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ビタースイートに隠し味
Act.1-04
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「――課長は」
ようやくの思いで口を開いた。
「私とこれからどうしたいと、思ってますか……?」
自分でも何を訊きたいのか分からなかった。けれど、今、椎名課長がどんな想いを抱いているのか知りたい。
「藤森と、ずっと一緒にいたい」
決定打とも言える台詞だった。
私も異性と交際した経験はあるから、椎名課長の言葉の意図はすぐに察した。
私は右手に握ったままだったスプーンをお皿に置き、椎名課長からアフォガードに視線を落とす。まだ、三分の一ほど残っていたけれど、それもほぼ溶けてしまい、ミルクがたっぷり入ったカフェオレの色に変化していた。
椎名課長の前のアフォガードも同様だった。さっきまではあれほど嬉しそうに噛み締めながら食べていたのに、今
はその存在すら忘れているのでは、と思えた。
「どうする?」
無言を貫いたままの私に、椎名課長はやんわりと、けれども少し焦った様子で催促してくる。
「迷惑なら迷惑だとはっきり言ってくれないか? 今までだって、藤森は無理に俺に付き合ってくれた。俺はこれ以上、藤森に迷惑はかけたくない。――俺は、藤森が幸せになれることを最優先したい……」
再び、私は顔を上げた。口元は笑みを浮かべているけれど、今にも泣き出しそうな表情だった。仕事の時は自信に満ち溢れていて誰からも頼られる存在なのに、こんな哀しい顔もするんだ、と胸の奥が酷く痛み出す。
私は躊躇いながら、私に重ねられた椎名課長の手の上からさらに私のそれを載せた。
椎名課長は瞠目したまま、重なり合った手を凝視している。
「藤森……、あまり俺を期待させるような真似は……」
「期待させているんです」
あからさまに動揺している椎名課長を前に、私は自分でも驚くほど堂々と振る舞っていた。
「私、椎名課長と無理に付き合っていたなんてことは一度もないです。ましてや、迷惑だなんてちっとも思ってませんよ? でも、今まで椎名課長に甘えていたのも事実です。だから、今日こそはっきりさせないと、ですよね……?」
私は小さく深呼吸し、おもむろに続けた。
「――私の幸せは、椎名課長とずっと一緒にいることです」
私にとっての一世一代の告白だった。口にしたとたん、全身が一気に熱を帯び始めた。
椎名課長は相変わらず私を見つめたまま、黙っていた。驚き過ぎて声が出なくなっているのか。
「――冗談、ではないんだよな……?」
恐る恐る確認してくる椎名課長に、私はゆっくりと頷いて見せた。
「俺、冗談は通じない方なんだが……」
「私だって、こんな冗談口が裂けたって言いませんよ……」
「本気、ってことでいいんだな?」
「本気です」
「本気の本気で?」
「本気の本気です」
しつこい、とは突っ込めなかった。うやむやにし続けていたのは私なのだから、必死になっている椎名課長を責めることは出来ない。
「ブランデー入りのアフォガード、食べたいです」
遠回しな言い方だったけれど、椎名課長には伝わったらしい。
「来るか?」
椎名課長からの再びの誘いに、私はコクリと首を動かした。
ようやくの思いで口を開いた。
「私とこれからどうしたいと、思ってますか……?」
自分でも何を訊きたいのか分からなかった。けれど、今、椎名課長がどんな想いを抱いているのか知りたい。
「藤森と、ずっと一緒にいたい」
決定打とも言える台詞だった。
私も異性と交際した経験はあるから、椎名課長の言葉の意図はすぐに察した。
私は右手に握ったままだったスプーンをお皿に置き、椎名課長からアフォガードに視線を落とす。まだ、三分の一ほど残っていたけれど、それもほぼ溶けてしまい、ミルクがたっぷり入ったカフェオレの色に変化していた。
椎名課長の前のアフォガードも同様だった。さっきまではあれほど嬉しそうに噛み締めながら食べていたのに、今
はその存在すら忘れているのでは、と思えた。
「どうする?」
無言を貫いたままの私に、椎名課長はやんわりと、けれども少し焦った様子で催促してくる。
「迷惑なら迷惑だとはっきり言ってくれないか? 今までだって、藤森は無理に俺に付き合ってくれた。俺はこれ以上、藤森に迷惑はかけたくない。――俺は、藤森が幸せになれることを最優先したい……」
再び、私は顔を上げた。口元は笑みを浮かべているけれど、今にも泣き出しそうな表情だった。仕事の時は自信に満ち溢れていて誰からも頼られる存在なのに、こんな哀しい顔もするんだ、と胸の奥が酷く痛み出す。
私は躊躇いながら、私に重ねられた椎名課長の手の上からさらに私のそれを載せた。
椎名課長は瞠目したまま、重なり合った手を凝視している。
「藤森……、あまり俺を期待させるような真似は……」
「期待させているんです」
あからさまに動揺している椎名課長を前に、私は自分でも驚くほど堂々と振る舞っていた。
「私、椎名課長と無理に付き合っていたなんてことは一度もないです。ましてや、迷惑だなんてちっとも思ってませんよ? でも、今まで椎名課長に甘えていたのも事実です。だから、今日こそはっきりさせないと、ですよね……?」
私は小さく深呼吸し、おもむろに続けた。
「――私の幸せは、椎名課長とずっと一緒にいることです」
私にとっての一世一代の告白だった。口にしたとたん、全身が一気に熱を帯び始めた。
椎名課長は相変わらず私を見つめたまま、黙っていた。驚き過ぎて声が出なくなっているのか。
「――冗談、ではないんだよな……?」
恐る恐る確認してくる椎名課長に、私はゆっくりと頷いて見せた。
「俺、冗談は通じない方なんだが……」
「私だって、こんな冗談口が裂けたって言いませんよ……」
「本気、ってことでいいんだな?」
「本気です」
「本気の本気で?」
「本気の本気です」
しつこい、とは突っ込めなかった。うやむやにし続けていたのは私なのだから、必死になっている椎名課長を責めることは出来ない。
「ブランデー入りのアフォガード、食べたいです」
遠回しな言い方だったけれど、椎名課長には伝わったらしい。
「来るか?」
椎名課長からの再びの誘いに、私はコクリと首を動かした。
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