【完結・BL】インキュバス君は魔王様に恋してる!【インキュバス×魔王】

彩華

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10】人間の街にやって来たけれど④

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10】人間の街にやって来たけれど④

 小腹の空いた腹が、ゆっくりと満たされていく感覚。

(まぁ、美味しいかなぁ……)

久しぶりの精気。甘い匂いに、別腹とばかりに腹の中に精気が溜まっていく。美味しい。やっぱり、たまにはこういう食事も良いなと思いながらも、俺がするのはつまみ食いだけ。メインディッシュは食べないで、気分間程度に小腹を満たすだけ。
だがそれは、女の子にとって物足りなかったらしい。(淫魔にあてられてるんだ。当たり前か)
「あのっ……!」うっとりとしていた女の子が、訴えるように声を漏らす。それから俺を見上げて不満げな声で言った。

「な……んで……」

(何で? そんな理由なんて一つしか無い)



「俺なんかに、大切な唇を奪われるのは嫌だろう?」

嘘。本当は、俺が唇への口づけは魔王様にだけしたかった。こんなことをしていながら、自分勝手な理由ばかり並べる。淫魔だから仕方がないと、誰に向けての言い訳を並べながらも変に一途を貫こうとする。女の子にも失礼だと思いながら、唇に口づけない理由くらいは半分本当のことを伝えた。

(君を思っていない俺なんかに、大切な唇を奪われるのは可哀想だろう?)

「わ……私は別に、貴方になら……!」

思いの外、女の子は俺に好意を抱いてくれたらしい。精気が美味しくなって満たされる。このまま腰を抱き寄せて、噛みつくように口づけて。柔らかな胸元に顔を埋めれば、どんなに気持ちが良いだろう。

「うん。有難う。優しいんだね。でも、ごめんね? 俺が嫌なんだ」

「え……?」

「俺が君のことで良いなって思ったのは、この黒髪だから口づけたんだよ」

俺を押し返した身体を抱き寄せて、耳元で囁いた。名残惜しいと、また艶のある黒髪をすくい口づける。女の子はやはり意味が分からないという様子のまま。俺の方は興ざめしてしまい、隠していた羽がバサリと背中から現れた。

「俺はね、一途な淫魔だから」

「淫魔?」

「そ♡他の淫魔なら、君が望むことをしてくれるだろうけど俺は魔王様が好きだから」

バサバサと羽音を立てながら尾っぽも現れ、服装も元通りに。女の子を残してさっさと街を出て行こうとする。


(やっぱり今日も魔王様のところに行けば良かった)

そんな後悔も、今さらしたところで遅い。女の子を一人残したまま、「じゃあね」と俺は小腹を満たすと人間の街を後にした。

(う~ん、こういうところ魔族っぽい♡)

ふふっ、と笑いながら俺は結局また今日も魔王様に会いに行くことにした。

(やっぱり黒髪を見てたら、魔王様に会いたくなっちゃったな)

「俺ってば、恋してるな~」

*******
ちょっと詰みました><
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