【完結・BL】インキュバス君は魔王様に恋してる！【インキュバス×魔王】

21】何でか分かる気がした

21】何でか分かる気がした

　「あ、ナイトだ」

「よ！」

そうこうしてやって来たのは、魔王様のいる城。バサバサと羽音を立てて近づけば、今日もいつもの門番が仕事をしていた。俺の羽音に気付いて顔を上げた門番が、「あ」と言うが気にせず近づく。

「ナイト、怪我大丈夫か？」

「御覧の通り。しっかり自分で飛べるくらいに回復したぜ。で……なんだけどさ」

「あー……」

一応二人も門番だ。魔王様の意に反するようなことは出来ない。かといって、俺は魔王様を倒しに来た勇者でもない。どうする？　と二人が顔を見合わせた。

「魔王様は？」

「魔王様は……なぁ？」

「ああ……」

何となく二人とも歯切れが悪い。どうする？　とまた言い合った後、「実は……」と二人が言った。

「魔王様はずっと、お部屋に籠りっきりだ。お前を吹っ飛ばしてから、部屋から出てらっしゃらない」

「嘘だろ……？」

「本当だ。部屋に籠るとおっしゃってから、誰も姿を見ていない。だが魔王様の部屋がどこなのか、誰も知らないんだよ……」

俺が知らない人間の匂いを持ち込んだのが、そんなに嫌だったのか？　と思ったが、時間は戻せはしない。会いたくてもどこにいるか分からない。じゃあ、大人しく来た道を戻るか？

「魔王様の部屋を知っているのは、人間だけだったからなぁ……」

「おい！　今それを言うなよ！」

俺を気遣うような門番たち。結構良い奴だ。
魔王様の恋人の人間は、魔王様の部屋を知っていたという事実に少し胸が痛んだが、不思議と嫌ではなかった。それどころか、ポツリと呟いた言葉に俺自身が驚いた。


「大丈夫だ、分かる」

「ナイト？」

「魔王様の部屋だろう？　分かる」

「いや、分かるって。魔王様の部屋は道中魔王をしかけてあったり、隠されている部屋なんだぞ？　行ったこともないお前が分かるわけ……」

「何でか分からないけど、俺魔王様の部屋に言った事がある気がするんだ」

これで本当に魔王様の部屋に行けたら、運命じゃないか？
顔も知らない人間に、お前には負けないと言えば、頭の中で「早く思い出せ」と返事がしたような気がした。

「……？」

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