106 / 230
Case105.仮想世界の頭脳対決①
しおりを挟む
目が潰れるような光を浴びて、私たちは思わず目を瞑った。やがて光が失わるような感覚に陥った後、私たちはゆっくりと目を開けた。そこには、
「何ですか?これ・・・・」
巨大な空間が広がっていた。周囲にある景色はどこか偽物じみていて、気分が悪い。すると、私たちの目の前にある巨大なスクリーンが明るくなり、1人の男が映し出された。
「Ladies and Gentlemen!初めまして、被験者の皆さん。」
一気にその場が明るくなった。私たちの周りには、私たち以外の人間が数多くいたのだ。男は真っ白な、気味悪い仮面を付けながら笑った。仮面の口が笑っているからそう見えたのかもしれないが、詳しいことは分からない。
男は私たちの驚きを他所に、淡々と言葉を続けた。
「これから皆さんには、私が作り上げた仮想世界で冒険をしてもらいます。」
「冒険・・・?」
私が呟くと、男が頷いた。
「Yes。この先には、様々なトラップやクイズが存在します。皆さんにはそれらを突き進んで頂き、ゴールに到着したら現実世界に戻るスイッチを押して終了。どうです?簡単でしょう?」
野次が飛んだ。当たり前だ。急に仮想世界に連れて来られて、そんなことを言われても意味が分からない。
だが、男は冷静に、そしてどこか冷酷に告げた。
「トラップやクイズに失敗すれば、皆さんはゲームオーバーになります。早く戻りたいからといって、わざとゲームオーバーになるのはいけません。そうした場合、こちらで始末させていただきますから・・・・。」
男の言葉に、全員が黙った。私たちは男を睨みつける。男は不敵に笑って言った。
「さあ、Showの始まりです‼︎頑張って生き延びてください‼︎
ーカイリ『仮想世界の虐殺』よりー
※
その日、海里は新作を書き終え、家でぼんやりと過ごしていた。季節は夏の終わり頃になり、少し暑さがましになっていた。
「青空孤児院の事件からもう2週間とは・・・月日が経つのは早いですねえ。」
そんなことを呟いた時、パソコンが音を鳴らした。どうやらメールが来たらしい。海里はゆっくりと体を起こし、机に置いてあるパソコンを開いた。
「ん・・・?招待状?お茶会はまだ先のはずですが・・・・」
お茶会とは、江本家で定期的に行われる茶会のことだ。海里は首を傾げながらメールを開いたが、それはお茶会の招待状ではなかった。
「親愛なる江本海里様・・・あなたは私の“ゲーム”に参加する資格を得ました。明日午後12時、以下の住所までお越しください・・・・?」
意味が分からなかった。示されている住所はさほど遠くないが、素直に向け入れるべきではないのは確かだった。
「ウイルスでしょうか?いや、でも・・・・」
悩んだ末、海里は凪に電話をかけた。以前、アサヒに連れられて龍・玲央と店に行った時、営業日を知ったのだ。
『あら、江本さん。どうされたんですか?』
「少し東堂さんたちにご相談したいことがありまして。今、仕事中ですか?」
『今は仕事中です。でも、夜には店に来るって話ですから、来られます?』
「行きます。あと・・できればアサヒさんも呼んでください。彼女の専門かもしれないので。」
その日の夜、海里は凪と連絡を取り合って店に行き、龍たちに会った。
「ああ、そのメール。俺たち3人にも届いたよ。」
「えっ?」
「ほら。」
3人は同時にスマートフォンを見せた。そこには、名前だけが違う、文面は同じメールがあった。アサヒはグラスに継がれたビールを飲み干し、言う。
「何らかの形で私たちの連絡先がバレたことは確実。だから今日仕事そっちのけで調べたけど、エラーになって調べきれなかった。1つ分かったことは、メールの送り主の名前が“マジシャン”であることくらい。」
「マジシャン?」
「職業ではないでしょうね。こんなことするマジシャンなんて見たことないわ。私たちにも落ち度があったけど、立派な犯罪よ。」
アサヒはめんどくさいと言わんばかりに手を振った。龍が口を開く。
「意味は分からないにしても、ただの招待メールじゃないことは確かだ。俺たちは明日、調査も兼ねてこの場所に行くが・・・・江本、お前はどうする?」
「行きます。私も知りたい。」
「じゃあ明日の12時、指定の場所に集合だね。」
※
翌日、4人は指定された場所に来て、唖然とした。そこには、自分たち以外の人間が大勢いたのだ。同じメールで呼ばれたらしく、皆首を傾げていた。
「ねえ、あのビル?」
「らしいな。確かあのビルって・・・最近取り壊される予定じゃなかったか?」
「そんな所に抜け抜け侵入しろって言うの?警察官が法律破るなんてどうかしてるわ。」
すると、全員のスマートフォンが鳴った。またメールが届いたのだ。
画面をスクロールすると、“ビルは私の私有地です。許可しますからお入りください。”、とあった。
「冗談でしょうか?」
「どうだろうな。とりあえず入った方がいいかもしれない。」
だが、他の人々が中に入った瞬間、妙な音が聞こえた。煙が出ているような音だ。
「ガス?」
「分からない。行こう!」
しかし、これもトラップだった。4人が中に入った瞬間、大量の睡眠ガスが放出され、彼らは意識を失った。
※
どれくらい時間が経ったのだろうか。海里は、ゆっくりと目を開けた。体を起こし、周りを見る。そこには、龍たち3人と、まだ眠っている人々がいた。
「起きたか。」
「東堂さん・・・玲央さん・・アサヒさん。ここは?」
「分からない。さっきと違う場所なのは確かだ。加えて、俺たちのこの体・・・・」
「本物にそっくりだけど、本物じゃない。財布とかがないし、少し服も曖昧。何より周囲の景色・・・・完全に作り物よ。」
アサヒの言葉を聞いて、海里は周囲を見渡した。確かに、周囲は森があったり城があったり川があったり、滅茶苦茶だった。いわゆるパラレルワールドだろうか。
すると、海里たちの目の前が明るくなり、巨大なスクリーンが映し出された。スクリーンには、仮面を被った1人の男がいた。真っ白な仮面の口は不気味に笑い、細長い目がじっと海里たちを捉えていた。
「Ladies and Gentlemen!・・・・初めまして。私がマジシャンです。」
男はそう言い放った。全員が唖然とする中、男は続ける。
「今の皆さんの体は、私が作り上げたアバターです。再現度が低いところもありますが、問題ありません。ここで必要なのは、皆さんの知恵と勇気なのですから!」
芝居がかった口調で続ける男に、大勢が文句を言った。家に返せ、説明しろ、なぜ自分たちなのか・・・・と。男は、嫌になる程冷静だった。
「皆さんがなぜ選ばれたのか。答えは簡単。適当です。少なくとも、この“5人”以外は。」
男がそう言った時、海里たちにライトが当たった。
「おや?“1人足りませんね”。まあ、仕方ありません。皆さんには、これから私が作り上げた仮想世界で冒険をしてもらいます。様々なトラップがありますから、それらをくぐり抜けて、現実世界に戻るスイッチまで辿り着いてください。」
「待ってください。そんな簡単な説明・・・!」
「ちなみに、トラップは全て命を奪うほどの威力です。ゲームオーバーにならないよう、頑張って下さい。」
そう言うと男は大袈裟に両手を広げ、こう叫んだ。
「さあ、Showの始まりです!」
「何ですか?これ・・・・」
巨大な空間が広がっていた。周囲にある景色はどこか偽物じみていて、気分が悪い。すると、私たちの目の前にある巨大なスクリーンが明るくなり、1人の男が映し出された。
「Ladies and Gentlemen!初めまして、被験者の皆さん。」
一気にその場が明るくなった。私たちの周りには、私たち以外の人間が数多くいたのだ。男は真っ白な、気味悪い仮面を付けながら笑った。仮面の口が笑っているからそう見えたのかもしれないが、詳しいことは分からない。
男は私たちの驚きを他所に、淡々と言葉を続けた。
「これから皆さんには、私が作り上げた仮想世界で冒険をしてもらいます。」
「冒険・・・?」
私が呟くと、男が頷いた。
「Yes。この先には、様々なトラップやクイズが存在します。皆さんにはそれらを突き進んで頂き、ゴールに到着したら現実世界に戻るスイッチを押して終了。どうです?簡単でしょう?」
野次が飛んだ。当たり前だ。急に仮想世界に連れて来られて、そんなことを言われても意味が分からない。
だが、男は冷静に、そしてどこか冷酷に告げた。
「トラップやクイズに失敗すれば、皆さんはゲームオーバーになります。早く戻りたいからといって、わざとゲームオーバーになるのはいけません。そうした場合、こちらで始末させていただきますから・・・・。」
男の言葉に、全員が黙った。私たちは男を睨みつける。男は不敵に笑って言った。
「さあ、Showの始まりです‼︎頑張って生き延びてください‼︎
ーカイリ『仮想世界の虐殺』よりー
※
その日、海里は新作を書き終え、家でぼんやりと過ごしていた。季節は夏の終わり頃になり、少し暑さがましになっていた。
「青空孤児院の事件からもう2週間とは・・・月日が経つのは早いですねえ。」
そんなことを呟いた時、パソコンが音を鳴らした。どうやらメールが来たらしい。海里はゆっくりと体を起こし、机に置いてあるパソコンを開いた。
「ん・・・?招待状?お茶会はまだ先のはずですが・・・・」
お茶会とは、江本家で定期的に行われる茶会のことだ。海里は首を傾げながらメールを開いたが、それはお茶会の招待状ではなかった。
「親愛なる江本海里様・・・あなたは私の“ゲーム”に参加する資格を得ました。明日午後12時、以下の住所までお越しください・・・・?」
意味が分からなかった。示されている住所はさほど遠くないが、素直に向け入れるべきではないのは確かだった。
「ウイルスでしょうか?いや、でも・・・・」
悩んだ末、海里は凪に電話をかけた。以前、アサヒに連れられて龍・玲央と店に行った時、営業日を知ったのだ。
『あら、江本さん。どうされたんですか?』
「少し東堂さんたちにご相談したいことがありまして。今、仕事中ですか?」
『今は仕事中です。でも、夜には店に来るって話ですから、来られます?』
「行きます。あと・・できればアサヒさんも呼んでください。彼女の専門かもしれないので。」
その日の夜、海里は凪と連絡を取り合って店に行き、龍たちに会った。
「ああ、そのメール。俺たち3人にも届いたよ。」
「えっ?」
「ほら。」
3人は同時にスマートフォンを見せた。そこには、名前だけが違う、文面は同じメールがあった。アサヒはグラスに継がれたビールを飲み干し、言う。
「何らかの形で私たちの連絡先がバレたことは確実。だから今日仕事そっちのけで調べたけど、エラーになって調べきれなかった。1つ分かったことは、メールの送り主の名前が“マジシャン”であることくらい。」
「マジシャン?」
「職業ではないでしょうね。こんなことするマジシャンなんて見たことないわ。私たちにも落ち度があったけど、立派な犯罪よ。」
アサヒはめんどくさいと言わんばかりに手を振った。龍が口を開く。
「意味は分からないにしても、ただの招待メールじゃないことは確かだ。俺たちは明日、調査も兼ねてこの場所に行くが・・・・江本、お前はどうする?」
「行きます。私も知りたい。」
「じゃあ明日の12時、指定の場所に集合だね。」
※
翌日、4人は指定された場所に来て、唖然とした。そこには、自分たち以外の人間が大勢いたのだ。同じメールで呼ばれたらしく、皆首を傾げていた。
「ねえ、あのビル?」
「らしいな。確かあのビルって・・・最近取り壊される予定じゃなかったか?」
「そんな所に抜け抜け侵入しろって言うの?警察官が法律破るなんてどうかしてるわ。」
すると、全員のスマートフォンが鳴った。またメールが届いたのだ。
画面をスクロールすると、“ビルは私の私有地です。許可しますからお入りください。”、とあった。
「冗談でしょうか?」
「どうだろうな。とりあえず入った方がいいかもしれない。」
だが、他の人々が中に入った瞬間、妙な音が聞こえた。煙が出ているような音だ。
「ガス?」
「分からない。行こう!」
しかし、これもトラップだった。4人が中に入った瞬間、大量の睡眠ガスが放出され、彼らは意識を失った。
※
どれくらい時間が経ったのだろうか。海里は、ゆっくりと目を開けた。体を起こし、周りを見る。そこには、龍たち3人と、まだ眠っている人々がいた。
「起きたか。」
「東堂さん・・・玲央さん・・アサヒさん。ここは?」
「分からない。さっきと違う場所なのは確かだ。加えて、俺たちのこの体・・・・」
「本物にそっくりだけど、本物じゃない。財布とかがないし、少し服も曖昧。何より周囲の景色・・・・完全に作り物よ。」
アサヒの言葉を聞いて、海里は周囲を見渡した。確かに、周囲は森があったり城があったり川があったり、滅茶苦茶だった。いわゆるパラレルワールドだろうか。
すると、海里たちの目の前が明るくなり、巨大なスクリーンが映し出された。スクリーンには、仮面を被った1人の男がいた。真っ白な仮面の口は不気味に笑い、細長い目がじっと海里たちを捉えていた。
「Ladies and Gentlemen!・・・・初めまして。私がマジシャンです。」
男はそう言い放った。全員が唖然とする中、男は続ける。
「今の皆さんの体は、私が作り上げたアバターです。再現度が低いところもありますが、問題ありません。ここで必要なのは、皆さんの知恵と勇気なのですから!」
芝居がかった口調で続ける男に、大勢が文句を言った。家に返せ、説明しろ、なぜ自分たちなのか・・・・と。男は、嫌になる程冷静だった。
「皆さんがなぜ選ばれたのか。答えは簡単。適当です。少なくとも、この“5人”以外は。」
男がそう言った時、海里たちにライトが当たった。
「おや?“1人足りませんね”。まあ、仕方ありません。皆さんには、これから私が作り上げた仮想世界で冒険をしてもらいます。様々なトラップがありますから、それらをくぐり抜けて、現実世界に戻るスイッチまで辿り着いてください。」
「待ってください。そんな簡単な説明・・・!」
「ちなみに、トラップは全て命を奪うほどの威力です。ゲームオーバーにならないよう、頑張って下さい。」
そう言うと男は大袈裟に両手を広げ、こう叫んだ。
「さあ、Showの始まりです!」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
白い男1人、人間4人、ギタリスト5人
正君
ミステリー
20人くらいの男と女と人間が出てきます
女性向けってのに設定してるけど偏見無く読んでくれたら嬉しく思う。
小説家になろう、カクヨム、ギャレリアでも投稿しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
どぶさらいのロジック
ちみあくた
ミステリー
13年前の大地震で放射能に汚染されてしまった或る原子力発電所の第三建屋。
生物には致命的なその場所へ、犬型の多機能ロボットが迫っていく。
公的な大規模調査が行われる数日前、何故か、若きロボット工学の天才・三矢公平が招かれ、深夜の先行調査が行われたのだ。
現場に不慣れな三矢の為、原発古参の従業員・常田充が付き添う事となる。
世代も性格も大きく異なり、いがみ合いながら続く作業の果て、常田は公平が胸に秘める闇とロボットに託された計画を垣間見るのだが……
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+、にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる