133 / 230
Case132.救えなかった君へ②
しおりを挟む
「一体どういうことなんだ⁉︎こんな所に乗り組んでくるるなんて・・・!」
「知らねえよ‼︎俺たちも標的になってるし、同じことだろ!」
海里たちは、乗り込んできたテロリストたちと戦闘を繰り広げていた。犯罪者とはいえ、警察官が人を撃つことは基本的に許されないので、海里たちは素手である。
「警視庁を占拠するつもりでしょうか?」
「この可能性もあるが・・・やり方が大胆すぎないか?第一、こいつらどうやって目立たずにここに来たんだ?」
「恐らく、外にいたマスコミだと思います。入れ替わっていた・・いや、変装していたのでしょう。」
「芸達者だね。」
捜査一課の刑事たちの助けもあり、5分ほどで戦闘は終わった。テロリストたちは全員気絶しており、刑事たちは怪我こそしていたが、死亡者は誰もいなかった。
「あの状況で無傷とはお前、タフだな。江本。」
「お2人も無傷じゃないですか。」
海里が苦笑すると、玲央のスマートフォンが鳴った。武虎からの電話である。
「父さん無事?今ここに・・・・」
『天宮君を守れ!奴らの狙いは彼女だ!』
「なっ・・・⁉︎」
『詳しい説明をしている暇はない‼︎彼女は今君たちの方に向かっている!探し出して守れ!』
「分かった。報告ありがとう。」
玲央は電話を切ると、2人の方を向き、言った。
「狙いは小夜だ。なぜか警視庁に来ているらしいから、俺は彼女を探す。2人はみんなの手当を。」
「終わったらすぐに行く。ここは任せろ。」
龍と玲央が頷き合うと、玲央は駆け出した。
※
「西園寺さん、さっきの音は・・・」
「爆発ですね。間違いない。」
仕事をしていたアサヒも、異変を感じ取っていた。
「九重警視長と東堂警視総監の様子を見て来ます。全員ここから動かないでください。」
「大丈夫なんですか?相手の正体は割れていませんよ。」
「何とかします。皆さんも命の危機だと思ったらすぐに逃げてください。」
そう言い残し、アサヒは部屋を飛び出した。襲ってきている人間が誰かは検討がついていたが、警視庁のどこまで侵入されているのかを知る必要があるのだ。
「龍!玲央!どこにいるの⁉︎」
(しくった・・・どこで仕事しているのか聞いとくべきだったわ。資料室かしら?いや、異変を感じて既に場所を移動している可能性も・・・・)
「1人とは運が良い。」
「早乙女佑月・・・!」
アサヒは内心舌打ちをした。浩史と同じほどの体格をしたこの男に敵うわけがないのだ。力も、何もかもアサヒはこの男に劣っていた。
最も、彼女が捜査一課にいたら少しは対等になったかもしれないが、鑑識課に移動した彼女は、明らかに6年前より体術の腕が落ちているのだ。
早乙女は不敵な笑みを浮かべ、言葉を続けた。
「暇つぶしくらいにはなってくれるんだろうな?」
「・・・ご想像に任せるわ。」
※
「東堂警部は・・・これからどうされるんですか?」
呻きながら傷を抑える部下に、龍は静かに告げた。
「兄貴を追う。1人でも殺させないためにな。」
「警部らしいですね。」
「ありがとよ。とにかく、お前らは絶対にここを動くな。怪我もあって戦えないだろうし、相手は全員武器持ちだ。」
部下は深く頷いた。龍は笑って立ち上がる。背後にいる海里を見て、続ける。
「ここから先は死闘だ。仮にもお前は一般人だし、ここに残っても・・・・」
「いいえ、行きます。何が起こっているのか確かめたいですから。」
「そう言うと思ったよ。行くぞ!」
※
「ゔっ・・!」
壁に叩きつけられたアサヒは、打ちつけた肩を押さえた。ゆっくりと近づいてくる早乙女を睨みつけ、荒い息を吐く。
「もうちょっと手加減してくれてもいいんじゃない?」
「やるとでも?」
「まさか。本気じゃないわよ。雫さんたちを殺したあんたに・・・そんな期待はしていないもの。」
アサヒは早乙女の足を払い、飛び起きた。やはり、大したダメージは与えられていない。
「無駄な抵抗をやめれば楽に殺してやるが?」
「お生憎様。まだ死ぬ気はないの。」
「・・・そうか。ならば仕方ない。」
早乙女は駆け出し、アサヒに蹴りを入れた。アサヒはそれを腕で塞いだが、凄まじい衝撃が腕に残った。
「それ以上はやめておけ。そんな細腕で勝つことなど不可能だ。」
