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24】久しぶりに見た顔は
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24】久しぶりに見た顔は
大きな城の中を、迷路のように歩き回り。ようやくたどり着いた魔王様の部屋。大きな扉をノックしてみると返事はない。「魔王様」と呼んでみても返事がない。縋るように、俺は小さく呟いた。
「……っ、ハデス」
ダメ元で最後にそう呼べば、ガチャリと扉が開き魔王様が立っていた。その目は誰かを期待していたようで、同時に違うのかと悲しんだような表情をしていた。その様子に、魔王様が俺じゃない誰かを待っていたことを悟る。
(俺じゃないんだ)
「……っ、貴様か」
当たり前のことなのに、勝手にショックを受けた。だがショックで固まってもいられない。魔王様が「貴様か」と呟いたあとすぐに扉を閉じようとする。きっと今閉じてしまったら、二度と扉が開かないような気がして悪いと思いながらも扉の間に身体を押し入れた。
「どけ。扉を閉じれないだろう」
俺を見下ろす魔王様は、俺を吹っ飛ばした時のように冷たい目をしていた。だが、それに今怯んでいる場合ではない。魔王様相手に、普段よりも荒い口調で言った。
「閉じられないようにしてるんですって!」
「貴様は……! 私の邪魔ばかりしよって……!」
「魔王様、あの時はすみません! 俺、魔王様のこと全然何も知らなくて」
「はっ……! 思い上がるな、淫魔風情が。誰も私のことなど知りはしない。知って欲しいとも思わん。ただお前たちが勝手に私を魔王と呼ぶだけで、私はどうということもない」
「俺は! 魔王様のこと知りたいと思ってるんで! それに……魔王様のナカに俺のちんこ入れたいとかも思ってるし!」
「貴様は!」
最後は言わなくて良い一言も言ってしまったと思ったが、つい口から出てしまったのだから仕方がない。だって俺は淫魔だから。それに魔族だし、魔王様のように理性的でもない。もしかしたら、もう二度と会えなくなるかもしれないし、それなら思っていることを言った方が良い。最悪、言い逃げしてやろうとすら思う。
(にしても……意外と魔王様、力強いな)
ちょっと意外だった。失礼だが、色白で引き籠っているイメージが強い魔王様だ。フィジカル的な力でいえば、俺とたいして変わらないだろうと勝手に思っていたが現実は違うらしい。俺よりも年上の経験か、それとも大きな黒い上着の下はムキムキなのか。俺が開こうとする扉と異なり、ミチミチと俺の身体を挟み込んでいく扉。
「淫魔」
もう「ナイト」と名前で呼んでくれないのか。魔王様が呼んでくれないなら、今度は俺が呼べば良いこと。
「……デス」
「貴様」
「ハデス」
「やめろ」
そう言った魔王様が閉じようとする扉の力が弱まった。その隙をついて、スルリと身体を扉の先。魔王様の部屋へと押し入れた。ヨロけた身体で踏ん張って、コツッ……とブーツで耐える。そのまま身体を反転して、部屋の主。城の主である魔王様と向かい合った。
「ハデス」
「止めろ、その瞳で私を見るな」
何もない質素な部屋で、魔王様が少し気弱に見えた。
*********
もうすぐ!終わります!(多分)
大きな城の中を、迷路のように歩き回り。ようやくたどり着いた魔王様の部屋。大きな扉をノックしてみると返事はない。「魔王様」と呼んでみても返事がない。縋るように、俺は小さく呟いた。
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ダメ元で最後にそう呼べば、ガチャリと扉が開き魔王様が立っていた。その目は誰かを期待していたようで、同時に違うのかと悲しんだような表情をしていた。その様子に、魔王様が俺じゃない誰かを待っていたことを悟る。
(俺じゃないんだ)
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当たり前のことなのに、勝手にショックを受けた。だがショックで固まってもいられない。魔王様が「貴様か」と呟いたあとすぐに扉を閉じようとする。きっと今閉じてしまったら、二度と扉が開かないような気がして悪いと思いながらも扉の間に身体を押し入れた。
「どけ。扉を閉じれないだろう」
俺を見下ろす魔王様は、俺を吹っ飛ばした時のように冷たい目をしていた。だが、それに今怯んでいる場合ではない。魔王様相手に、普段よりも荒い口調で言った。
「閉じられないようにしてるんですって!」
「貴様は……! 私の邪魔ばかりしよって……!」
「魔王様、あの時はすみません! 俺、魔王様のこと全然何も知らなくて」
「はっ……! 思い上がるな、淫魔風情が。誰も私のことなど知りはしない。知って欲しいとも思わん。ただお前たちが勝手に私を魔王と呼ぶだけで、私はどうということもない」
「俺は! 魔王様のこと知りたいと思ってるんで! それに……魔王様のナカに俺のちんこ入れたいとかも思ってるし!」
「貴様は!」
最後は言わなくて良い一言も言ってしまったと思ったが、つい口から出てしまったのだから仕方がない。だって俺は淫魔だから。それに魔族だし、魔王様のように理性的でもない。もしかしたら、もう二度と会えなくなるかもしれないし、それなら思っていることを言った方が良い。最悪、言い逃げしてやろうとすら思う。
(にしても……意外と魔王様、力強いな)
ちょっと意外だった。失礼だが、色白で引き籠っているイメージが強い魔王様だ。フィジカル的な力でいえば、俺とたいして変わらないだろうと勝手に思っていたが現実は違うらしい。俺よりも年上の経験か、それとも大きな黒い上着の下はムキムキなのか。俺が開こうとする扉と異なり、ミチミチと俺の身体を挟み込んでいく扉。
「淫魔」
もう「ナイト」と名前で呼んでくれないのか。魔王様が呼んでくれないなら、今度は俺が呼べば良いこと。
「……デス」
「貴様」
「ハデス」
「やめろ」
そう言った魔王様が閉じようとする扉の力が弱まった。その隙をついて、スルリと身体を扉の先。魔王様の部屋へと押し入れた。ヨロけた身体で踏ん張って、コツッ……とブーツで耐える。そのまま身体を反転して、部屋の主。城の主である魔王様と向かい合った。
「ハデス」
「止めろ、その瞳で私を見るな」
何もない質素な部屋で、魔王様が少し気弱に見えた。
*********
もうすぐ!終わります!(多分)
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