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Chapter.1 告白は突然に
Act.2-01
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外に出ると、刺すような冷気が身体に纏わり付く。今夜は雪の予報だったけれど、まだ降る気配はない。それでも空は重苦しい雲に覆われていたから、多分、深夜のうちに降るかもしれない。
私はバッグに押し込んでいたマフラーを出し、素早く巻いた。ほんの少し、首の辺りが温かく感じる。
「おい!」
歩き出してから、背後から呼び止める声が聴こえた。声の感じから、多分、場の空気を白けさせた男子Aだろうとは察した。でも、聴こえていないふりをして歩き続ける。
「おいってば!」
せっかく無視していたのに、また私を呼ぶ。しかも、もの凄い速さで私に駆け寄り、左手首をがっしりと掴んできた。
私は渋々足を止めた。そして、仕方なしに男子Aを一瞥する。
「ひとりで暗い夜道を変えるなんて危ないだろ?」
「慣れてますから」
ぶっきらぼうに答える私に、男子Aは、「釣れないなあ」とわざとらしく肩を竦める。
「せっかく可愛いのにもったいねえ。そんなんじゃ男に相手にされねえぞ?」
「よけいなお世話です」
私はそう言い、男子Aの手を振りほどこうとした。なのに、私が抵抗しようとすればするほど手首を握り締める握力は強くなる。
「離してくれませんか? ひとりで大丈夫って言ったでしょ?」
「ダメ」
男子Aは気持ち悪いほど満面の笑みを向けてくる。
「さっきの非礼の詫びだよ。しっかり送り届けて来い、って言われた。つうか、俺があんたに興味あるから」
「――は?」
私の表情は酷く険しくなっていたと思う。苛立ちも募り、自由の利く足でこいつの足を力いっぱい踏ん付けてやりたい衝動に駆られた。
でも、足が出る前に私は腕を引かれていた。私のことなど全く考えていない自己中心的な行動に、私は怒りを通り越して泣きたくなってきた。
「やだ、離してってば!」
「ダメだっつっただろ?」
「だからなんでダメなのっ?」
「ダメなもんはダメなんだよ」
意味が分からない。非礼を詫びる、と言いながら、かえって酷いことをされている。
不意に、嫌な予感が脳裏をよぎった。異性と交際したことがないとはいえ、そういう知識が全くないわけではない。
まさかと思いたい。でも、その〈まさか〉が起きないとも限らない。
やっぱり、何としても逃げる!――
私は意を決した。幸い、相手は私を引っ張ることに集中していて隙だらけだ。
片脚を振り上げる。そして、弁慶の泣き所をめがけ、思いきり蹴った。
「ってえ!」
手の力が緩んだ。私は全速力で走る。
だいぶ走ってからチラリと振り返ると、男子Aは脛をさすりながらも私を追って来る。しつこいにもほどがある。
この異様とも言える執念は何なんだろう。そう思いながら走り続けていたら、ドン、と何かにぶつかった。
「ご、ごめんなさいっ!」
障害物――もとい、ぶつかってしまった相手に私は慌てて頭を下げた。
そのうち、男子Aの距離が縮まってくる。
逃げないといけない。でも、走り過ぎて息切れしている。
そう思っていたら、ぶつかった相手が私の二の腕をそっと掴み、男子Aの前に立ち塞がった。
私はバッグに押し込んでいたマフラーを出し、素早く巻いた。ほんの少し、首の辺りが温かく感じる。
「おい!」
歩き出してから、背後から呼び止める声が聴こえた。声の感じから、多分、場の空気を白けさせた男子Aだろうとは察した。でも、聴こえていないふりをして歩き続ける。
「おいってば!」
せっかく無視していたのに、また私を呼ぶ。しかも、もの凄い速さで私に駆け寄り、左手首をがっしりと掴んできた。
私は渋々足を止めた。そして、仕方なしに男子Aを一瞥する。
「ひとりで暗い夜道を変えるなんて危ないだろ?」
「慣れてますから」
ぶっきらぼうに答える私に、男子Aは、「釣れないなあ」とわざとらしく肩を竦める。
「せっかく可愛いのにもったいねえ。そんなんじゃ男に相手にされねえぞ?」
「よけいなお世話です」
私はそう言い、男子Aの手を振りほどこうとした。なのに、私が抵抗しようとすればするほど手首を握り締める握力は強くなる。
「離してくれませんか? ひとりで大丈夫って言ったでしょ?」
「ダメ」
男子Aは気持ち悪いほど満面の笑みを向けてくる。
「さっきの非礼の詫びだよ。しっかり送り届けて来い、って言われた。つうか、俺があんたに興味あるから」
「――は?」
私の表情は酷く険しくなっていたと思う。苛立ちも募り、自由の利く足でこいつの足を力いっぱい踏ん付けてやりたい衝動に駆られた。
でも、足が出る前に私は腕を引かれていた。私のことなど全く考えていない自己中心的な行動に、私は怒りを通り越して泣きたくなってきた。
「やだ、離してってば!」
「ダメだっつっただろ?」
「だからなんでダメなのっ?」
「ダメなもんはダメなんだよ」
意味が分からない。非礼を詫びる、と言いながら、かえって酷いことをされている。
不意に、嫌な予感が脳裏をよぎった。異性と交際したことがないとはいえ、そういう知識が全くないわけではない。
まさかと思いたい。でも、その〈まさか〉が起きないとも限らない。
やっぱり、何としても逃げる!――
私は意を決した。幸い、相手は私を引っ張ることに集中していて隙だらけだ。
片脚を振り上げる。そして、弁慶の泣き所をめがけ、思いきり蹴った。
「ってえ!」
手の力が緩んだ。私は全速力で走る。
だいぶ走ってからチラリと振り返ると、男子Aは脛をさすりながらも私を追って来る。しつこいにもほどがある。
この異様とも言える執念は何なんだろう。そう思いながら走り続けていたら、ドン、と何かにぶつかった。
「ご、ごめんなさいっ!」
障害物――もとい、ぶつかってしまった相手に私は慌てて頭を下げた。
そのうち、男子Aの距離が縮まってくる。
逃げないといけない。でも、走り過ぎて息切れしている。
そう思っていたら、ぶつかった相手が私の二の腕をそっと掴み、男子Aの前に立ち塞がった。
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