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1】それいけ、インキュバス君
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1】それいけ、インキュバス君
ここは一種の異世界。人間と魔族が住まう世界。
魔族のみの魔界だけだったなら、どれだけ楽しかっただろう。俺たち魔族がこの世界を牛耳って、俺たちだけの楽園。魔界だと声高々に言えただろうに、現実はそうじゃない。人間たちがいる。それどころか、人間の中には俺たち魔族を倒そうと声を上げるものがいる始末。俺たち魔族よりも、よっぽど人間の方が魔族っぽくないか? ああ、恐ろしい。
とまぁ……────。
人間と魔族がいる世界だが、世界は均衡に保たれている。それはひとえに、人間のおかげではなく、俺たちの王様。「魔王様」のおかげだ。
人間の王みたいな奴なんて地区によって異なるし、何人いるんだと思う。それに、すぐに変わったりする。
だがその点、俺たち魔族は違う。魔王様は、たった一人。その方が現れた瞬間から、圧倒的な力の差が俺たち魔族には直感的に分かった。この方こそ、我々魔族の頂点だと。本人は気にしていない様子だが、俺たちはその方を魔王様と尊敬し、何かあれば魔王様へ指揮をあおった。それは今でも続き。少しの悪さはすれど魔王様の寛大な心があり、人間たちとの共存が続いている。
誰よりも強く、賢く。そして美しい魔王様。
俺が生まれる前からずっと前から魔王様・ハデス様。
「はぁぁぁ~~~~……魔王様に会いたいぜ」
そう大きなため息をついたのは、誰でもない。俺自身。
魔族といえど、種類は多種多様。俺も他の魔族のように力が強いだとか、強い魔法が使えるだとかすれば良かったのに……。俺はどちらかと言えば、インドア派。よく言えば平和主義の夢魔のインキュバス。自慢できることといえば、顔が良いくらいか? 自分で何を言っているんだと思うが、相手を魅力するための俺たちの特性だ。自慢させてくれ。
「それでも、魔王様の方が顏が良いんだけど」
ふよふよと空中を浮きながら器用に項垂れた。理由は簡単だ。俺は魔王様が好きだから。
(ああ! ああ! お慕いしております、魔王様!!)
なんて。
心の中ではクソデカ声で叫んでいるが、実際のところ魔王様にどうやって取り入ろう? と今日も理由もなく魔王様のいる城にやって来たところだ。俺たち魔族の城の良い所は、人間と違って魔王様のおかげで魔族であれば割と簡単に城に入れるところ。
「お、今日も来たのか。ナイト」
ぬっ……と現れたのは、俺と異なりずっしりとした大きな身体の魔族。門番をしており、俺と会う回数がとても多い。
「まぁな~。で、今日魔王様は?」
「さっき庭園にいらっしゃったぞ」
「有難う!」
浮かんでいた羽の速度を上げて、俺は急いで庭園へと向かった。石床の特に匂いのしなかった廊下に、甘い花の匂いが香る。人間の育てている花を魔王様が好み、誰が見ても息を飲むほど綺麗にしている庭園だ。色とりどりの花々の中に、ポチリと浮かぶ漆黒。
(魔王様だ!)
