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男は自らを追い詰める為だけに口内を酷使する

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「あぁっ、もぅやら……お願い、誰か……イかせて、機械、もっと動かしてぇぇっ!」

瞳から溢れた涙と、誇りを捨てた悲痛なおねだりを放つ口から溢れた唾液、そして真っ赤に火照りきった顔から滲み出た汗を撒き散らすかの如く頭部をめちゃくちゃに振り乱しながら、男が自分を嬲る苦悶からの脱出を欲して裸体をじたばたともがかせている。
この縄さえ解ければ、あの機械の駆動を強められる。疼きに疼いている男根と尻穴を慰める強い悦楽を手に入れられる。置き去りにされた地下室から逃れることでも、敵に捕らえられた事実を覆すことでも無く、男は淫猥な悦びを手繰り寄せることのみを願って裸体を縛める縄拘束を振り払おうと休み無く身悶え続けている。
そんなことをしても、縄は緩みすらしない。絶望の事実を嫌という程理解させられたはずなのに、精神を蝕み身体中を駆け巡る淫欲に思考能力を溶かされた哀れな男は、無意味に縄との格闘を繰り返し自分をいたぶる欲望の加速を惨めに後押ししてしまっていた。

「イぎだい、イきたいぃぃっ! ひんこ、いつもみたいにぶるぶるひてぇっ! おひりもっ、ぐちゅぐちゅほじってくれよぉぉっ!!」

正気を失った絶叫を地下室中に反響させながら、男は心の底から嫌がっていたはずの快楽による責め苦を希求する。
捕らわれた日から毎日のように内部の柔らかな素材で隙間無く包み込んだ男根を激しく振動させてきた筒状の器具と、尻穴を奥深くまで掘削し雌の悦楽を味わわせてきた張型と繋がっている機械に対してどうして今日は濃度を薄めた液体媚薬を男根と腸内に塗布するだけで肝心の刺激を注いでくれないのかという思いを乗せた視線を浴びせながら、男は足首と太ももを短く括り、伸ばせなくされた足の内側に腕をきつく縛り付け、それぞれ一つに結合させた左右の手足を仰向けに転がされた台の側面に打ち付けられている金具達へと結び付ける縄に諦め悪く力を加え続ける。
どうやっても、自力では湧き上がるばかりの欲望を解消出来ない。ほんの少し手を伸ばせば機械のボタンを押して男根と尻穴に甘い悦びをもたらせるのに、自らの手で筒状の器具を毟り取って男根を扱きつつ張型を抜き差しして雌の至福を得られるのに、男は決して届かないそれらの刺激にただただ打ちひしがれるしか無い。
そんな永遠とも思えるようなもどかしい地獄が、どれくらい続いた頃だろう。喚く気力も無くし荒く呼吸を乱しながら憔悴しきっている男とは裏腹に、媚薬の効果と男自身の発情によって張り詰め切った男根が痛々しく脈打ち張型をくわえさせられた尻穴がはむはむという擬音がとてもよく似合う程のはしたない収縮を恥部で元気良く見せ始めた頃、地下室の扉が再び開いた。
そうして現われたのは、男を捕らえ無慈悲に調教し、立派な淫乱となった男に最後の仕上げの準備である生殺しの拷問へと置き去りにした非道な男だった。

「よぉ、捜査員さん。たっぷりお預けされた気分はどうだい?」

醜悪な感情を露わにした笑みを浮かべながら、男が自由を奪われ膨らむ一方の欲望に何もかもを押し潰された捜査員へと歩み寄る。今朝までの捜査員だったら、憎々しげに男を睨み付けながら皮肉の一つでも飛ばしていただろう。だが、今の捜査員にその発想は微塵も無い。堕ちきった肉体を焦らしに焦らされた捜査員はもはや浴びせられた問いを認識出来ず、ようやく訪れた欲望の明確なぶつけ先である男に向かって、問いと全く噛み合っていない理性を無くした哀願を返した。

「おにぇがい、ひましゅ……イかせて、イかひぇて……っ! イきたいのぉ……しゃせー、ひたい……いっぱい、イきたいぃっ……!」

舌足らずな口で一生懸命に絶頂をねだり、淫蕩な熱気を発している裸体をくねらせて腰を突き出す捜査員。悪である自分を忌み嫌うことを忘れ、みっともなく快楽を請う滑稽な捜査員。その完璧に陥落した捜査員の痴態を見下ろしながら抑えきれぬ愉悦で笑みの黒さを深めた男は、崩れかけている捜査員の人格を壊す為に用意した器具を淫具達と繋がっている機械から伸ばし、意地悪な言葉を紡ぎつつ淫猥に助けを望む捜査員の口にその器具を装着し始めた。

「そんなにイきたいなら、自分で自分をイかせなよ。ほら、これを口に付けてやっから思う存分気持ち良くなって射精しまくりな、捜査員さん」
「んぐっ? むぅ……あぉ、えうぅ」

自由が残されていた捜査員の口が、黒革の本体に男根を模した張型が取り付けられている枷によって塞がれていく。それを無意識に嫌がり、捜査員はくぐもった唸りを上げつつ顔を振って口枷を拒もうとするが当然それは無駄で、捜査員は男の手を煩わせることも出来ぬままあっという間に喉近くまでを張型に貫かれ、そこから動かないよう張型と一体になっている黒革部分のベルトを後頭部で手早く締められてしまった。

「うぅっ、んぐっ、むぅ……あおぅっ」

喋りたくても喋れない。快楽を求める言葉を発せない。唯一の呼吸孔にされた鼻をプスプスと鳴らしながら、捜査員は塞がれた口で枷への抗議ではなく不明瞭でもよく分かるおねだりの意思を表わしている。
新たな拘束への恐怖ではなく、悦楽の渇望を伝えることを優先する無様極まりない捜査員。自分の目論見に従って屈服し、欲望に溺れきった捜査員を眺めながら全身を心地良さげに震わせた男は、残忍な別れを口にしつつ捜査員に取り付けた口枷の機構を躊躇い無く作動させた。

「んじゃ、捜査員さん。俺はまたここを離れるから、戻ってくるまでの間好きなだけ気持ち良くなって、気が済むまでイきまくってるんだぞ。良いな?」

一方的に告げながら、男が口枷に存在する小さなレバーを親指で倒した。途端、捜査員の男根を覆う筒がわずかに振動し、尻穴を埋め尽くす張型が前後運動をほんの少しだけ行った。

「あぉっ!? えぉ、あぉぉっ!」

突然にやって来た待ち望んだ刺激に、捜査員が縄を軋ませつつ全身を跳ねさせる。一瞬だけ加えられた悦楽をもっと貪りたい。そう願いながら身をよじらせていた捜査員はやがて口内の張型への刺激が男根と尻穴の至福と連動していることに気付き、無我夢中で舌を動かし頬肉で張型を締め付け、自らの意思と動きで恋い焦がれた悦楽を追いかけ出した。
疲れ切った肉体では、高まっていく快感と射精欲に耐えきれず舌の動きがとまり、どうやっても絶頂には至れない。このまま頑張り続けても、待っているのは一人きりで放置されていた時以上の生殺しだけだ。その冷酷な事実には一切気付けないまま、捜査員は自分を余計に追い詰め崩壊を引き寄せる結果しか生まない雄と雌の悦びを一心不乱に口内を酷使して追い求めていく。

「んっ、んむ、んぐっ、ふうぅぅ!」
「そうそう、その調子で頑張りな。それじゃ、俺はもう行くから。精々頑張って早めに壊れるんだぜ? 淫乱捜査員さん」
「むっ、んぎゅ、むぅ、あぉ、ふむぁぁぁんっ!」

自分の存在も忘却して張型を愛撫し続ける愉快な光景を嘲笑いながら、悪の男は崩壊が確定した捜査員に背を向けて地下室を去り、正義の捜査員から淫獣へと堕ちゆく男をまた、出口の無い欲望に苛まれる地獄へと置き去りにしていくのだった。
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