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■着せる気はずっとあったらしい
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■着せる気はずっとあったらしい
それは珍しく、ソラからの頼みだった。
「ねぇ高見、お願いがあるんだけど」
「ん? なんだ、ソラ。俺に頼み事か?」
「うん。高見じゃないと出来ないことなんだ」
「そうなのか? まぁ、ソラの頼みなら……いいぞ」
「本当? 有難う高見」
この時、最初に内容を聞くべきだった。
だが俺の方が頼むことは沢山あるが、ソラの方からとは珍しい。この異世界に来てから、ソラには世話になりっぱなしだ。おまけにだ、俺じゃないと出来ないと言われれば頼られていると嬉しくなるもので。
人間の俺が巨人であるソラに何かしてやれることは何だろう? と思ったが、ソラの頼みならば断われない。「いいぞ」と二つ返事でいつものようにソラと視線を合わせると、これまたいつものようにソラがニコリと微笑んで言った。
「今日、これ着てみない?」
「は?」
ヒラッ、と。その手には、いつぞや市場でリタさんから買ったワンピースを広げていた。
「それ……リタさんが作ったワンピースじゃ……」
「そうだよ。高見、毎日ズボンばかり履いてるから。たまには、リタが作った可愛い服も着てみてよ。それに、僕。二人きりの時に着てねっていったのに、全然着てくれないから……」
「から?」
「もう直談判しかないかなって」
「ジカダンパン」
いつもの逆だ。今度は俺の方が、まるで呪文でも唱えるかのような口調になる。本当に良く人間の難しい言葉を知っているなぁと思う。(いや、言語は共通なのか? ならやっぱり、大きさの違い……?)
軽く考えるのを止めようと、別のことを考えてしまったが逃げることは出来ない。
「それで? 高見は?」
グイッと前進するワンピース。頭上からの笑顔の圧が凄い。
「ワンピース、着てくれるの?」
「あー……その……ソラさん?」
「僕、その他人行儀な高見は嫌だな」
「う゛っ……!」
最近、分かったことが一つある。ソラは俺がこうやって話すのが嫌いだということ。伺うような言い方が他人行儀だと拗ねるようになった。(子供っぽくて可愛い)
「高見、駄目?」
かと思えば、最近は俺がソラの可愛い顔に弱いことを利用するようになっていたりもするから質が悪い。惚れた弱みを最大限に利用しようとしてくる。
キラキラと俺の好きな瞳を輝かせ、ワンレンの髪を小首を傾げて揺らしながら。ヒラヒラとワンピースを更に近づけてくるソラ。
「っ……! だ……」
「だ?」
「だからそれは、人間の女性が着るものでだな」
「僕は気にしないって言ってるじゃないか」
「俺が気にするんだよ!」
「大丈夫だよ」
「何が大丈夫なんだよ」
「高見が恥ずかしいっていう姿は、僕しか見ないし。僕からしたら、絶対高見は可愛いから恥ずかしがることなんてないんだよ」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「だから、ね?」と、最後にワンピースを目の前に落とされ。決めるのはお前だとでもいうように、無言のままソラが微笑んでいる。
「あ~! もう! 分かったよ! 着れば良いんだろ!」
「やったぁ、高見大好き」
何だかうまく丸め込まれた気もするが、ソラが俺を大好きというので渋々俺はワンピースを拾い上げ。俺の新居となったドールハウスに戻ったのだった。
*******
それは珍しく、ソラからの頼みだった。
「ねぇ高見、お願いがあるんだけど」
「ん? なんだ、ソラ。俺に頼み事か?」
「うん。高見じゃないと出来ないことなんだ」
「そうなのか? まぁ、ソラの頼みなら……いいぞ」
「本当? 有難う高見」
この時、最初に内容を聞くべきだった。
だが俺の方が頼むことは沢山あるが、ソラの方からとは珍しい。この異世界に来てから、ソラには世話になりっぱなしだ。おまけにだ、俺じゃないと出来ないと言われれば頼られていると嬉しくなるもので。
人間の俺が巨人であるソラに何かしてやれることは何だろう? と思ったが、ソラの頼みならば断われない。「いいぞ」と二つ返事でいつものようにソラと視線を合わせると、これまたいつものようにソラがニコリと微笑んで言った。
「今日、これ着てみない?」
「は?」
ヒラッ、と。その手には、いつぞや市場でリタさんから買ったワンピースを広げていた。
「それ……リタさんが作ったワンピースじゃ……」
「そうだよ。高見、毎日ズボンばかり履いてるから。たまには、リタが作った可愛い服も着てみてよ。それに、僕。二人きりの時に着てねっていったのに、全然着てくれないから……」
「から?」
「もう直談判しかないかなって」
「ジカダンパン」
いつもの逆だ。今度は俺の方が、まるで呪文でも唱えるかのような口調になる。本当に良く人間の難しい言葉を知っているなぁと思う。(いや、言語は共通なのか? ならやっぱり、大きさの違い……?)
軽く考えるのを止めようと、別のことを考えてしまったが逃げることは出来ない。
「それで? 高見は?」
グイッと前進するワンピース。頭上からの笑顔の圧が凄い。
「ワンピース、着てくれるの?」
「あー……その……ソラさん?」
「僕、その他人行儀な高見は嫌だな」
「う゛っ……!」
最近、分かったことが一つある。ソラは俺がこうやって話すのが嫌いだということ。伺うような言い方が他人行儀だと拗ねるようになった。(子供っぽくて可愛い)
「高見、駄目?」
かと思えば、最近は俺がソラの可愛い顔に弱いことを利用するようになっていたりもするから質が悪い。惚れた弱みを最大限に利用しようとしてくる。
キラキラと俺の好きな瞳を輝かせ、ワンレンの髪を小首を傾げて揺らしながら。ヒラヒラとワンピースを更に近づけてくるソラ。
「っ……! だ……」
「だ?」
「だからそれは、人間の女性が着るものでだな」
「僕は気にしないって言ってるじゃないか」
「俺が気にするんだよ!」
「大丈夫だよ」
「何が大丈夫なんだよ」
「高見が恥ずかしいっていう姿は、僕しか見ないし。僕からしたら、絶対高見は可愛いから恥ずかしがることなんてないんだよ」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「だから、ね?」と、最後にワンピースを目の前に落とされ。決めるのはお前だとでもいうように、無言のままソラが微笑んでいる。
「あ~! もう! 分かったよ! 着れば良いんだろ!」
「やったぁ、高見大好き」
何だかうまく丸め込まれた気もするが、ソラが俺を大好きというので渋々俺はワンピースを拾い上げ。俺の新居となったドールハウスに戻ったのだった。
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