今日は珍しく、魔王様の側に誰もいない。ラッキー! と思っていると魔王様が身体の向きを変え。色白の整った横顔が見え、ドキンと胸が鳴った。
ドキドキドキ。
「ぁ……っ」
会いたかった魔王様だが、俺の羽は進むのを止め。思わず足を床に着けて息を飲んだ。言ってしまえば、ただ魔王様に見惚れた。
だって仕方ないだろう? 鮮やかな中に浮かぶ黒色も、まるで一輪の花のようだったんだから。
(ああ、ああ……! 魔王様♡)
(なんて美味しそうなんだ♡)
まぁ、俺の恋の場合。職業柄? 職種柄? どうしても食事にも繋がってしまうわけだけど。
*******
軽率にまた別に連載を始めてみました。
こちらも短い予定です。また、健全にするか、話によってRにするか悩んでいます>< お気軽に感想頂けると嬉しいです
最初に考えた内容と、気づいたら変わっていたので似たような話orシリーズをまた未来でするかもしれません
ここは一種の異世界。人間と魔族が住まう世界。
魔族のみの魔界だけだったなら、どれだけ楽しかっただろう。俺たち魔族がこの世界を牛耳って、俺たちだけの楽園。魔界だと声高々に言えただろうに、現実はそうじゃない。人間たちがいる。それどころか、人間の中には俺たち魔族を倒そうと声を上げるものがいる始末。俺たち魔族よりも、よっぽど人間の方が魔族っぽくないか? ああ、恐ろしい。
とまぁ……────。
人間と魔族がいる世界だが、世界は均衡に保たれている。それはひとえに、人間のおかげではなく、俺たちの王様。「魔王様」のおかげだ。
人間の王みたいな奴なんて地区によって異なるし、何人いるんだと思う。それに、すぐに変わったりする。
だがその点、俺たち魔族は違う。魔王様は、たった一人。その方が現れた瞬間から、圧倒的な力の差が俺たち魔族には直感的に分かった。この方こそ、我々魔族の頂点だと。本人は気にしていない様子だが、俺たちはその方を魔王様と尊敬し、何かあれば魔王様へ指揮をあおった。それは今でも続き。少しの悪さはすれど魔王様の寛大な心があり、人間たちとの共存が続いている。
誰よりも強く、賢く。そして美しい魔王様。
俺が生まれる前からずっと前から魔王様・ハデス様。
「はぁぁぁ~~~~……魔王様に会いたいぜ」
そう大きなため息をついたのは、誰でもない。俺自身。
魔族といえど、種類は多種多様。俺も他の魔族のように力が強いだとか、強い魔法が使えるだとかすれば良かったのに……。俺はどちらかと言えば、インドア派。よく言えば平和主義の夢魔のインキュバス。自慢できることといえば、顔が良いくらいか? 自分で何を言っているんだと思うが、相手を魅力するための俺たちの特性だ。自慢させてくれ。
「それでも、魔王様の方が顏が良いんだけど」
ふよふよと空中を浮きながら器用に項垂れた。理由は簡単だ。俺は魔王様が好きだから。
(ああ! ああ! お慕いしております、魔王様!!)
なんて。
心の中ではクソデカ声で叫んでいるが、実際のところ魔王様にどうやって取り入ろう? と今日も理由もなく魔王様のいる城にやって来たところだ。俺たち魔族の城の良い所は、人間と違って魔王様のおかげで魔族であれば割と簡単に城に入れるところ。
「お、今日も来たのか。ナイト」
ぬっ……と現れたのは、俺と異なりずっしりとした大きな身体の魔族。門番をしており、俺と会う回数がとても多い。
「まぁな~。で、今日魔王様は?」
「さっき庭園にいらっしゃったぞ」
「有難う!」
浮かんでいた羽の速度を上げて、俺は急いで庭園へと向かった。石床の特に匂いのしなかった廊下に、甘い花の匂いが香る。人間の育てている花を魔王様が好み、誰が見ても息を飲むほど綺麗にしている庭園だ。色とりどりの花々の中に、ポチリと浮かぶ漆黒。
(魔王様だ!)
今日は珍しく、魔王様の側に誰もいない。ラッキー! と思っていると魔王様が身体の向きを変え。色白の整った横顔が見え、ドキンと胸が鳴った。
ドキドキドキ。
「ぁ……っ」
会いたかった魔王様だが、俺の羽は進むのを止め。思わず足を床に着けて息を飲んだ。言ってしまえば、ただ魔王様に見惚れた。
だって仕方ないだろう? 鮮やかな中に浮かぶ黒色も、まるで一輪の花のようだったんだから。
(ああ、ああ……! 魔王様♡)
(なんて美味しそうなんだ♡)
まぁ、俺の恋の場合。職業柄? 職種柄? どうしても食事にも繋がってしまうわけだけど。
*******
軽率にまた別に連載を始めてみました。
こちらも短い予定です。また、健全にするか、話によってRにするか悩んでいます>< お気軽に感想頂けると嬉しいです
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