できそこない

梅鉢

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 ベッドに運ばれ、慣れた手つきで衣類をすべて剥ぎ取られた。いやらしく触られているわけでもないのに声が漏れる。短時間で2度も射精したのに今井の陰茎は今日初めてだというように膨らみ、そして反り返っていた。窪みからタラタラと溢れる蜜も止まらない。

「俺も相当我慢してるの分かってよ」

 軽い調子で告げながら深町は服を寛げる。締まった体は月明かりに照らされてとてもキレイだった。そんなキレイな男が自分に圧し掛かってくる。数センチで唇が触れそうな距離まで近づいて、そして止まった。先ほどまで感じてものとは少し違う、もっと濃密になった深町の匂い。腰の疼きが増し、無意識で下肢を深町に押し付けていた。

「あっ、ふかまちぃ、……はっ、」
「……俺以外なら即噛まれているからな」
「んんっ! ……ふ、……んっ」

 乱暴に口付けされ、喘ごうとするとぬるりとしたものが割って入ってきた。

 男だがΩ。だから受け入れるだけの器として自分を捉えていたため、女性とも付き合ったことがなかったからキスすら初めてだった。驚いて押し出そうとすれば舌先を吸われて頭がジンと痺れる。すぐに離れていったそれに、今井は物足りなくて唇をパクパクと動かすが、深町はクスリと笑うだけだった。

 少しだけ冷たい深町の手が体を這う。火照った体には気持ちよくて身を捩った。

 長い指が胸の尖りを掠めると堪らず声が漏れる。我慢したいのに我慢できないのだ。

「ああっ! はっ、……や、やめっ」
「……はぁー……。……やばい」

 今井の耳の裏で何度も深呼吸をし、深町はうっとりと呟いた。

 ピンと立ち上がった尖りから手を離し、体のラインを確かめるように手を下へと滑らせる。屹立し、震える今井の男根の根元をゆっくりと指を這わせて通り過ぎ、さらに奥へと。自分ですら見たことのない場所へと指が移動し、すでに濡れそぼった窄まりを擦れられたとき今井は身を硬くした。

 「大丈夫だから」と深町は言うが、何に対しての大丈夫なのかが分からない。円を描く様に孔の周りを撫でられ、背筋がゾクゾクした。

「う……、はっ、……あああっ! なにっ!? やめっ、やめろって」
「何って、指一本入れただけだよ。こんなに濡れてるんだから痛くないでしょ」
「やだっ、て……。むりっ、……ん、うああっ」
「二本目」
「ああっ、あ、はっ、……はっ、やっ、……っつ!」
「三、本、はさすがにきつい。急すぎたかな。慣らそうか」

 確かに指の二本なら痛みもなかった。成人男性の指三本ともなると孔がギチギチに広げられ、十分に濡れている孔でも痛みが走る。

 ふぅふぅと呼吸を整えていると深町が空いた手で頭を撫でてきた。そんなことじゃ痛みは和らがないが、こめかみや瞼に優しくキスをされ少しずつ体が解される。自然に寄っていた眉間の皺も取れ、体の力も抜けてきて。待っていたかのように止まっていた手が動いた。狭い器官にぎっちりと入り込んだ指は、そろそろと内壁を擦りながら体から出ていき、そしてゆっくりと入ってくる。

 それだけのことなのに今井のモノはガチガチに膨らんで射精寸前だ。
 恐怖とは違う意味で身を硬くし始めた今井に気がついた深町は指を一気に引き抜く。衝撃に体が跳ねた。三本の指を飲み込んでいた孔はひくひくと物足りなそうに収縮をしながら閉じていった。

 わけの分からない快感が消え去って焦ったのは今井だ。もう少しでイけそうだったのに。

「ふか、まちっ、……な、んで……し、して」
「やだって言ってみたりしてって言ってみたり、どっちなわけ」
「えっ……なに、わ、わかんな……」

 嫌だと言った記憶はない。無意識で出た言葉など覚えていない。

 自分はこんなにも苦しいのに、深町も助けてくれると言ってくれたのに。だから分からないことを言う、続きをしてくれない深町に焦燥する。

 とろけた顔で深町を見上げれば、フイ、と顔を背けられ、ベッドから重みが消えた。「待って」と声を出したいが胸がチリついて言葉が出ない。キレイな背中が遠くなる。

 どういうことだろう。やはりΩとはいえ男を抱くのが気持ち悪いのだろうか。泣きたくなる気持ちの中、体の疼きは待ってくれない。

 声を出さぬよう右腕を噛み、反対の手で自身に手を伸ばす。気持ちいい、もうすぐイく。はずなのに。イく手前までの快感しか沸かず、その先がなかなか来ない。

 今まではこんなことはなかった。イくどころか何かが足りなくてイける気がしないように感じた。ぬちぬちと先走りでどろどろの陰茎を擦る音と荒い息がベッド上に響く。

「あれ、ダメじゃん。1人で何やってんの」
「うぅ……うっ、ふかま、ちぃ」
「ダメだって。一人でイくの禁止」

 何かを手にした深町が笑いながら戻ってきた。先ほどは気がつかなかったが、深町の下肢も確かに熱を持っていて腹に付きそうなほどに反りあがっていた。妙な嬉しさと恥ずかしさが襲うが、今井よりも猛々しいモノに思わず凝視してしまう。

 アレで中を擦られたらどうなってしまうのだろう。恐怖もあるが同じくらい興奮した。

「ああ、うん。俺も我慢してるって言っただろ」

 見ていることを指摘され、さっと視線を逸らした。ギシッとベッドが鳴る。

 仰向けになって自慰をしている今井の腿にまたがり、自身を握る手を退かされた。血管が浮き出たそれに手を添えられ、今井は触ってもらえることに喜びで震えた。が、それはすぐに消え去り、陰茎の根元を何かで縛られてしまったことに苦しくて肘を使って起き上がった。

「なにっ!? とって、とって!……やだっ、やだってこれ!」
「だーめ。寸止めキツいだろうけど射精管理でもしないとイきっぱなしだろ。俺が満足するまで体力続かないと困るからとりあえず俺が一回イくまでこれしてて」
「あ……やだ……これや、だ……っぅ」
「貞操帯の方が良かった?」
「なに、……な、に……っ」
「そんなにイきたきゃ中だけでイけば」
「んっ、……うぅ、ふかまちっ、……ふかまちっ」
「……分かったって」

 ふぅ、と一息つき、髪をかきあげた深町は今井から退いた。

 今井の足を抱え、自身をひくつく今井の窄まりにあてがう。指なら難なく入ったそこも深町の雄を容易く進入することを許さない。

「ううっ……っ」

 痛みに耐えるようシーツを握り締める。
 先端まで入ったところで挿入をやめ、力の入った今井の手をシーツからはがし、恋人繋ぎのように手を握った。

「痛い?」

 行為自体初めてなのにあんなに太いものを入れられて痛くないわけがない。しかし肩で息をしながら今井は必死で首を横に振った。痛みはあってもやめて欲しくなかった。痛くてもいい、もっと奥まで満たして欲しい。

 繋がれた手をぎゅっと力を込めて覚悟を持って握った。

「いたくして、いいから……おねが、っああっ!」

 目に涙を浮かべながら懇願するが、すべてを言い終わる前に一気に挿入された。

 声にならない喘ぎを出すと、上から満足そうなため息を吐く深町が目を細めて今井を見下ろしていた。

 離れていた体もピッタリとくっついていることで全部中におさまっていることを知る。苦痛よりも今は、言葉には表せない妙な何かが体を満たしていた。
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