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追い打ちの非道で理性は砕き尽くされる

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足首に巻き付けられた黒革の枷と金属で作られたベッドの柵を繋ぐ太く頑丈な鎖を甲高く鳴らしながら、男達はどうにかして与えられた苦悶から抜け出そうと裸体をひたすらにもがかせ続けている。斜め下に伸ばしきった状態を強要されている閉じることを封じられた足をよじらせ、指の使用を禁じる機構を備えた黒革製の手袋と一体化している手首同士を短く繋ぐ枷との格闘を繰り返しながら、男達はもう一人と協力しての試行錯誤を絶え間無く積み重ね続けている。
けれど、状況は変わらない。足を幾ら暴れさせても枷は外れず、無理矢理に開かされた足の間に設置された箱型の装置が生み出す責め苦からも逃れられない。
無防備に露出させられた尻穴を水平方向の往復運動で掘削し続けている太く長くイボに塗れた偽の男根から離れたくても、尻穴への刺激に屈し意に染まぬ勃起へと追いやられた自身の本物の男根の根元と亀頭近くを緩く締め付け甘く容赦無く震わせる黒いベルト型のローターを毟り取りたくても、雄と雌の悦楽に翻弄させられている男達はその願いをどう頑張っても実現に導けない。
黒い革が張られた硬いベッドの上に仲良く仰向けに転がされ、望まぬ悦びに為す術無く嬲られている男達。涙に潤んだ視界に見える残酷な装置から伸びた金属の棒と繋がっている張型と、コードの端にあるベルトを虚しく眺めながら、絶望を味わいつつの絶頂へと上り詰めさせられるしか無い男達。足首とベッドの上下に位置する柵を結ばれ、手を縛める枷同士を後から付け足された短い鎖と南京錠で接続された男達はもう、何の効果も生まない身悶えを繰り返し手の引っ張り合いを間抜けに行いながら射精を迎えるだけの存在だ。
その惨めな事実を、長い長い淫獄と共に過ごす放置の中で思い知らされた二人の男は、自分達が運び込まれ置き去りにされた地下室の扉が再び開くやいなや、恥と誇りを捨て去った声音で断続的な絶頂からの解放を心からねだり始めた。

「もぉ、もういやらぁぁぁっ! だっ、だじゅげっ、ふあぁっ! イぎゅぅぅぅっ!!」
「ゆるじで、ぐれぇっ! おりぇも、しぇんぱいもぉっ! もぉむり、むりぃぃ! ひぐっ、イっ、きゅぅぅぅぅーっ!!」

扉を開いた相手が敵か味方かもまだ分からない。その段階で、男達は喉が破れんばかりに鳴き喚き堪えきれずに絶頂へと至りながら救済を懇願した。
これ以上絶頂させられたくない。異物の拒み方を忘却させられ代わりに淫らな至福の汲み取り方を教え込まされた尻穴を掻き毟るバイブに喘ぎ、吐き出す精液も失った男根を絶頂に合わせて何も放出出来ない不完全な射精へと押し上げられながら、二人の男はありとあらゆる立場をかなぐり捨てた哀願を仲良く無様に叫んでいる。
その滑稽極まりない姿に充足の笑みを浮かべながら、数時間ぶりに地下室へと舞い戻った敵の男達はベッドの上に縫い付けた二つの裸体を取り囲んでいく。
手足に与えた拘束は、まだ緩み無く自由を取り上げている。そして、平静を失ってはいるがこの二人にはまだまだ余裕が残っており、更なる辱めに耐えうる理性も保たれている。逃れられず抗えない裸体達を包囲しながら淡々と無慈悲に情報を分析した男達は、言葉を発さずとも伝わる意思疎通の頷きを残酷に行うと、共有した展開に沿った上乗せの地獄を無抵抗の裸体に流し込み始めた。
尻穴と男根をいたぶる淫具の駆動が、躊躇い無く装置を弄った男達の手で最大の物へと移行させられる。それだけでも、十分過ぎるくらいに冷酷だ。しかし、真の非道は淫具への操作ではない。二人から残りわずかな余裕を削ぎ落とし、ヒビだらけとなった理性を砕き尽くすのは、汗と淫らな体液に汚れた裸体を直接弄ぶ男達の手だ。
よがり鳴きイき狂わされながらも崩壊には達さずにいた男達を不可逆的な屈服に突き落とすとどめの地獄を作り出すのは、脇の下を巧みに撫で、脇腹を伝い、快楽に痙攣している足の内股や足裏を小刻みに這い回り、嬌声混じりの笑い声を放たせてくる男達の手という拷問器具なのだ。

「ふひっ!? はっ、はぎひっ、ふぎぎぎぃっ!?」
「かひぇ、ひゃへぇっ! はほほっ、んひひぃ! ひゃはひひひぃーっ!!」

聞き流されるだけの助けてさえ紡げない。乱れきった呼吸を整える暇さえ認められない。
強制的に笑い転げさせられつつ透明な蜜さえ噴き出せない絶頂を何度も何度も強いられる酸欠状態の男達を嬉々としてくすぐり回しながら、支配者の側に回った男達は自分達を嗅ぎ回った二人を待ち受ける瓦解という末路を白々しく憐れみつつ、そこへの到着を早めるよう手指の動きをより耐えがたい物へと変化させていくのだった。
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