「可能か不可能かなんてどうでもいいわ。私はただ、天宮小夜という人間を失いたくないだけ・・・命を差し出すことも、命を理不尽に奪われることも、させたくない・・・・それだけよ。」
「随分と肩入れするじゃないか。“自分の境遇”と重ねたか?」
アサヒはが笑った、その瞬間、早乙女の瞳から光が消えた。アサヒがそう感じた瞬間、彼は目にも止まらぬ速さで跳び、彼女の背後に立っていた。頭に重い感触があり、拳銃を突きつけられているのが分かった。アサヒは振り向こうとしたが、すぐに両手を押さえ込まれ、身動きが取れなくなってしまった。
「女でありながらよく戦った。せめて一発で殺してやる。」
引き金が引かれるか否かの刹那、アサヒは強い力で腕を引かれた。直後、弾かれるように早乙女が飛ばされ、受け身を取っているのが見えた。
「やっぱり来てやがったか。早乙女佑月。」
「龍・・!江本さんまで・・・。」
龍はアサヒの傷を見て眉を潜めた。すぐに視線を早乙女に移し、彼を睨みつける。
「懲りないやつだな。そんなに天宮の命が欲しいか?」
「ふ・・・命が欲しいのは貴様らも同じだ。最優先事項があの女であるだけの話。」
早乙女はゆっくりと立ち上がり、服についた埃を払った。海里の顔を見て不敵に笑ったかと思うと、その場から姿を消した。
「追うぞ。アサヒ、動けるか?」
「大丈夫よ。行きましょう。」
※
玲央は警視庁内を走り回り、ようやく小夜を見つけていた。
「小夜!」
「玲央・・・‼︎」
互いに駆け出した、その時だった。玲央の視界が、真っ赤に染まった。彼は一瞬自分の体を見て、小夜を見た。
彼女は撃たれていた。急所からはずれているが、右の鎖骨近くに痛々しい傷が垣間見えた。
「小夜‼︎」
再びセーフティーを解除する音が聞こえ、玲央は我に返った。小夜を胸の中に押し込み、銃を取り出す。姿勢を低くして床を転がり、彼女を撃った相手と銃を向け合った。
「・・・・えっ?」
玲央は信じられないという顔で相手を見ていた。自分たちの方に近づいてくる人影は、見慣れたものだったからだ。彼はしばしの沈黙の後、消えるような声で呟いた。
「九重・・警視、長・・・?」
「知らねえよ‼︎俺たちも標的になってるし、同じことだろ!」
海里たちは、乗り込んできたテロリストたちと戦闘を繰り広げていた。犯罪者とはいえ、警察官が人を撃つことは基本的に許されないので、海里たちは素手である。
「警視庁を占拠するつもりでしょうか?」
「この可能性もあるが・・・やり方が大胆すぎないか?第一、こいつらどうやって目立たずにここに来たんだ?」
「恐らく、外にいたマスコミだと思います。入れ替わっていた・・いや、変装していたのでしょう。」
「芸達者だね。」
捜査一課の刑事たちの助けもあり、5分ほどで戦闘は終わった。テロリストたちは全員気絶しており、刑事たちは怪我こそしていたが、死亡者は誰もいなかった。
「あの状況で無傷とはお前、タフだな。江本。」
「お2人も無傷じゃないですか。」
海里が苦笑すると、玲央のスマートフォンが鳴った。武虎からの電話である。
「父さん無事?今ここに・・・・」
『天宮君を守れ!奴らの狙いは彼女だ!』
「なっ・・・⁉︎」
『詳しい説明をしている暇はない‼︎彼女は今君たちの方に向かっている!探し出して守れ!』
「分かった。報告ありがとう。」
玲央は電話を切ると、2人の方を向き、言った。
「狙いは小夜だ。なぜか警視庁に来ているらしいから、俺は彼女を探す。2人はみんなの手当を。」
「終わったらすぐに行く。ここは任せろ。」
龍と玲央が頷き合うと、玲央は駆け出した。
※
「西園寺さん、さっきの音は・・・」
「爆発ですね。間違いない。」
仕事をしていたアサヒも、異変を感じ取っていた。
「九重警視長と東堂警視総監の様子を見て来ます。全員ここから動かないでください。」
「大丈夫なんですか?相手の正体は割れていませんよ。」
「何とかします。皆さんも命の危機だと思ったらすぐに逃げてください。」
そう言い残し、アサヒは部屋を飛び出した。襲ってきている人間が誰かは検討がついていたが、警視庁のどこまで侵入されているのかを知る必要があるのだ。
「龍!玲央!どこにいるの⁉︎」
(しくった・・・どこで仕事しているのか聞いとくべきだったわ。資料室かしら?いや、異変を感じて既に場所を移動している可能性も・・・・)
「1人とは運が良い。」
「早乙女佑月・・・!」
アサヒは内心舌打ちをした。浩史と同じほどの体格をしたこの男に敵うわけがないのだ。力も、何もかもアサヒはこの男に劣っていた。
最も、彼女が捜査一課にいたら少しは対等になったかもしれないが、鑑識課に移動した彼女は、明らかに6年前より体術の腕が落ちているのだ。
早乙女は不敵な笑みを浮かべ、言葉を続けた。
「暇つぶしくらいにはなってくれるんだろうな?」
「・・・ご想像に任せるわ。」
※
「東堂警部は・・・これからどうされるんですか?」
呻きながら傷を抑える部下に、龍は静かに告げた。
「兄貴を追う。1人でも殺させないためにな。」
「警部らしいですね。」
「ありがとよ。とにかく、お前らは絶対にここを動くな。怪我もあって戦えないだろうし、相手は全員武器持ちだ。」
部下は深く頷いた。龍は笑って立ち上がる。背後にいる海里を見て、続ける。
「ここから先は死闘だ。仮にもお前は一般人だし、ここに残っても・・・・」
「いいえ、行きます。何が起こっているのか確かめたいですから。」
「そう言うと思ったよ。行くぞ!」
※
「ゔっ・・!」
壁に叩きつけられたアサヒは、打ちつけた肩を押さえた。ゆっくりと近づいてくる早乙女を睨みつけ、荒い息を吐く。
「もうちょっと手加減してくれてもいいんじゃない?」
「やるとでも?」
「まさか。本気じゃないわよ。雫さんたちを殺したあんたに・・・そんな期待はしていないもの。」
アサヒは早乙女の足を払い、飛び起きた。やはり、大したダメージは与えられていない。
「無駄な抵抗をやめれば楽に殺してやるが?」
「お生憎様。まだ死ぬ気はないの。」
「・・・そうか。ならば仕方ない。」
早乙女は駆け出し、アサヒに蹴りを入れた。アサヒはそれを腕で塞いだが、凄まじい衝撃が腕に残った。
「それ以上はやめておけ。そんな細腕で勝つことなど不可能だ。」
「可能か不可能かなんてどうでもいいわ。私はただ、天宮小夜という人間を失いたくないだけ・・・命を差し出すことも、命を理不尽に奪われることも、させたくない・・・・それだけよ。」
「随分と肩入れするじゃないか。“自分の境遇”と重ねたか?」
アサヒはが笑った、その瞬間、早乙女の瞳から光が消えた。アサヒがそう感じた瞬間、彼は目にも止まらぬ速さで跳び、彼女の背後に立っていた。頭に重い感触があり、拳銃を突きつけられているのが分かった。アサヒは振り向こうとしたが、すぐに両手を押さえ込まれ、身動きが取れなくなってしまった。
「女でありながらよく戦った。せめて一発で殺してやる。」
引き金が引かれるか否かの刹那、アサヒは強い力で腕を引かれた。直後、弾かれるように早乙女が飛ばされ、受け身を取っているのが見えた。
「やっぱり来てやがったか。早乙女佑月。」
「龍・・!江本さんまで・・・。」
龍はアサヒの傷を見て眉を潜めた。すぐに視線を早乙女に移し、彼を睨みつける。
「懲りないやつだな。そんなに天宮の命が欲しいか?」
「ふ・・・命が欲しいのは貴様らも同じだ。最優先事項があの女であるだけの話。」
早乙女はゆっくりと立ち上がり、服についた埃を払った。海里の顔を見て不敵に笑ったかと思うと、その場から姿を消した。
「追うぞ。アサヒ、動けるか?」
「大丈夫よ。行きましょう。」
※
玲央は警視庁内を走り回り、ようやく小夜を見つけていた。
「小夜!」
「玲央・・・‼︎」
互いに駆け出した、その時だった。玲央の視界が、真っ赤に染まった。彼は一瞬自分の体を見て、小夜を見た。
彼女は撃たれていた。急所からはずれているが、右の鎖骨近くに痛々しい傷が垣間見えた。
「小夜‼︎」
再びセーフティーを解除する音が聞こえ、玲央は我に返った。小夜を胸の中に押し込み、銃を取り出す。姿勢を低くして床を転がり、彼女を撃った相手と銃を向け合った。
「・・・・えっ?」
玲央は信じられないという顔で相手を見ていた。自分たちの方に近づいてくる人影は、見慣れたものだったからだ。彼はしばしの沈黙の後、消えるような声で呟いた。
「九重・・警視、長・・・?」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
恋愛
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる