23 / 66
Chapter.3 分かっているつもり
Act.3-02
しおりを挟む
「まずは乾杯しようか?」
高遠さんに言われ、私は半ば慌ててコップを持つ。
「それじゃ、お疲れさま」
「お疲れさまでした」
互いのコップがぶつかると、カチン、と乾いた音が鳴る。
高遠さんはそのままグイと一気にコップの中身を呷り、私はゆっくりと喉に流し込む。
あっという間に空になった高遠さんのコップに二杯目を注ごうと、私はすぐに瓶に手を伸ばした。
「ありがとう」
私の行動を察し、高遠さんは口元に弧を描いて私からの酌を受ける。ただ、さっきの店員さんと違い、あまり注ぎ慣れていないから、泡だけが異様なまでに多くなってしまった。
それでも、高遠さんは嬉しそうにそれを飲んでくれる。
「黒川さんのような可愛い子にお酌してもらえるなんて、俺は幸せ者だね」
とてつもない殺し文句まで言ってくるものだから、私は全身に火が点いたように熱くなるのを感じた。
「――やめて下さい、恥ずかしい……」
恨めしげに睨むも、高遠さんはキョトンとしている。
「どうして?」
「私のこと、可愛いとか、そうゆうの……」
「ああ、セクハラ発言だったね?」
「いえ、セクハラだとかは思ってませんけど……」
「じゃあ、別に言っても問題ないんじゃない? 君が可愛いのはほんとのことなんだし」
「――別に可愛くないですもん、私……」
「そういうトコは素直じゃないんだなあ……」
高遠さんは二杯目もあっという間に飲み干してしまった。
「君は可愛いって自覚をちょっとは持った方がいいよ? もちろん、自意識過剰過ぎるのもどうかと思うけどね。でも、君は無防備過ぎる。だから変なのに狙われてしまうんだよ? まあ、俺も君を狙っていた側だから強く言えないトコもあるにはあるけど……」
そこまで言うと、空になったコップに手酌でビールを注ぐ。私がやろうとしたけれど、時すでに遅しだった。
高遠さんが三杯目を飲んでいるところへ、頼んでいた料理が運ばれてきた。刺身にトマトサラダに、お勧めのブリ大根。取り皿と箸もそれぞれの前に置かれた。
「ごゆっくりどうぞ」
またお決まりの挨拶をし、戻ってゆく若い店員さん。その背中を見送ってから、高遠さんは、「食おうか?」と促してきた。
私が頷くと、テーブル横に供えられている醤油を取ってくれた。そして、私と高遠さんの小皿に注ぎ、早速刺身に箸を伸ばした。先に手を付けたのは、定番のマグロの赤身だった。
私もどれにしようか悩んだ。でも、マグロもだけど、それ以上にツブ貝が気になってしまい、ツブ貝から手を付けることにした。
わさびと醤油をツブ貝に付け、口に運ぶと、ツンとしたわさびの辛みのあとにコリコリと良い歯応えを感じた。魚も良いけれど、貝類もとても美味しい。
高遠さんに言われ、私は半ば慌ててコップを持つ。
「それじゃ、お疲れさま」
「お疲れさまでした」
互いのコップがぶつかると、カチン、と乾いた音が鳴る。
高遠さんはそのままグイと一気にコップの中身を呷り、私はゆっくりと喉に流し込む。
あっという間に空になった高遠さんのコップに二杯目を注ごうと、私はすぐに瓶に手を伸ばした。
「ありがとう」
私の行動を察し、高遠さんは口元に弧を描いて私からの酌を受ける。ただ、さっきの店員さんと違い、あまり注ぎ慣れていないから、泡だけが異様なまでに多くなってしまった。
それでも、高遠さんは嬉しそうにそれを飲んでくれる。
「黒川さんのような可愛い子にお酌してもらえるなんて、俺は幸せ者だね」
とてつもない殺し文句まで言ってくるものだから、私は全身に火が点いたように熱くなるのを感じた。
「――やめて下さい、恥ずかしい……」
恨めしげに睨むも、高遠さんはキョトンとしている。
「どうして?」
「私のこと、可愛いとか、そうゆうの……」
「ああ、セクハラ発言だったね?」
「いえ、セクハラだとかは思ってませんけど……」
「じゃあ、別に言っても問題ないんじゃない? 君が可愛いのはほんとのことなんだし」
「――別に可愛くないですもん、私……」
「そういうトコは素直じゃないんだなあ……」
高遠さんは二杯目もあっという間に飲み干してしまった。
「君は可愛いって自覚をちょっとは持った方がいいよ? もちろん、自意識過剰過ぎるのもどうかと思うけどね。でも、君は無防備過ぎる。だから変なのに狙われてしまうんだよ? まあ、俺も君を狙っていた側だから強く言えないトコもあるにはあるけど……」
そこまで言うと、空になったコップに手酌でビールを注ぐ。私がやろうとしたけれど、時すでに遅しだった。
高遠さんが三杯目を飲んでいるところへ、頼んでいた料理が運ばれてきた。刺身にトマトサラダに、お勧めのブリ大根。取り皿と箸もそれぞれの前に置かれた。
「ごゆっくりどうぞ」
またお決まりの挨拶をし、戻ってゆく若い店員さん。その背中を見送ってから、高遠さんは、「食おうか?」と促してきた。
私が頷くと、テーブル横に供えられている醤油を取ってくれた。そして、私と高遠さんの小皿に注ぎ、早速刺身に箸を伸ばした。先に手を付けたのは、定番のマグロの赤身だった。
私もどれにしようか悩んだ。でも、マグロもだけど、それ以上にツブ貝が気になってしまい、ツブ貝から手を付けることにした。
わさびと醤油をツブ貝に付け、口に運ぶと、ツンとしたわさびの辛みのあとにコリコリと良い歯応えを感じた。魚も良いけれど、貝類もとても美味しい。
0
お気に入りに追加
354
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】こんな産婦人科のお医者さんがいたら♡妄想エロシチュエーション短編作品♡
雪村 里帆
恋愛
ある日、産婦人科に訪れるとそこには顔を見たら赤面してしまう程のイケメン先生がいて…!?何故か看護師もいないし2人きり…エコー検査なのに触診されてしまい…?雪村里帆の妄想エロシチュエーション短編。完全フィクションでお送り致します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる