【NL】伯爵子息は専任メイドを手放したくない【子息×メイド】

彩華

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4】いつもと違う奥様とのお茶会

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4】いつもと違う奥様とのお茶会

 私の名前はカレン。
このグラハム家のメイドとして仕えている。まだ12歳の子供だった私を、大事なご子息であるアーサー様の専任のメイドにして頂き数年経たった。今では私も年を取り。同じくアーサー様も年を取った。

幼く可愛らしかった姿は、スラリと伸びた身長と端正な顔立ちへと変わり。声を掛けられれば、きっと誰しも目を奪われてしまうだろう。変わらないのは、私を「大好き」だということで……。

(み……身が持たない……!)

身分の違う私のも優しく、それどころか令嬢に対しての振る舞いをして下さるアーサー様。一使用人、一メイドでしかないのに、私も令嬢なのでは? と勘違いしてしまいそうになってしまう。

「……いけない!」

今はアーサー様の部屋の掃除中。日頃から整理整頓された部屋は、正直特にすることが無い。メイド泣かせというべきか、本当によく出来た方だと思う。

「今日も仕事が早く終わってしまった……」

やる気になったのに、片づける場所は少なく。掃除道具と一緒に部屋を出れば、奥様の声がした。

「カレン」

「奥様」

「カレンはお仕事中かしら?」

「いいえ。もう終わりました」

「そうなの?」

「ええ。アーサー様は整理整頓されていらっしゃるので、本当にお部屋が綺麗で」

「昔はあんなに玩具を散らかしていたのにね」

「ふふっ。本当ですね」

「ところでカレン、これから時間はあるかしら? また二人でお茶会がしたいわ」

「喜んで! 片づけてから、すぐに伺います。どちらにお伺いすれば良いでしょうか?」

「私の部屋で良いわ」

「はい。何か食べたい物はありますか?」

「カレンにお任せするわ」

「はい、奥様。今日は食事担当がマカロンを作ると話していたので、もう出来ているかもしれません」

「それは楽しみ」

「では、奥様。失礼致します」

ペコリと頭を下げて、私は急いで掃除道具を片づけに行く。それから調理場へと急いで、お茶の準備。

「こんにちは。これから奥様がお茶を飲まれるんですが、お菓子はありますか?」

「カレンか。勿論、見てくれるかい? 良い感じにマカロンが焼けたんだ。奥様が喜んでくれると良いな」

「わぁ! 可愛い! きっと喜ばれます」

予定通り、無事にマカロンは焼けていた。コロンと丸い形のマカロン。それをお皿に移し、いつもの紅茶セットを持って、私は奥様の部屋へ。

ここまでは、いつもと変わらなかった。
優しい奥様と、楽しいお茶会。二人だけの、楽しい時間。だが、今回違ったことが一つ。


「ねぇ、カレン。アーサーのこと、どう思う?」


ニコリと微笑む奥様に、私はポカンと口を開けたまま固まってしまった。

(どう思う? とは……?)

******
お気に入り・エール・イイネ有難うございます(^^)
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