9 / 20
9
しおりを挟む
冷静な頭であれこれ考えていると背中を這っていた手が首筋へと移動した。項を冷たい指の腹で上下に撫でられて全身に鳥肌がたった。何かしらの意思が感じられたからだ。
セックスの最中に項を噛まれてしまえば番になる。そう言えば自分は快感に溺れてしまって忘れていたがΩの発情期に中てられたαも理性が飛んでしまい、セックスの最中に自分の意思に反してΩの項を噛んでしまうことが多々あると習った。
深町との行為の前半は今井もおぼろげであるが、深町はずっと冷静だったように思う。自分ばかりが乱されていた。
αを乱すことも出来ないのはやはり自分体のせいか。分かっていたことなのに、噛まれたかったわけじゃないのに情けなさがこみ上げる。涙がでては深町の体を濡らしてしまいバレてしまう。こんな自分を見られたくない。
「あ、ありがと深町。本当に助かった」
深町の体に手を付き、体を起こす。精一杯の明るい声を出したが語尾が小さくなった。
ガクガクと震える膝を立て、未だ自分の中にいる深町を抜いた。萎えてもそれなりの質量を誇るものだから思わず眉を顰めてしまう。
何も言わずに一連の動作を眺めていた深町だったが、今井がベッドから降りようとしたところで離れてゆく腕を取った。思い切り引っ張り、またベッドへと今井の体を沈ませる。先ほどと違うのは、今井はうつ伏せの状態で深町に圧し掛かられているということだ。シーツに顔を埋めているせいで深町の顔が見えない。自分を見られなくて好都合だが、深町がどんな表情をしているのか分からなくて不安になった。
「ちょ、痛いし。深町、もういいよ。ごめん、本当に助かったから」
「なんかさ。みのるって何も分かってないよね、俺のこと」
「え? 深町のことって、……なに、なんのこと」
「何も感じないわけ」
「何も感じないって……」
あれほど感じたのに何が言いたいのだろう。今井は深町の言わんとしていることが分からない。
背中から舌打ちが聞こえ身構えてしまう。普段深町から舌打ちなど聞いたこともないしイラだった様子も感じたことがない。優しくて、時々冗談を言っては笑わせてくれる笑顔が眩しい深町しか知らない。
なぜ怒らせてしまったのか、何が悪かったのかを考えてしまった。それが余計な思考とも分からない。
今井から退いた深町は閉じられた両足を開かせ、体を割りいれる。
筋肉のついた決して柔らかじゃない尻に脈打つものを感じた。まさかまだするのかと驚きで肘を突いて振り返ろうとするがその前に頭を押さえつけられシーツへと戻された。
乱暴な仕草も初めてのことで頭がフリーズしてしまう。
「あのさ、俺はαなんだよね。分かってる?」
分かっているも何も、分かっているから助けてくれとお願いしたのだ。
グズグズになっている窄まりを先端で上下に擦られる。落ち着いたはずの熱は今すぐにでもよみがえりそうだった。
「俺もさ昨日と今日、抑制剤を飲んでいないんだよね。はい、四つんばいになって」
「えっ」
「早く」
尻を持ち上げられ、今井は仕方なく手をついて体を起こす。もう力の入らない腕は震えていまにも崩れそうだ。それに後ろには深町がいる。あられもない姿を晒し、セックスをしたにも関わらず恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
たらりと腿を伝う粘度の高い液体を指で拭われ、熱が集まり始めていた中心は硬さを取り戻す。
「せっかく入れたのにでてきたな」
「はぁ……っ」
「まだまだあげるからしかっかり飲んでね」
「あうっ!」
「……はぁ。絡み付く……」
「んぅ、んっ、も、もうムリッ」
ゆっくりと味わうようねじ込まれた。
足腰も立たないのに、頭もぐちゃぐちゃなのに今井の陰茎はしっかりと主張をしていた。屹立したモノが揺れるたび先走りがシーツに染みを作った。
無理だと思っていたのに。それなのに深町が体に入ってくると次から次へと快感が這い上がってくる。底なしのようだった。
快感に支配された今井は体を支えられず上半身が崩れ落ちた。尻だけを高くした状態で深町に貫かれる。
卑猥な音を鳴らす孔からは泡立った精液が溢れていた。
快感だけを追い求めているとふと律動が緩いものになった。無意識に腰を揺らして淫らに誘うが、激しいものは襲ってこなかった。
もどかしい気持ちでいるとすらりと伸びた指先が背中をなで上げた。襟足の長い今井の、露になった項にまた触れられて全身が総毛立つ。
「っ……!」
「ココ弱いの?」
ギュッとシーツを掴み、口が開かないよう下唇を噛みしめ耐えた。
うっかり「噛んで」と言ってしまいそうな自分。驚きは唖然とするものでしかなかった。何を考えてそんなことを深町に言えるだろうか。こうやって抱いてもらえるだけで十分ではないか。本能なのかなんなのか。浅ましいにもほどがある。
そんな今井を知ってか知らずか、深町は項を撫でるのを止めない。腰のグラインドに合わせて上下左右と好きに項を弄る。
もう気が遠くなりそうだった。
朦朧となる意識の中、絶対言わないと、それだけを覚悟し深町に溺れていった。
自分の体を触る感触で目が覚める。一度目を閉じ、またゆっくりと瞼を上げた。見慣れた部屋。薄明かりがカーテンの隙間から零れているからそろそろ夜明けなのだろう。あれから時間がどれくらいだったのかも分からない。
しかし何度も深町を受け入れたのでずいぶんと頭はスッキリしていた。
が、体はどろどろに疲れている。指を動かすのも難儀だった。すべてが初めてのこととあってかなり酷使したはずだから仕方ないのかもしれない。
ぴったりと自分の背中に張り付くように深町も横になっていた。
そして後孔に感じる違和感と深町とは違いそれほど筋肉のない薄い腹を撫でる手に意識がいく。
今井の体の奥にはまだ深町がいた。形は萎えているようだがもうちぎれちゃうんじゃないだろうかと少し心配になる。
そして腹部を撫でる手。行為のときは冷たかった深町の手は暖かく、慈しむような手つきにまた泣きたくなった。どうしてこんなことをするのだろう。
そんなに孕んで欲しいのか。孕ませてどうするつもりか、番になる気もないだろうに。孕ませるだけ孕ませて捨てる気だろうか。セックスをするまで深町は本当にいい友人だったと思う。思いやりだってあった。でも今日の行為では乱暴な姿も見れたし知らない深町がいたのも事実。
深町が分からない。
自分が起きていることはきっとバレていない。今井は溢れる涙を拭えずそっと目を閉じた。
セックスの最中に項を噛まれてしまえば番になる。そう言えば自分は快感に溺れてしまって忘れていたがΩの発情期に中てられたαも理性が飛んでしまい、セックスの最中に自分の意思に反してΩの項を噛んでしまうことが多々あると習った。
深町との行為の前半は今井もおぼろげであるが、深町はずっと冷静だったように思う。自分ばかりが乱されていた。
αを乱すことも出来ないのはやはり自分体のせいか。分かっていたことなのに、噛まれたかったわけじゃないのに情けなさがこみ上げる。涙がでては深町の体を濡らしてしまいバレてしまう。こんな自分を見られたくない。
「あ、ありがと深町。本当に助かった」
深町の体に手を付き、体を起こす。精一杯の明るい声を出したが語尾が小さくなった。
ガクガクと震える膝を立て、未だ自分の中にいる深町を抜いた。萎えてもそれなりの質量を誇るものだから思わず眉を顰めてしまう。
何も言わずに一連の動作を眺めていた深町だったが、今井がベッドから降りようとしたところで離れてゆく腕を取った。思い切り引っ張り、またベッドへと今井の体を沈ませる。先ほどと違うのは、今井はうつ伏せの状態で深町に圧し掛かられているということだ。シーツに顔を埋めているせいで深町の顔が見えない。自分を見られなくて好都合だが、深町がどんな表情をしているのか分からなくて不安になった。
「ちょ、痛いし。深町、もういいよ。ごめん、本当に助かったから」
「なんかさ。みのるって何も分かってないよね、俺のこと」
「え? 深町のことって、……なに、なんのこと」
「何も感じないわけ」
「何も感じないって……」
あれほど感じたのに何が言いたいのだろう。今井は深町の言わんとしていることが分からない。
背中から舌打ちが聞こえ身構えてしまう。普段深町から舌打ちなど聞いたこともないしイラだった様子も感じたことがない。優しくて、時々冗談を言っては笑わせてくれる笑顔が眩しい深町しか知らない。
なぜ怒らせてしまったのか、何が悪かったのかを考えてしまった。それが余計な思考とも分からない。
今井から退いた深町は閉じられた両足を開かせ、体を割りいれる。
筋肉のついた決して柔らかじゃない尻に脈打つものを感じた。まさかまだするのかと驚きで肘を突いて振り返ろうとするがその前に頭を押さえつけられシーツへと戻された。
乱暴な仕草も初めてのことで頭がフリーズしてしまう。
「あのさ、俺はαなんだよね。分かってる?」
分かっているも何も、分かっているから助けてくれとお願いしたのだ。
グズグズになっている窄まりを先端で上下に擦られる。落ち着いたはずの熱は今すぐにでもよみがえりそうだった。
「俺もさ昨日と今日、抑制剤を飲んでいないんだよね。はい、四つんばいになって」
「えっ」
「早く」
尻を持ち上げられ、今井は仕方なく手をついて体を起こす。もう力の入らない腕は震えていまにも崩れそうだ。それに後ろには深町がいる。あられもない姿を晒し、セックスをしたにも関わらず恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
たらりと腿を伝う粘度の高い液体を指で拭われ、熱が集まり始めていた中心は硬さを取り戻す。
「せっかく入れたのにでてきたな」
「はぁ……っ」
「まだまだあげるからしかっかり飲んでね」
「あうっ!」
「……はぁ。絡み付く……」
「んぅ、んっ、も、もうムリッ」
ゆっくりと味わうようねじ込まれた。
足腰も立たないのに、頭もぐちゃぐちゃなのに今井の陰茎はしっかりと主張をしていた。屹立したモノが揺れるたび先走りがシーツに染みを作った。
無理だと思っていたのに。それなのに深町が体に入ってくると次から次へと快感が這い上がってくる。底なしのようだった。
快感に支配された今井は体を支えられず上半身が崩れ落ちた。尻だけを高くした状態で深町に貫かれる。
卑猥な音を鳴らす孔からは泡立った精液が溢れていた。
快感だけを追い求めているとふと律動が緩いものになった。無意識に腰を揺らして淫らに誘うが、激しいものは襲ってこなかった。
もどかしい気持ちでいるとすらりと伸びた指先が背中をなで上げた。襟足の長い今井の、露になった項にまた触れられて全身が総毛立つ。
「っ……!」
「ココ弱いの?」
ギュッとシーツを掴み、口が開かないよう下唇を噛みしめ耐えた。
うっかり「噛んで」と言ってしまいそうな自分。驚きは唖然とするものでしかなかった。何を考えてそんなことを深町に言えるだろうか。こうやって抱いてもらえるだけで十分ではないか。本能なのかなんなのか。浅ましいにもほどがある。
そんな今井を知ってか知らずか、深町は項を撫でるのを止めない。腰のグラインドに合わせて上下左右と好きに項を弄る。
もう気が遠くなりそうだった。
朦朧となる意識の中、絶対言わないと、それだけを覚悟し深町に溺れていった。
自分の体を触る感触で目が覚める。一度目を閉じ、またゆっくりと瞼を上げた。見慣れた部屋。薄明かりがカーテンの隙間から零れているからそろそろ夜明けなのだろう。あれから時間がどれくらいだったのかも分からない。
しかし何度も深町を受け入れたのでずいぶんと頭はスッキリしていた。
が、体はどろどろに疲れている。指を動かすのも難儀だった。すべてが初めてのこととあってかなり酷使したはずだから仕方ないのかもしれない。
ぴったりと自分の背中に張り付くように深町も横になっていた。
そして後孔に感じる違和感と深町とは違いそれほど筋肉のない薄い腹を撫でる手に意識がいく。
今井の体の奥にはまだ深町がいた。形は萎えているようだがもうちぎれちゃうんじゃないだろうかと少し心配になる。
そして腹部を撫でる手。行為のときは冷たかった深町の手は暖かく、慈しむような手つきにまた泣きたくなった。どうしてこんなことをするのだろう。
そんなに孕んで欲しいのか。孕ませてどうするつもりか、番になる気もないだろうに。孕ませるだけ孕ませて捨てる気だろうか。セックスをするまで深町は本当にいい友人だったと思う。思いやりだってあった。でも今日の行為では乱暴な姿も見れたし知らない深町がいたのも事実。
深町が分からない。
自分が起きていることはきっとバレていない。今井は溢れる涙を拭えずそっと目を閉じた。
15
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
そして、当然の帰結
やなぎ怜
BL
β家庭に生まれたαである京太郎(きょうたろう)の幼馴染の在雅(ありまさ)もまたβ家庭に生まれたΩだ。美しい在雅が愛しい相手を見つけるまで守るのが己の役目だと京太郎は思っていた。しかし発情期を迎えた在雅が誘惑したのは京太郎で――。
※オメガバース。
※性的表現あり。
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
【完結】利害が一致したクラスメイトと契約番になりましたが、好きなアルファが忘れられません。
亜沙美多郎
BL
高校に入学して直ぐのバース性検査で『突然変異オメガ』と診断された時田伊央。
密かに想いを寄せている幼馴染の天海叶翔は特殊性アルファで、もう一緒には過ごせないと距離をとる。
そんな折、伊央に声をかけて来たのがクラスメイトの森島海星だった。海星も突然変異でバース性が変わったのだという。
アルファになった海星から「契約番にならないか」と話を持ちかけられ、叶翔とこれからも友達として側にいられるようにと、伊央は海星と番になることを決めた。
しかし避けられていると気付いた叶翔が伊央を図書室へ呼び出した。そこで伊央はヒートを起こしてしまい叶翔に襲われる。
駆けつけた海星に助けられ、その場は収まったが、獣化した叶翔は後遺症と闘う羽目になってしまった。
叶翔と会えない日々を過ごしているうちに、伊央に発情期が訪れる。約束通り、海星と番になった伊央のオメガの香りは叶翔には届かなくなった……はずだったのに……。
あるひ突然、叶翔が「伊央からオメガの匂いがする」を言い出して事態は急変する。
⭐︎オメガバースの独自設定があります。
フェロモンで誘いたいかった
やなぎ怜
BL
学校でしつこい嫌がらせをしてきていたαに追われ、階段から落ちたΩの臣(おみ)。その一件で嫌がらせは明るみに出たし、学校は夏休みに入ったので好奇の目でも見られない。しかし臣の家で昔から同居しているひとつ下のαである大河(たいが)は、気づかなかったことに責任を感じている様子。利き手を骨折してしまった臣の世話を健気に焼く大河を見て、臣はもどかしく思う。互いに親愛以上の感情を抱いている感触はあるが、その関係は停滞している。いっそ発情期がきてしまえば、このもどかしい関係も変わるのだろうか――? そう思う臣だったが……。
※オメガバース。未成年同士の性的表現あり。
ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる