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Case28.怪しい男
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「暑いですね・・・・もう完全に夏か・・・・」
天宮家の1件から、約2週間。海里は、暑さから外に出るのを拒み、家に篭りがちになっていた。
(探偵業が落ち着くのは助かりますが、こうも暑いと小説に対するやる気も起きませんね・・・・。
まあ、大体終わっていますし明日以降に残りを仕上げて、今日は久々に読書でもーーーーあ。」
海里は、カレンダーを見て、妹の病院に行く日だと気がついた。急いでソファーから体を起こし、服を着替え、家を出る。駆け足で階段を降り、近所の花屋へ足を運んだ。
「こんにちは。」
「あら、江本さんじゃない。今日も、妹ちゃんのお見舞い?」
「はい。いつもの花をお願いします。」
「はい、はい。ちょっと待ってね。」
店員が花をまとめるのを待っている時、海里は店の中を歩き回った。もう何度も見た光景だが、花を見ると落ち着くので、一向に飽きなかった。今日は誰もいないが、稀に出会う他のお客との世間話も、彼の楽しみの1つである。
そんな穏やかさを抱えながら、ふと外を見ると、男2人の言い争いが目に留まった。海里は目を凝らして様子を伺う。
「放してくれ! これは・・・・大切なお金なんだ‼︎」
「うるさい、寄越せ!」
ひったくりだった。犯人の男は縋り付く男を殴り飛ばし、走り去った。海里は店員にすぐに戻ると言い残し、店を飛び出した。殴られた男に駆け寄り、尋ねる。
「大丈夫ですか? 何を取られました?」
「お、お金だ! 取られた鞄には、息子の誕生日プレゼントを買うためのお金が入ってるんだ! ようやく全額揃ったから、買いに行くところで・・・!」
男の手は土汚れがついていた。作業着なので、恐らく土木工事をしているのだろう。海里は頷き、口を開く。
「分かりました。取り返してきます。ここで待っていてください。傷は大事に至らないでしょうが、一先ず、これで。」
海里はそう言って、ハンカチを取り出した。水筒を開けて濡らし、殴られた男に差し出す。男は礼を言って受け取り、頬にハンカチを当てた。
直後、海里は颯爽と立ち上がって逃げた男の方へ向かった。男は、海里には気がついていないらしい。好都合だと思い、彼は走るスピードを上げた。
「止まってください! 乱暴なことはしたくありませんよ!」
男は止まらなかった。海里は苦い顔をし、脇道を通って先回りをし、男の前に立ちはだかった。男は急に現れた海里を見て止まる。
「退け!」
「鞄を返してくださるなら、お退きしますよ。さあ、それをこちらへ。」
海里は右手を差し出したが、男は聞かなかった。
「誰が・・・・渡すか‼︎」
男はポケットからナイフを取り出し、海里に突進した。海里は軽く溜息をつき、体を捻り、右足で勢いよくナイフを蹴り上げた。
「なっ・・・⁉︎」
「大人しくしてくださいね。」
海里は立ち尽くす男の腕を掴み、そのまま投げ飛ばした。鞄が転がり、心配になって駆けつけて来た、持ち主の男の方へ行く。中を確認して頷いたので、まだ何も盗られてはいないようだった。
男は安堵の息を吐き、海里に頭を下げる。
「ありがとうございます。怪我はされていませんか?」
「ご心配なく。交番に連れて行くので、少し手伝って頂けませんか?」
「ええ、もちろんです。」
持ち主の男が頷いた、その時だった。
「大したものだね。江本海里君。」
突然、頭上から響いた聞き覚えのない声に、海里は目を丸くした。男を締め上げたまま顔を上げると、真夏の太陽に照らされて、1人の男が立っていた。
「初めまして。」
緩く括られ、左肩に垂らされた黒髪、髪と同じ色をした切長の瞳、整った面立ち、長身。炎天下の中、スーツを着こなした姿が目立っていた。男は優しげな、しかしどこか怪しげな笑みを浮かべたまま、海里と共に男を起こす。
「おじさん、交番行こっか。」
交番に男を届け、事情を説明した後、海里は自分の前に現れた男を見た。怪しげな笑みを浮かべた男もまた、海里を見ている。
「俺は玲央。ずっと君に会いたかったんだ、江本君。」
「・・・・私をご存知なのですか?」
「君は自分で思っているより有名人だよ。小説家としても、探偵としてもね。
人伝に話を聞いて、君の大まかな住所を特定した。失礼だとは思ったけど、妹さんのこともね。だから花屋の近くを歩いていたんだ。お見舞いは不定期みたいだったから、どうなるかと思ったけど、会えて良かった。」
(どう考えても只者ではありませんね。人伝に聞いたからと言って、住所を特定するなど難しいはず。私は素顔も個人情報も公開していませんし、妹のことだって東堂さんにしか話していない。
この人・・・・何か目的があるのでは?)
「そんなに怖い顔しないで。大まかな住所を特定して、もしかしたら会えるかも・・って、ぶらついていただけさ。ああ、妹さんの話をした後だと、説得力がないかな? 信じてくれると嬉しいんだけど。
それにしても、推理だけじゃなく体術もできるんだね。小説探偵って名前しか聞いていなかったから、驚いたよ。」
男ーーーー玲央は、話題を二転三転させながら話した。そのため、海里は中々自分の言葉を挟めず、玲央は計算しながら会話していると理解した。
しかし、驚いた、と口にすると同時に言葉が止んだので、海里は答える。
「大したことではありませんよ。幼い頃に齧った程度なので、警察の方には及びません。何より暴力は好きではないので、仕方なくです。」
「警察と比べると、そう思っちゃうのかな? 齧っただけにしては、見事なものだったよ?」
「どうも。ところであなたーーーー」
「ん?」
「警察ですか?」
玲央の顔色が変わった。どうやら当たりらしい。少し驚いた玲央だったが、彼はすぐに表情を戻し、
「何で分かったの? 警察手帳は見せてないけど。」
海里は少し長ったらしい説明になりますが、と言って続けた。
「先ほど交番に行った時、親しげに警察官と話されていましたよね。盗み聞きするつもりはなかったのですが、“ようやくお戻りになるんですね”という相手の方の発言が聞こえたんです。
つまり、あなたは元々警察署など大きい所にいて、一定以上の期間、何かしらの理由があって交番にいた。相手の方は見たところあなたより年上なのに、敬語だったことを踏まえると、ある程度の階級にいらっしゃったのではありませんか? それも、顔を見て誰か分かるほど。
いずれにせよ、警察官であることは間違いないでしょう。体術の話を振られた時、私が警察官を比較対象にしたら簡単に受け入れられまし、普通の方は住所や個人情報の特定の話をされません。私に“見抜かせるために”、お話しされたのかもしれませんけど。」
海里は笑みを浮かべた。玲央は満足そうに笑う。
「なるほど。確かに、探偵としての腕は申し分ないらしい。出会って数分間の言動で、ここまで分かるなんて驚きだ。君に口を開かせないよう意地悪して話していたのに、逆に嵌められるなんてさ。」
玲央は軽く首を振りながら苦笑した。警察手帳を見せ、海里も頷く。
同時に、海里は不思議に思ったことを口にした。
「わざわざ私に会いに来たということは、警視庁の方ですか? そうだとしても、刑事部以外でしょうか。
私は2年半ほど前に知り合った捜査一課の方と協力しているので、その関係で刑事部の方の顔は、多少ですが存じ上げています。」
「刑事部で、捜査一課だよ。ただ、昔事件でやらかしちゃって。異動処分を受けていたんだ。今日から復帰で、君に会うついでにパトロールしていたってとこかな。」
「なる・・ほど・・・・?」
納得しきれていない海里を気にする様子なく、玲央は腕時計を見た。
「あ、そろそろ行かないと。じゃあ“またね”、江本君。」
「はい。ご協力ありがとうございました。」
玲央の背中を見送った海里だが、妹のお見舞いに向かう途中だったと思い出し、急いで来た道を戻った。
※
病院へ行くと、看護師からいつもより遅いですね、と言われた。海里は苦笑いで誤魔化し、妹の病室へ入る。妹は呼吸器をつけたままベッドで眠っており、シャンプーをしてくれたのか、髪から良い香りがした。
海里は窓際に置かれている花瓶に手を伸ばし、枯れかけの花と買って来た花を入れ替えた。その後は眠っている妹に話しかけ、自分の近況を伝えた。何度か妹の方を見たが、動きはない。一抹の不安を抱えつつも、海里は笑って立ち上がった。
「また来ますね。今度は・・・・昔のように話をしましょう。」
※
その夜、家に帰った海里の元に、龍から電話がかかって来た。事件の話以外で彼が電話をかけてくることなどなかったので、海里は驚いて電話に出る。
『夜分に悪いな。お前、今日玲央と名乗る男に会ったのか?』
「ええ、偶々。あ、やはりお知り合いですか? 捜査一課にいらっしゃったと聞きましたよ。」
龍はしばらく黙っていた。そして、小さな声でこう言った。
『あんまりその男に気を許すなよ。警察官でも、そいつは人殺しだ。深く関わって、何かあってからじゃ遅いからな。』
「え?」
『話は以上だ。切るぞ。』
電話を切ろうとする龍に、海里は必死に叫んだ。
「待ってください! なぜ・・そんな決めつけをされるのですか? 人殺しは悪かもしれませんが、今日私が見た玲央さんは、普通の男性でした。何より、警察官でしょう⁉︎」
『決めつけているんじゃない。俺は真実を言っている。』
「東堂さん!」
再び沈黙が流れた。電話の向こうで、深い溜息が聞こえる。やがて、龍は短く告げた。
『その男の本名は、東堂玲央。』
「・・・・東堂・・?」
海里は息を呑んだ。龍は冷静な声で続ける。
『俺の実の兄だ。』
龍の兄・玲央、登場。物語は大きく動き出す。
天宮家の1件から、約2週間。海里は、暑さから外に出るのを拒み、家に篭りがちになっていた。
(探偵業が落ち着くのは助かりますが、こうも暑いと小説に対するやる気も起きませんね・・・・。
まあ、大体終わっていますし明日以降に残りを仕上げて、今日は久々に読書でもーーーーあ。」
海里は、カレンダーを見て、妹の病院に行く日だと気がついた。急いでソファーから体を起こし、服を着替え、家を出る。駆け足で階段を降り、近所の花屋へ足を運んだ。
「こんにちは。」
「あら、江本さんじゃない。今日も、妹ちゃんのお見舞い?」
「はい。いつもの花をお願いします。」
「はい、はい。ちょっと待ってね。」
店員が花をまとめるのを待っている時、海里は店の中を歩き回った。もう何度も見た光景だが、花を見ると落ち着くので、一向に飽きなかった。今日は誰もいないが、稀に出会う他のお客との世間話も、彼の楽しみの1つである。
そんな穏やかさを抱えながら、ふと外を見ると、男2人の言い争いが目に留まった。海里は目を凝らして様子を伺う。
「放してくれ! これは・・・・大切なお金なんだ‼︎」
「うるさい、寄越せ!」
ひったくりだった。犯人の男は縋り付く男を殴り飛ばし、走り去った。海里は店員にすぐに戻ると言い残し、店を飛び出した。殴られた男に駆け寄り、尋ねる。
「大丈夫ですか? 何を取られました?」
「お、お金だ! 取られた鞄には、息子の誕生日プレゼントを買うためのお金が入ってるんだ! ようやく全額揃ったから、買いに行くところで・・・!」
男の手は土汚れがついていた。作業着なので、恐らく土木工事をしているのだろう。海里は頷き、口を開く。
「分かりました。取り返してきます。ここで待っていてください。傷は大事に至らないでしょうが、一先ず、これで。」
海里はそう言って、ハンカチを取り出した。水筒を開けて濡らし、殴られた男に差し出す。男は礼を言って受け取り、頬にハンカチを当てた。
直後、海里は颯爽と立ち上がって逃げた男の方へ向かった。男は、海里には気がついていないらしい。好都合だと思い、彼は走るスピードを上げた。
「止まってください! 乱暴なことはしたくありませんよ!」
男は止まらなかった。海里は苦い顔をし、脇道を通って先回りをし、男の前に立ちはだかった。男は急に現れた海里を見て止まる。
「退け!」
「鞄を返してくださるなら、お退きしますよ。さあ、それをこちらへ。」
海里は右手を差し出したが、男は聞かなかった。
「誰が・・・・渡すか‼︎」
男はポケットからナイフを取り出し、海里に突進した。海里は軽く溜息をつき、体を捻り、右足で勢いよくナイフを蹴り上げた。
「なっ・・・⁉︎」
「大人しくしてくださいね。」
海里は立ち尽くす男の腕を掴み、そのまま投げ飛ばした。鞄が転がり、心配になって駆けつけて来た、持ち主の男の方へ行く。中を確認して頷いたので、まだ何も盗られてはいないようだった。
男は安堵の息を吐き、海里に頭を下げる。
「ありがとうございます。怪我はされていませんか?」
「ご心配なく。交番に連れて行くので、少し手伝って頂けませんか?」
「ええ、もちろんです。」
持ち主の男が頷いた、その時だった。
「大したものだね。江本海里君。」
突然、頭上から響いた聞き覚えのない声に、海里は目を丸くした。男を締め上げたまま顔を上げると、真夏の太陽に照らされて、1人の男が立っていた。
「初めまして。」
緩く括られ、左肩に垂らされた黒髪、髪と同じ色をした切長の瞳、整った面立ち、長身。炎天下の中、スーツを着こなした姿が目立っていた。男は優しげな、しかしどこか怪しげな笑みを浮かべたまま、海里と共に男を起こす。
「おじさん、交番行こっか。」
交番に男を届け、事情を説明した後、海里は自分の前に現れた男を見た。怪しげな笑みを浮かべた男もまた、海里を見ている。
「俺は玲央。ずっと君に会いたかったんだ、江本君。」
「・・・・私をご存知なのですか?」
「君は自分で思っているより有名人だよ。小説家としても、探偵としてもね。
人伝に話を聞いて、君の大まかな住所を特定した。失礼だとは思ったけど、妹さんのこともね。だから花屋の近くを歩いていたんだ。お見舞いは不定期みたいだったから、どうなるかと思ったけど、会えて良かった。」
(どう考えても只者ではありませんね。人伝に聞いたからと言って、住所を特定するなど難しいはず。私は素顔も個人情報も公開していませんし、妹のことだって東堂さんにしか話していない。
この人・・・・何か目的があるのでは?)
「そんなに怖い顔しないで。大まかな住所を特定して、もしかしたら会えるかも・・って、ぶらついていただけさ。ああ、妹さんの話をした後だと、説得力がないかな? 信じてくれると嬉しいんだけど。
それにしても、推理だけじゃなく体術もできるんだね。小説探偵って名前しか聞いていなかったから、驚いたよ。」
男ーーーー玲央は、話題を二転三転させながら話した。そのため、海里は中々自分の言葉を挟めず、玲央は計算しながら会話していると理解した。
しかし、驚いた、と口にすると同時に言葉が止んだので、海里は答える。
「大したことではありませんよ。幼い頃に齧った程度なので、警察の方には及びません。何より暴力は好きではないので、仕方なくです。」
「警察と比べると、そう思っちゃうのかな? 齧っただけにしては、見事なものだったよ?」
「どうも。ところであなたーーーー」
「ん?」
「警察ですか?」
玲央の顔色が変わった。どうやら当たりらしい。少し驚いた玲央だったが、彼はすぐに表情を戻し、
「何で分かったの? 警察手帳は見せてないけど。」
海里は少し長ったらしい説明になりますが、と言って続けた。
「先ほど交番に行った時、親しげに警察官と話されていましたよね。盗み聞きするつもりはなかったのですが、“ようやくお戻りになるんですね”という相手の方の発言が聞こえたんです。
つまり、あなたは元々警察署など大きい所にいて、一定以上の期間、何かしらの理由があって交番にいた。相手の方は見たところあなたより年上なのに、敬語だったことを踏まえると、ある程度の階級にいらっしゃったのではありませんか? それも、顔を見て誰か分かるほど。
いずれにせよ、警察官であることは間違いないでしょう。体術の話を振られた時、私が警察官を比較対象にしたら簡単に受け入れられまし、普通の方は住所や個人情報の特定の話をされません。私に“見抜かせるために”、お話しされたのかもしれませんけど。」
海里は笑みを浮かべた。玲央は満足そうに笑う。
「なるほど。確かに、探偵としての腕は申し分ないらしい。出会って数分間の言動で、ここまで分かるなんて驚きだ。君に口を開かせないよう意地悪して話していたのに、逆に嵌められるなんてさ。」
玲央は軽く首を振りながら苦笑した。警察手帳を見せ、海里も頷く。
同時に、海里は不思議に思ったことを口にした。
「わざわざ私に会いに来たということは、警視庁の方ですか? そうだとしても、刑事部以外でしょうか。
私は2年半ほど前に知り合った捜査一課の方と協力しているので、その関係で刑事部の方の顔は、多少ですが存じ上げています。」
「刑事部で、捜査一課だよ。ただ、昔事件でやらかしちゃって。異動処分を受けていたんだ。今日から復帰で、君に会うついでにパトロールしていたってとこかな。」
「なる・・ほど・・・・?」
納得しきれていない海里を気にする様子なく、玲央は腕時計を見た。
「あ、そろそろ行かないと。じゃあ“またね”、江本君。」
「はい。ご協力ありがとうございました。」
玲央の背中を見送った海里だが、妹のお見舞いに向かう途中だったと思い出し、急いで来た道を戻った。
※
病院へ行くと、看護師からいつもより遅いですね、と言われた。海里は苦笑いで誤魔化し、妹の病室へ入る。妹は呼吸器をつけたままベッドで眠っており、シャンプーをしてくれたのか、髪から良い香りがした。
海里は窓際に置かれている花瓶に手を伸ばし、枯れかけの花と買って来た花を入れ替えた。その後は眠っている妹に話しかけ、自分の近況を伝えた。何度か妹の方を見たが、動きはない。一抹の不安を抱えつつも、海里は笑って立ち上がった。
「また来ますね。今度は・・・・昔のように話をしましょう。」
※
その夜、家に帰った海里の元に、龍から電話がかかって来た。事件の話以外で彼が電話をかけてくることなどなかったので、海里は驚いて電話に出る。
『夜分に悪いな。お前、今日玲央と名乗る男に会ったのか?』
「ええ、偶々。あ、やはりお知り合いですか? 捜査一課にいらっしゃったと聞きましたよ。」
龍はしばらく黙っていた。そして、小さな声でこう言った。
『あんまりその男に気を許すなよ。警察官でも、そいつは人殺しだ。深く関わって、何かあってからじゃ遅いからな。』
「え?」
『話は以上だ。切るぞ。』
電話を切ろうとする龍に、海里は必死に叫んだ。
「待ってください! なぜ・・そんな決めつけをされるのですか? 人殺しは悪かもしれませんが、今日私が見た玲央さんは、普通の男性でした。何より、警察官でしょう⁉︎」
『決めつけているんじゃない。俺は真実を言っている。』
「東堂さん!」
再び沈黙が流れた。電話の向こうで、深い溜息が聞こえる。やがて、龍は短く告げた。
『その男の本名は、東堂玲央。』
「・・・・東堂・・?」
海里は息を呑んだ。龍は冷静な声で続ける。
『俺の実の兄だ。』
龍の兄・玲央、登場。物語は大きく動き出す。
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