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Chapter.3 分かっているつもり
Act.3-04
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「どうしたの、急に笑って?」
「だって、高遠さんがおかしいから」
「おかしい? 俺が?」
「はい。出来るものを一生懸命数えてるのが」
「うーん……、そんなに変だったか……?」
真面目に考え込んでしまうものだから、なおさら私は笑いのツボに嵌ってしまった。控えめにしていたのに、とうとう堪えきれなくて涙が出るほど笑ってしまった。
高遠さんは呆気に取られて私を見ていたけれど、私があまりにも笑い過ぎるからか、とうとう釣られるように笑い出した。
はたから見たら、完全に酔っ払ってテンションがおかしくなっているようにしか映らないかもしれない。でも、ここは居酒屋だ。私達以上に盛り上がっている人達もいるし、まだまだ大人しい方だと思う。
しばらく笑っていたけれど、どちらからともなく笑いを徐々にフェードアウトさせていった。
「いやあ、笑い疲れた」
高遠さんは大きな溜め息を漏らし、燗に手を付けた。そして、お猪口にお酒を注ぎ、クイと一瞬で飲み干した。
「でも良かった」
二杯目を注いでから、私をジッと見つめてくる。
不思議に思いながら首を傾げていると、高遠さんはニッコリと笑った。
「初めて君が楽しそうに笑う姿を見られた」
高遠さんに言われ、私もハッと気付く。確かに、高遠さんを前にここまで声を上げて笑ったことはなかった。とはいえ、高遠さんとこうしてふたりで過ごすのは二度目なのだけど。
「今日はいいこと尽くめだ」
ニコニコとひとりで何度も頷きながら、二杯目のお酒も美味しそうに飲む。三杯目、四杯目、と次々に注いでは飲み、あっという間にひとりで空にしてしまった。
お酒がだいぶ回ってきたのか、高遠さんも店に入った頃より明るくなっている。でも、極端に酔っ払っている様子はないし、一見するとシラフな状態と変わりない。
私も私で、気分が良くなっている自覚があった。それでも、ある程度は理性も残っていたから、高遠さんにみっともない姿を晒すわけにはいかないと自制することが出来た。
「ねえ、黒川さん」
片肘を着いた姿勢で、高遠さんが真っ直ぐな視線を私に注いできた。
「今度、俺のトコに来る?」
一瞬、高遠さんに何を言われたのか理解出来なかった。ポカンとしたまま高遠さんを見つめ返していると、再び、「どう?」と答えを催促してくる。
「えっと、それは……」
私が答えに窮していると、高遠さんは、「ああ」と微苦笑を浮かべた。
「いきなりなんてビックリするよね? 大丈夫だよ、君の嫌がることは絶対しないと誓う。ただ、君の作った料理を食べてみたいって思っただけだから」
「私の料理、ですか……?」
「うん。かなり図々しいお願いだってことは承知してる」
「でも……、高遠さんの口に合うかどうか……」
「大丈夫だよ、君が作ってくれたものなら」
その自信はどこからくるのかと、私はほろ酔いの状態でも呆れてしまった。でも、食べてみたいと言われて悪い気がしていないのも本音だった。ただ、やっぱり、高遠さんの所へ行くのは少し怖い気もする。
高遠さんにも、私の警戒心は伝わったらしい。再び、「大丈夫だよ」と重ねて強調してきた。
「夜が怖いなら日中で構わない。それなら問題ないと思うけど? 暗くなる前に帰れば、親御さんにだって心配かけないで済むだろうし」
「だって、高遠さんがおかしいから」
「おかしい? 俺が?」
「はい。出来るものを一生懸命数えてるのが」
「うーん……、そんなに変だったか……?」
真面目に考え込んでしまうものだから、なおさら私は笑いのツボに嵌ってしまった。控えめにしていたのに、とうとう堪えきれなくて涙が出るほど笑ってしまった。
高遠さんは呆気に取られて私を見ていたけれど、私があまりにも笑い過ぎるからか、とうとう釣られるように笑い出した。
はたから見たら、完全に酔っ払ってテンションがおかしくなっているようにしか映らないかもしれない。でも、ここは居酒屋だ。私達以上に盛り上がっている人達もいるし、まだまだ大人しい方だと思う。
しばらく笑っていたけれど、どちらからともなく笑いを徐々にフェードアウトさせていった。
「いやあ、笑い疲れた」
高遠さんは大きな溜め息を漏らし、燗に手を付けた。そして、お猪口にお酒を注ぎ、クイと一瞬で飲み干した。
「でも良かった」
二杯目を注いでから、私をジッと見つめてくる。
不思議に思いながら首を傾げていると、高遠さんはニッコリと笑った。
「初めて君が楽しそうに笑う姿を見られた」
高遠さんに言われ、私もハッと気付く。確かに、高遠さんを前にここまで声を上げて笑ったことはなかった。とはいえ、高遠さんとこうしてふたりで過ごすのは二度目なのだけど。
「今日はいいこと尽くめだ」
ニコニコとひとりで何度も頷きながら、二杯目のお酒も美味しそうに飲む。三杯目、四杯目、と次々に注いでは飲み、あっという間にひとりで空にしてしまった。
お酒がだいぶ回ってきたのか、高遠さんも店に入った頃より明るくなっている。でも、極端に酔っ払っている様子はないし、一見するとシラフな状態と変わりない。
私も私で、気分が良くなっている自覚があった。それでも、ある程度は理性も残っていたから、高遠さんにみっともない姿を晒すわけにはいかないと自制することが出来た。
「ねえ、黒川さん」
片肘を着いた姿勢で、高遠さんが真っ直ぐな視線を私に注いできた。
「今度、俺のトコに来る?」
一瞬、高遠さんに何を言われたのか理解出来なかった。ポカンとしたまま高遠さんを見つめ返していると、再び、「どう?」と答えを催促してくる。
「えっと、それは……」
私が答えに窮していると、高遠さんは、「ああ」と微苦笑を浮かべた。
「いきなりなんてビックリするよね? 大丈夫だよ、君の嫌がることは絶対しないと誓う。ただ、君の作った料理を食べてみたいって思っただけだから」
「私の料理、ですか……?」
「うん。かなり図々しいお願いだってことは承知してる」
「でも……、高遠さんの口に合うかどうか……」
「大丈夫だよ、君が作ってくれたものなら」
その自信はどこからくるのかと、私はほろ酔いの状態でも呆れてしまった。でも、食べてみたいと言われて悪い気がしていないのも本音だった。ただ、やっぱり、高遠さんの所へ行くのは少し怖い気もする。
高遠さんにも、私の警戒心は伝わったらしい。再び、「大丈夫だよ」と重ねて強調してきた。
「夜が怖いなら日中で構わない。それなら問題ないと思うけど? 暗くなる前に帰れば、親御さんにだって心配かけないで済むだろうし」
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