3 / 16
3話 突然の告白
しおりを挟む
「あら、咲也おかえり。お友達が来てるわよ。」
「え?颯太が?」
「いいえ、女の子よ。桜色の髪をした綺麗な子。」
小春の言葉を聞いて、咲也は大急ぎで靴を脱ぎ、リビングに駆け込んだ。そこには、お茶を飲むサクラの姿があった。
「あ、咲也くん。お帰りなさい。部活見学に行ってたの?」
「お前何でここにいるんだよ⁉︎つーか住所‥‥どうやって特定した⁉︎」
「特定だなんて、人聞きの悪い。颯太くんが教えてくれなかったから、学校中で聞き回っただけ。もうすっごく大変だった。」
咲也は頭を抱え、小春に鬼気迫る勢いで言葉をかけた。
「叔母さん!何で入れたんですか⁉︎こいつとは友達でも何でもないですよ!」
「ごめんなさい。でも、女の子の友達が来るなんて初めてだったから嬉しくて。」
小春は嬉しそうにニコニコしているが、咲也は溜息をついた。
「姉貴はバイトで遅いですよね?」
「ええ。夕食はいらないって。」
「花霞上。家まで送ってやるから帰れ。居座られても迷惑だ。」
「‥‥家も家族も、ここにはないから‥‥」
サクラの言葉に2人が顔を見合わせていると、叔父の向陽(こうよう)が入って来た。もともと大柄なのでやや威圧感があるが、普段よりも無愛想に見えて、咲也はギョッとした。しかしすぐに我に帰り、サクラの腕を掴む。
「こいつ送り届けて来ます。夕飯は外で食べるのでご心配なく。」
「‥‥もう遅いのだから今日はやめておきなさい。弥生もそろそろ帰ってくる。」
「だけど‥‥叔父さんたちに迷惑です。」
「私たちは構わない。一晩くらい泊めてあげなさい。」
「わ、分かりました。ありがとうございます。」
向陽が部屋を出ると、小春が、“あの人も、女の子のお友達が来て嬉しいのよ”と言った。咲也は、“友達じゃないです”、と念を押し、話をするためにサクラを自分の部屋に通した。
「叔父さんの許可が出たから一晩は泊めるけど‥‥お前、何しに来たんだ?」
「咲也くんとお姉さんと3人で話がしたかったの。お姉さんはいつ帰ってくる?」
「1、2時間後くらいだな。それより話って何だよ?初日からやけに絡んでくるけど、一体俺の何を知ってる?何の目的で俺に近づく?」
「お姉さんが帰って来たら全部話すよ。」
「‥‥分かった。」
しばらくして弥生が帰ってくると、咲也は姉に事情を話した。弥生は、
「叔母さんの手伝いが終わったら行くから、少し待ってて。」
と言った。
*
弥生はキッチンの片付けを済ますと、咲也の部屋に3人分のお茶を持って入って来た。
「時間を作っていただいてありがとうございます。急に押しかけて‥‥怒っていますか?」
「まさか。咲也が颯太くん以外のお友達を連れてくることは珍しいから、私としては嬉しいかな。叔父さんたちも喜んでるし。それで‥‥話って?」
サクラは突然、額が床につくほど深い土下座をした。2人は慌てふためく。
「これから私がお話しすることは、お2人を不快にさせるかもしれません。でも全てお2人を思ってのことなんです。それを理解した上で‥‥私の話を聞いてくれますか?」
サクラの真剣な表情を見た2人は、顔を見合わせて頷いた。
「そんな覚悟があるなら、私たちもしっかり聞かないとダメだね。咲也もそうでしょ?」
「ああ。話してくれよ。何だかよく分からないけど。」
2人の言葉に安心したサクラは、顔を上げて深呼吸をした。いつもとは違う真剣な表情で、彼女は話を始めた。
「以前私は、咲也くんにお2人のご両親‥‥菜種梅雨晴子(なたねづゆせいこ)さんと菜種梅雨朝陽(なたねづゆあさひ)さんは亡くなっていないと言いました。ですが、少し言葉を間違えました。正しくは‥‥“魂は死んでいない”‥‥もっと簡単に言うならば“成仏していない”のです。ご両親はまだこちら側に未練があり、魂が彷徨っている。魂の願いを叶えなければ、成仏はできません。ご両親とお2人は、会わなければなりません。私はそのために咲也くんと颯太くんに近づきました。」
サクラの口から出る言葉は2人を混乱させた。こらえきれずに弥生が手を上げて質問する。
「あなたは一体何者?私たちはどうやったら父さんたちに会えるの?」
「私はこの世とあの世を繋ぐ橋だとでも思ってください。お会いする方法ですが‥‥死者とはどこででも会えるわけではありません。」
「そりゃそうだろう。生者の俺たちと、死者の親父とお袋が、一体どこで会うっていうんだよ?」
咲也の言葉に、サクラは口をつぐんだ。咲也が苛立ちながら立ち上がる。
「そもそも生者と死者が会うなんて、都合のいい話があるのか?言いたいことは分かったけど、実現できないなら全て無に帰すだけだ。」
「私は、それを実現させるためにここに来たの。叔父さんと叔母さんの協力を得る必要もあるから‥‥話をさせてくれないかな?」
「え?颯太が?」
「いいえ、女の子よ。桜色の髪をした綺麗な子。」
小春の言葉を聞いて、咲也は大急ぎで靴を脱ぎ、リビングに駆け込んだ。そこには、お茶を飲むサクラの姿があった。
「あ、咲也くん。お帰りなさい。部活見学に行ってたの?」
「お前何でここにいるんだよ⁉︎つーか住所‥‥どうやって特定した⁉︎」
「特定だなんて、人聞きの悪い。颯太くんが教えてくれなかったから、学校中で聞き回っただけ。もうすっごく大変だった。」
咲也は頭を抱え、小春に鬼気迫る勢いで言葉をかけた。
「叔母さん!何で入れたんですか⁉︎こいつとは友達でも何でもないですよ!」
「ごめんなさい。でも、女の子の友達が来るなんて初めてだったから嬉しくて。」
小春は嬉しそうにニコニコしているが、咲也は溜息をついた。
「姉貴はバイトで遅いですよね?」
「ええ。夕食はいらないって。」
「花霞上。家まで送ってやるから帰れ。居座られても迷惑だ。」
「‥‥家も家族も、ここにはないから‥‥」
サクラの言葉に2人が顔を見合わせていると、叔父の向陽(こうよう)が入って来た。もともと大柄なのでやや威圧感があるが、普段よりも無愛想に見えて、咲也はギョッとした。しかしすぐに我に帰り、サクラの腕を掴む。
「こいつ送り届けて来ます。夕飯は外で食べるのでご心配なく。」
「‥‥もう遅いのだから今日はやめておきなさい。弥生もそろそろ帰ってくる。」
「だけど‥‥叔父さんたちに迷惑です。」
「私たちは構わない。一晩くらい泊めてあげなさい。」
「わ、分かりました。ありがとうございます。」
向陽が部屋を出ると、小春が、“あの人も、女の子のお友達が来て嬉しいのよ”と言った。咲也は、“友達じゃないです”、と念を押し、話をするためにサクラを自分の部屋に通した。
「叔父さんの許可が出たから一晩は泊めるけど‥‥お前、何しに来たんだ?」
「咲也くんとお姉さんと3人で話がしたかったの。お姉さんはいつ帰ってくる?」
「1、2時間後くらいだな。それより話って何だよ?初日からやけに絡んでくるけど、一体俺の何を知ってる?何の目的で俺に近づく?」
「お姉さんが帰って来たら全部話すよ。」
「‥‥分かった。」
しばらくして弥生が帰ってくると、咲也は姉に事情を話した。弥生は、
「叔母さんの手伝いが終わったら行くから、少し待ってて。」
と言った。
*
弥生はキッチンの片付けを済ますと、咲也の部屋に3人分のお茶を持って入って来た。
「時間を作っていただいてありがとうございます。急に押しかけて‥‥怒っていますか?」
「まさか。咲也が颯太くん以外のお友達を連れてくることは珍しいから、私としては嬉しいかな。叔父さんたちも喜んでるし。それで‥‥話って?」
サクラは突然、額が床につくほど深い土下座をした。2人は慌てふためく。
「これから私がお話しすることは、お2人を不快にさせるかもしれません。でも全てお2人を思ってのことなんです。それを理解した上で‥‥私の話を聞いてくれますか?」
サクラの真剣な表情を見た2人は、顔を見合わせて頷いた。
「そんな覚悟があるなら、私たちもしっかり聞かないとダメだね。咲也もそうでしょ?」
「ああ。話してくれよ。何だかよく分からないけど。」
2人の言葉に安心したサクラは、顔を上げて深呼吸をした。いつもとは違う真剣な表情で、彼女は話を始めた。
「以前私は、咲也くんにお2人のご両親‥‥菜種梅雨晴子(なたねづゆせいこ)さんと菜種梅雨朝陽(なたねづゆあさひ)さんは亡くなっていないと言いました。ですが、少し言葉を間違えました。正しくは‥‥“魂は死んでいない”‥‥もっと簡単に言うならば“成仏していない”のです。ご両親はまだこちら側に未練があり、魂が彷徨っている。魂の願いを叶えなければ、成仏はできません。ご両親とお2人は、会わなければなりません。私はそのために咲也くんと颯太くんに近づきました。」
サクラの口から出る言葉は2人を混乱させた。こらえきれずに弥生が手を上げて質問する。
「あなたは一体何者?私たちはどうやったら父さんたちに会えるの?」
「私はこの世とあの世を繋ぐ橋だとでも思ってください。お会いする方法ですが‥‥死者とはどこででも会えるわけではありません。」
「そりゃそうだろう。生者の俺たちと、死者の親父とお袋が、一体どこで会うっていうんだよ?」
咲也の言葉に、サクラは口をつぐんだ。咲也が苛立ちながら立ち上がる。
「そもそも生者と死者が会うなんて、都合のいい話があるのか?言いたいことは分かったけど、実現できないなら全て無に帰すだけだ。」
「私は、それを実現させるためにここに来たの。叔父さんと叔母さんの協力を得る必要もあるから‥‥話をさせてくれないかな?」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

蝶の羽ばたき
蒼キるり
ライト文芸
美羽は中学で出会った冬真ともうじき結婚する。あの頃の自分は結婚なんて考えてもいなかったのに、と思いながら美羽はまだ膨らんでいないお腹の中にある奇跡を噛み締める。そして昔のことを思い出していく──
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。


スマホゲーム王
ルンルン太郎
ライト文芸
主人公葉山裕二はスマホゲームで1番になる為には販売員の給料では足りず、課金したくてウェブ小説を書き始めた。彼は果たして目的の課金生活をエンジョイできるのだろうか。無謀な夢は叶うのだろうか。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる