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Chapter.8 過去より今が大切
Act.4
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しばらくすると、高遠さんの車はショッピングモールの駐車場へと入って行った。もしかしたら、ここで私の欲しいものを買ってくれるのだろうか。
「よし、ここなら何かあるだろう」
エンジンを停め、高遠さんがシートベルトを外す。
私も釣られるように外し、ドアを開けて外に出た。車の中が暖かかったら、乗る前と同様に急に寒気を覚える。
高遠さんは私の横に並び、自然に手を取る。歩幅も私に合わせ、ゆっくりと歩いてくれる。
「で、何が欲しいか考えてた?」
高遠さんに訊ねられ、私は首を横に振った。
「考える時間はそんなになかったです。てゆうか、ほんとにそんなに欲しいものはないですし……」
「ないの?」
「はい」
「じゃあ、俺が勝手に選んでもいい?」
「いいですよ」
「うーん……、俺はセンスとかまるっきりないんだけどねえ……」
「高遠さんが選んでくれたものなら何でも大事にします」
「それ、よけいにプレッシャーだよ……」
珍しく高遠さんが弱気になっている。もしかして、人にプレゼントをするのが苦手なのだろうか。
「――昔は、どうしてたんですか?」
あまり訊きたくないと思いつつ、あえて質問を投げかけてみた。
高遠さんは怪訝そうに私を一瞥し、けれどもすぐに質問の意図に気付いたらしく、「ああ」とニコリともせずに答えた。
「相手に選ばせてたよ。イベントがあるたびに催促されたからね。しかも俺のセンスがないのを分かっていたから、俺に選ばせようとは絶対しなかった」
「そうですか……」
自分から訊いておきながら、気持ちが急に萎えた。
高遠さんの昔の彼女は私と違い、とても積極的な人だったのだ。逢ったことがないから想像でしかないけれど、強くて芯のしっかりした人だったのかもしれない。
そう思うと、何故、高遠さんが私を選んだのか全く分からない。書店でバイトする私を見初めてくれたのだけど、結局、それも私の上辺だけしか見ていなかったのではないかと。
「過去は過去、今は今だよ」
私の手を握る高遠さんの手に少し力が入った。
「俺は絢より十五年も長生きしているんだ。それだけ色々経験もしてきたさ。でも、過去のことはとっくの昔に吹っ切れてるし、未練も全くない。今は絢が一番大切だからね」
絢が一番大切――
その一言だけで私の沈んだ心はいっぺんに癒された。高遠さんは適当なことは決して口にしない。私を大切にしてくれているのはいつも分かっていたのに、それでもほんのささいなことで高遠さんの気持ちを疑ってしまった自分が恥ずかしい。
「――ごめんなさい……」
謝罪を口にすると、「また謝って」と呆れられた。でも、今度は過去の彼女の話を吹っかけてしまった時とは違い、穏やかな表情をしていた。
「不安を感じるのはお互い様だよ。俺だって、絢がいつ俺から離れるだろうかって、内心ビクビクしてるんだから」
「高遠さんから離れるなんて絶対ないですよ」
「そっか。ありがとう」
高遠さんは私に向けて、満面の笑みを浮かべた。
「よし、ここなら何かあるだろう」
エンジンを停め、高遠さんがシートベルトを外す。
私も釣られるように外し、ドアを開けて外に出た。車の中が暖かかったら、乗る前と同様に急に寒気を覚える。
高遠さんは私の横に並び、自然に手を取る。歩幅も私に合わせ、ゆっくりと歩いてくれる。
「で、何が欲しいか考えてた?」
高遠さんに訊ねられ、私は首を横に振った。
「考える時間はそんなになかったです。てゆうか、ほんとにそんなに欲しいものはないですし……」
「ないの?」
「はい」
「じゃあ、俺が勝手に選んでもいい?」
「いいですよ」
「うーん……、俺はセンスとかまるっきりないんだけどねえ……」
「高遠さんが選んでくれたものなら何でも大事にします」
「それ、よけいにプレッシャーだよ……」
珍しく高遠さんが弱気になっている。もしかして、人にプレゼントをするのが苦手なのだろうか。
「――昔は、どうしてたんですか?」
あまり訊きたくないと思いつつ、あえて質問を投げかけてみた。
高遠さんは怪訝そうに私を一瞥し、けれどもすぐに質問の意図に気付いたらしく、「ああ」とニコリともせずに答えた。
「相手に選ばせてたよ。イベントがあるたびに催促されたからね。しかも俺のセンスがないのを分かっていたから、俺に選ばせようとは絶対しなかった」
「そうですか……」
自分から訊いておきながら、気持ちが急に萎えた。
高遠さんの昔の彼女は私と違い、とても積極的な人だったのだ。逢ったことがないから想像でしかないけれど、強くて芯のしっかりした人だったのかもしれない。
そう思うと、何故、高遠さんが私を選んだのか全く分からない。書店でバイトする私を見初めてくれたのだけど、結局、それも私の上辺だけしか見ていなかったのではないかと。
「過去は過去、今は今だよ」
私の手を握る高遠さんの手に少し力が入った。
「俺は絢より十五年も長生きしているんだ。それだけ色々経験もしてきたさ。でも、過去のことはとっくの昔に吹っ切れてるし、未練も全くない。今は絢が一番大切だからね」
絢が一番大切――
その一言だけで私の沈んだ心はいっぺんに癒された。高遠さんは適当なことは決して口にしない。私を大切にしてくれているのはいつも分かっていたのに、それでもほんのささいなことで高遠さんの気持ちを疑ってしまった自分が恥ずかしい。
「――ごめんなさい……」
謝罪を口にすると、「また謝って」と呆れられた。でも、今度は過去の彼女の話を吹っかけてしまった時とは違い、穏やかな表情をしていた。
「不安を感じるのはお互い様だよ。俺だって、絢がいつ俺から離れるだろうかって、内心ビクビクしてるんだから」
「高遠さんから離れるなんて絶対ないですよ」
「そっか。ありがとう」
高遠さんは私に向けて、満面の笑みを浮かべた。
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