

*******
ネタ切れです(´;ω;`)
お気軽にコメント頂けると嬉しいです(^^)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...