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Chapter.4 触れて、側にいて
Act.2-01
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午前十時半過ぎ、待ち合わせ場所である駅に到着した。本当は私の家の最寄り駅まで迎えに来てくれると言ってくれたのだけど、さすがにそこまでしてもらうのは悪い気がしたから遠慮した。それでも、高遠さんは行くことを譲らず、最終的に渋々承諾してくれたといった感じだった。
待ち合わせ時間は十一時だった。だから、高遠さんが来るまで待とうと思いながら改札を出たのだけど、すでに高遠さんが待っていた。
私は思わず駆け寄ってしまった。
「そんなに慌てなくていいのに」
高遠さんの前に立つなり、高遠さんは微苦笑を浮かべる。
そんな高遠さんに、私は、「いえ」と首を横に振った。
「まさか、先に待ってると思わなかったから……」
「ビックリした?」
「ちょっと……」
「そっか。でも、わざわざここまで来てもらったんだから俺が先に待ってないと悪いだろ?」
「そんなことはないと思いますけど……」
「まあ、こんなトコで立ち話もなんだし、おいで?」
高遠さんに促され、私は横に並んで歩いた。
「でも、ラッキーだったな」
「何がです?」
不思議に思いながら高遠さんを見上げると、高遠さんは私に向けて満面の笑みを見せた。
「実際の待ち合わせ時間よりも早く君に逢えた」
こっちが赤面してしまうことをサラッと言ってくる。大人の男性はみんなこんな感じなのだろうか。
「やめてください。恥ずかしい……」
つい、可愛げのない返しをしてしまった。
でも、高遠さんは全く気にしていなかった。むしろ、私の反応を面白がっているようだった。
◆◇◆◇
駅を出て、駐車場の敷地内に入ると高遠さんはチノパンのポケットから車のキーを取り出し、車の施錠を解除する。どの車なのだろうと思っていたら、黒のセダンの前で足を止めた。
「荷物、後ろに載せていい?」
そう言いながら、高遠さんが手を差し出してくる。
私は少し躊躇い、高遠さんにトートバッグを託した。
「先に乗って」
言われるがまま、助手席のドアを開ける。そして、「お邪魔します」と言いながら入り、そろそろと座った。
その間、高遠さんはバッグをトランクに入れていた。
「よし、行こうか?」
運転席に着いた高遠さんがエンジンをかける。そういえば、高遠さんの車に乗るのは初めてだった、と今さらながら気付き、改めて緊張が高まった。
「――なんかすいません……」
思わず謝罪が口から出てしまった。
高遠さんはエンジンがかけられた状態のまま、不思議そうに私を見てきた。
「急にどうしたの?」
「いや、普通に車に乗っちゃって……」
「乗らなきゃ俺のトコには行けないだろ?」
「そうですけど……。なんてゆうか……、助手席に座っちゃうのは……」
高遠さんは少しばかり私を凝視し、それからすぐに声を上げて笑った。
「いやいや、それは当たり前だから。てか、ふたりきりなのにわざわざ後部座席に座られる方が俺としてはショックだし」
「――そんなもんですか……?」
「そんなもんだよ。だからいちいち気にしない。それとも、今日は来るのが嫌だった?」
「それこそないですって! 私、嫌いな人間のために時間を割くのは嫌いですもん」
「おお、結構はっきり言うな」
「――幻滅しました……?」
「いいや。むしろ清々しいな。――まあ、俺が嫌われたらさすがに哀しいけど……」
「高遠さんを嫌うことはないです。多分……」
「多分、かあ……。じゃあ、黒川さんに嫌われないように気を付けないとな」
あはは、と乾いた笑い方をして、ようやく車を発進させた。
待ち合わせ時間は十一時だった。だから、高遠さんが来るまで待とうと思いながら改札を出たのだけど、すでに高遠さんが待っていた。
私は思わず駆け寄ってしまった。
「そんなに慌てなくていいのに」
高遠さんの前に立つなり、高遠さんは微苦笑を浮かべる。
そんな高遠さんに、私は、「いえ」と首を横に振った。
「まさか、先に待ってると思わなかったから……」
「ビックリした?」
「ちょっと……」
「そっか。でも、わざわざここまで来てもらったんだから俺が先に待ってないと悪いだろ?」
「そんなことはないと思いますけど……」
「まあ、こんなトコで立ち話もなんだし、おいで?」
高遠さんに促され、私は横に並んで歩いた。
「でも、ラッキーだったな」
「何がです?」
不思議に思いながら高遠さんを見上げると、高遠さんは私に向けて満面の笑みを見せた。
「実際の待ち合わせ時間よりも早く君に逢えた」
こっちが赤面してしまうことをサラッと言ってくる。大人の男性はみんなこんな感じなのだろうか。
「やめてください。恥ずかしい……」
つい、可愛げのない返しをしてしまった。
でも、高遠さんは全く気にしていなかった。むしろ、私の反応を面白がっているようだった。
◆◇◆◇
駅を出て、駐車場の敷地内に入ると高遠さんはチノパンのポケットから車のキーを取り出し、車の施錠を解除する。どの車なのだろうと思っていたら、黒のセダンの前で足を止めた。
「荷物、後ろに載せていい?」
そう言いながら、高遠さんが手を差し出してくる。
私は少し躊躇い、高遠さんにトートバッグを託した。
「先に乗って」
言われるがまま、助手席のドアを開ける。そして、「お邪魔します」と言いながら入り、そろそろと座った。
その間、高遠さんはバッグをトランクに入れていた。
「よし、行こうか?」
運転席に着いた高遠さんがエンジンをかける。そういえば、高遠さんの車に乗るのは初めてだった、と今さらながら気付き、改めて緊張が高まった。
「――なんかすいません……」
思わず謝罪が口から出てしまった。
高遠さんはエンジンがかけられた状態のまま、不思議そうに私を見てきた。
「急にどうしたの?」
「いや、普通に車に乗っちゃって……」
「乗らなきゃ俺のトコには行けないだろ?」
「そうですけど……。なんてゆうか……、助手席に座っちゃうのは……」
高遠さんは少しばかり私を凝視し、それからすぐに声を上げて笑った。
「いやいや、それは当たり前だから。てか、ふたりきりなのにわざわざ後部座席に座られる方が俺としてはショックだし」
「――そんなもんですか……?」
「そんなもんだよ。だからいちいち気にしない。それとも、今日は来るのが嫌だった?」
「それこそないですって! 私、嫌いな人間のために時間を割くのは嫌いですもん」
「おお、結構はっきり言うな」
「――幻滅しました……?」
「いいや。むしろ清々しいな。――まあ、俺が嫌われたらさすがに哀しいけど……」
「高遠さんを嫌うことはないです。多分……」
「多分、かあ……。じゃあ、黒川さんに嫌われないように気を付けないとな」
あはは、と乾いた笑い方をして、ようやく車を発進させた。
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