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Chapter.2 もっと知りたい
Act.1-02
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そこまで言うと、七緒はアイスコーヒーに口を付ける。
私も七緒に倣ってカフェラテをゆっくりと啜る。
周りがざわめいている中、私達の間だけ静かな空間に包まれている。佳奈子が騒がしい分、私も七緒もどちらかと言えば無口の部類に入るから、会話が途切れると沈黙が流れる。
気まずさは全くない。むしろ、静かな時間を過ごせるのが七緒と一緒にいる良いところだと思っている。もちろん、佳奈子の底抜けな明るさも好きだ。
「彼氏とか、全く興味ない?」
しばしの沈黙のあと、七緒から質問が飛んでくる。先ほどまでの話の流れ的に、もしかしたら、とあらかた予想はしていたから、さほど驚きはしなかったものの、それでもやはり考え込んでしまう。
「興味ないわけじゃないけど……」
私はおもむろに口を開いた。
「今はそうゆうのはあんまり……。正直、変に言い寄られても気持ち悪いって思うだけだし、相手は何か勘違いしてるんじゃないかって勘繰ってしまう……」
「なるほど」
七緒は私の話に何度も頷く。
「警戒するのは当然だよね。このご時世、何があるか分かったもんじゃないし。でも、絢の場合、ガードが固過ぎる気もする。佳奈子は佳奈子で緩過ぎだけど」
「――私みたいなのはダメってこと……?」
「いやいや、そんなことは言ってない」
今度は大袈裟なほど頭を振る。
「適当に色目を使わないトコは絢のいいトコだしさ。ただ、たまーにはちょっと柔軟性を持って接してもいいんじゃない、って言いたかっただけ。ま、私のようなのが言っても説得力ないかもしれないけどね」
「柔軟性……」
私は独り言のように呟き、考える。脳裏に浮かぶのはやはり、高遠さんのこと。
高遠さんは私に不思議なほど安心感を与える人だった。でも、全く警戒心がないかと言われればそうでもない。あの男子よりは数百倍も数万倍も信用出来そうだけど、心のどこかでは、まだわずかでも気を許してはならないと思っている。
あんなに親切にしてくれたのに――
高遠さんをまだ疑ってしまう私に、もうひとりの私が静かに責めてくる。
初対面で緊張していたせいもあって、まともに顔を見ていない。だから、高遠さんを見かけたとしても、きっとすぐには想い出せない。憶えているのは、自立した社会人らしく綺麗に締められたネクタイに、男性らしい骨張った大きな手。それだけでも、周りにいる男子達とは次元が違うと改めて思った。
「絢?」
名前を呼ばれ、ハッと我に返る。弾かれたように顔を上げてみれば、怪訝そうに私を見つめる七緒と目が合った。
「どうした?」
「ううん、ちょっと考えごとしてただけ」
決して嘘ではないからその通りに返す。
ここで佳奈子であれば何が何でも詮索しようとしてくるところだけど、七緒は首を突っ込んでくるような真似はしない。そういう点では、今、佳奈子がいなかったことに心底ホッとする。
私も七緒に倣ってカフェラテをゆっくりと啜る。
周りがざわめいている中、私達の間だけ静かな空間に包まれている。佳奈子が騒がしい分、私も七緒もどちらかと言えば無口の部類に入るから、会話が途切れると沈黙が流れる。
気まずさは全くない。むしろ、静かな時間を過ごせるのが七緒と一緒にいる良いところだと思っている。もちろん、佳奈子の底抜けな明るさも好きだ。
「彼氏とか、全く興味ない?」
しばしの沈黙のあと、七緒から質問が飛んでくる。先ほどまでの話の流れ的に、もしかしたら、とあらかた予想はしていたから、さほど驚きはしなかったものの、それでもやはり考え込んでしまう。
「興味ないわけじゃないけど……」
私はおもむろに口を開いた。
「今はそうゆうのはあんまり……。正直、変に言い寄られても気持ち悪いって思うだけだし、相手は何か勘違いしてるんじゃないかって勘繰ってしまう……」
「なるほど」
七緒は私の話に何度も頷く。
「警戒するのは当然だよね。このご時世、何があるか分かったもんじゃないし。でも、絢の場合、ガードが固過ぎる気もする。佳奈子は佳奈子で緩過ぎだけど」
「――私みたいなのはダメってこと……?」
「いやいや、そんなことは言ってない」
今度は大袈裟なほど頭を振る。
「適当に色目を使わないトコは絢のいいトコだしさ。ただ、たまーにはちょっと柔軟性を持って接してもいいんじゃない、って言いたかっただけ。ま、私のようなのが言っても説得力ないかもしれないけどね」
「柔軟性……」
私は独り言のように呟き、考える。脳裏に浮かぶのはやはり、高遠さんのこと。
高遠さんは私に不思議なほど安心感を与える人だった。でも、全く警戒心がないかと言われればそうでもない。あの男子よりは数百倍も数万倍も信用出来そうだけど、心のどこかでは、まだわずかでも気を許してはならないと思っている。
あんなに親切にしてくれたのに――
高遠さんをまだ疑ってしまう私に、もうひとりの私が静かに責めてくる。
初対面で緊張していたせいもあって、まともに顔を見ていない。だから、高遠さんを見かけたとしても、きっとすぐには想い出せない。憶えているのは、自立した社会人らしく綺麗に締められたネクタイに、男性らしい骨張った大きな手。それだけでも、周りにいる男子達とは次元が違うと改めて思った。
「絢?」
名前を呼ばれ、ハッと我に返る。弾かれたように顔を上げてみれば、怪訝そうに私を見つめる七緒と目が合った。
「どうした?」
「ううん、ちょっと考えごとしてただけ」
決して嘘ではないからその通りに返す。
ここで佳奈子であれば何が何でも詮索しようとしてくるところだけど、七緒は首を突っ込んでくるような真似はしない。そういう点では、今、佳奈子がいなかったことに心底ホッとする。
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