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番外
その後の生徒会
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三年になって3ヶ月もすぎ、そろそろ代替わりがくる。引継ぎの期間に突入した。
しかし吉岡は俺よりもよっぽど仕事ができるし、なんなら俺のスケジュール管理すらこなしていたので引継ぎらしい引継ぎなどなく、楽に過ごさせてもらっていた。
他の連中、松浦&青木なんかは無言で書類のやり取りをしている。声に出せばいいものの、何かを紙に手書きのメモを熱心にやりとしていた。2人ともイライラしたものを隠さず眉間に皺を寄せているから雰囲気が悪い悪い。
そしていつも通りのふざけた南をブリザードでかわすに二ノ瀬。引継ぎは進んでいるのか不明だが二ノ瀬なら大丈夫だろう。
田口は北村にお小言をたくさんもらって頭から湯気が出ている。ここは、まぁ、田口は俺のようにデキル補助を見つけたらなんとでもなるよ、ドンマイ。
うん。前書記の花菱さんもすごく優しかったし、俺は幸せな生徒会人生だったのかもしれないな。
この部屋とももう少しでお別れ。2年の間色々なことがあった。嫌なこともあったけど、今思うと全部がいい思い出になってしまうから不思議だ。
殺伐とした中でも、どこかほのぼのとしたものも纏うこの生徒会室。その空気を壊すのはいつも南だった。
「なあ、もし自分が女だとして、この中から相手を選ぶなら誰選ぶ?」
一瞬でシーンとなった室内。しかもそれはいつだか俺が二ノ瀬に問うた気が。そして呆れられて恥ずかしい思いをした気が。
視線だけチラリと動かせば、二ノ瀬とばっちり眼が合って苦笑された。他のやつらは止まっていた手を動かし始め、どうやら南の質問には答える気が無さそうだった。
「あ、今付き合っているやつは除外でね。面白くないから」
この空気が分かっているくせになおも続ける南。でも俺はちょっと気になるな。吉岡が女なら誰を選ぶのか。それも今付き合っている俺を除外してというのだから興味がわく。
「もし」の話が考えられないという二ノ瀬も無視を決め込んだのか、また俺に少し困ったように笑ってPC画面に視線を落とした。
「清清しいくらいのスルーだけど、佐野、お前興味あるだろ」
内心ギクリとするが、表に出さないようにため息をもらした。しかし別に知られても困るわけでもなく、恥ずかしいわけでもない。
俺も吉岡が除外だから、他となるとやっぱりこの人しかしないと思うわけだ。俺の保護者。
「そりゃ北村しかいないわ。とにかく優しいし」
「ああー海斗。 大本命じゃん。つまんないね、お前。大穴で俺がいたんだけど」
「ほんと大穴だわ。南は一番最後ね」
「ええー俺優しいのに」
「どの口が言うか」
南とは能登さんが卒業してから以前のような関係に戻った。ただどこかわだかまりはあるが、お互い上辺の関係を保っている。もう深入りはしてこない。
そして俺から指名を受けた北村は頬杖をついて「俺が女なら佐野やだな……」とポツリと呟いていた。北村だって俺のことが好きだと思っていたのに。
「ひどい!」
「ふふ、佐野がふられてる」
「だって佐野わがままだし。お前が女ならまぁ俺も受け止めてやろうと思えるかもしれないけど、俺が女だったら佐野は無理だ。悪いな」
分からんでもない、もっともな返事に納得せざるを得ない。くそう。
「吉岡、お前の佐野はこんなこと言ってるけど、お前はどんなんだよ」
お、今度ばかりは南よくやったと言いたい。それほど気にしていないように隣を見たが、手元を止めずに「俺も北村さんで」とただ一言。本気で言ってないだろと突っ込みたくなった。
馬鹿馬鹿しい、という態度が丸分かりだ。それに乗っかるように二ノ瀬と田口も「俺も北村さんで」と言いやがった。なんだよ、1年連中……じゃないな、2年連中は何の妄想や空想も膨らませることが出来ないやつらばかりか。つまらないにもほどがある。いや、確かに面白くて吉岡と付き合っているわけではないし、俺が求めいているのはそこでもないけど、こんなときはノリが悪いのもちょっとな。
「みんな誠実そうな男が好きなんだね。でも海斗なんて優しそうに見えて感情薄っぺらいからね~!」
「感情剥き出しのお前よりマシだから北村を選んでんだよ、分かれよ変態」
「感情どころか思考回路駄々漏れのバカには言われたくないかなー。んで、松浦と青木は」
青木からは「北村さん」とすぐに返事があったが、松浦は少し間を空けてから首だけ動かして南をジッと見つめた。
「俺が女だったら、お前かもな」
南も不意打ちだったらしい。一瞬の瞠目のあと、松浦から体を引いて『なんだこいつ』みたいに表情を曇らせている。
選ばれてまったく嬉しそうじゃないなんて。南は何がしたいのだ。北村は笑いたいのを我慢しているのか口元が歪んでいた。分かる、その気持ち。
「一応聞いておこうか。なんで俺なの?」
「お前のこと、振り回したら楽しそうじゃないか。本気で惚れたら誰よりも守ってくれそうだし、何でもしてくれそうだしな」
「いや、松浦が女だったら本気で惚れないよ」
「それはまた別の話だろ」
確かに今までも松浦は南のことを優遇しているとしか思えないことがあったが、やはり南の中身を結構気に入っていたりするのだろう。松浦も青木とくっついているし、そうじゃなければ南を選ぶなんて、俺にはない趣味をお持ちのようだ。
「じゃー次は反対でいこう。自分以外が女だったら、誰を選ぶ?」
「まだやるのか……」
「さっきぶっちぎりで一位なったからって調子に乗るなよ海斗」
「このメンバーでどうやって調子に乗れるんだよ……」
「じゃーまずこの手の質問にノリノリの佐野から。これも吉岡以外ね」
「えー!」
俺からかい。
自分が男のままで、他が女なら。
「いや、もうこれも北村で……」
「佐野って本当につまんないなー」
南がそう言うかいなや、2年全員「俺も北村さんで」と声が飛ぶ。おいおい、乗っかりすぎだろ。南も呆れたように見回し、「またまた一番人気の海斗は誰をご指名?」と聞いてきた。
「お前らが女だったらとか、真面目に想像できないんだが」
「誰もセックスを想像しろって言ってないんだからさー適当でいいから答えなよ」
「セっ……」
真面目な北村になんてことを言うのだこの馬鹿は。
「セっ……は想像できないけど、佐野かな。わがままも慣れているし、自己主張もあるから付き合う分には楽だな。俺は割りとなんでもいい性質だから」
「へー。よかったね、佐野。ある意味両思いになったんじゃない」
「えーそれ両思いか?」
俺が女なら北村を選び、北村は女の俺を選ぶ。確かに両思いな気がするがなんか違う。別に嬉しくもない。
先ほど誰とも異なる人物を発した松浦が気になり、俺から「松浦は?」と問いかけた。
俺に一瞥し、また少し間が空いて「佐野かな」と思っても見ないご指名が。なんとさっき南の反応を馬鹿にしたくせに、俺も同じ態度で松浦を見てしまった。『なんだこいつ』と。北村とは割りと仲がいいのを自覚しているから、北村に選ばれてもフーンくらいだったけど、松浦に選ばれる理由が分からない。
「聞くけど、佐野の何がいいの?」
「気の強いのは嫌いじゃない」
その場のみんな「ふーん」みたいな雰囲気だった。と言うことは青木は気が強いのか。普段しゃべらないから分からないわ。でもよく喧嘩の雰囲気出しているから気が強いんだろうな。
そして俺も気が強いと思われているのか、松浦には。「アレは馬鹿なだけだよ」と勝手に返している南のことはみんな無視をしていた。ありがとう、みんな。
「ところで、カナタはどうなんだ?」
「んー?」
「選んでないだろ。自分が女でも、周りが女でも」
「ふふ」
ばれちゃった、みたいに無駄に笑顔を振りまいてきた。好きな人にはたまらないそれは、この生徒会室では一切通用しない。しかし「秘密」と言いやがったときにはあちこちから非難がましく鋭い視線を送られていた。言いだしっぺ、この野郎と聞こえてくるようだ。
「別に俺が誰を選ぶか興味ないでしょ?」
確かに興味ない。俺が興味あったのは吉岡だけだったし。
まぁいいか、と仕事を再開した。それぞれも瞬時に苛立ちが溶けたのか、キーボードの音が鳴り始めた。
「えーマジで興味なさすぎじゃない?」と言う恨み言も全員無視をしていた。
寮へ帰り、吉岡を問い詰めてみた。
適当に北村、と言っていたが本当のところどうなんだ、と。
こんなところでまたその話題か、と聞こえるくらい表情豊かに呆れられた。
「あの中だったら、北村さんは妥当な判断だと思いますが」
「まあね」
「そもそも、佐野さん以外興味ないですよ、俺」
「あー、うん。俺もそうなんだけどさ。そうなるとあの質問自体成立しないだろ」
ソファの足元に体育座りをしていると横に吉岡も並んだ。俺の腰に腕を巻きつけながら。
「佐野さんを除外されても、俺は佐野さんです」
「あー、う、うん」
耳に口付けられたまま話をされ、鼓膜が吉岡の声で擽られて全身がゾクゾクした。ふるっ、と体を震わせると気を良くしたのか、耳に唇をつけたまま吉岡は続けた。
「佐野さんしか選びたくないんです。そもそも、俺が初めて好きになったのは佐野さんです。あなたが男でも女でもどうでもいいんです」
「……う、うん……」
「佐野さんが好きなんです」
「わ、分かったよ。分かった。……ひっ!」
耳の中に舌を這わせ、時々耳を甘く噛んできた。声だけですでに官能を思い出させられていたと言うのに、直接的な刺激はもう無理。
「勃ってますね」と股間に手を伸ばされ、ぐーっと吉岡の肩を押しやった。
「だって俺お前の声に弱いし……」
それにやりたい盛りだし、と続く前に膝裏と背中を支えられ、そして視界がぐらりと揺れた。床からの、軽々としたお姫様抱っこにびっくり仰天だ。
「ベッドに運んでいいですか?」
「いいけど、お前って本当に力あるね。こんなん初めてされたわ」
「ご所望であれば、いつでも」
「俺のためならなんでもするわけ?」
「俺に出来ることなら、なんでもしたいと思っていますよ」
おお、俺は幸せものだな。好いた相手にこんなことまで言ってもらえるなんて。いつも貰ってばかりだし、今日は返してあげようかな、なんて思わせてくれるほど吉岡の目は優しくて。これからスケベなことをヤルなんて微塵も感じさせないような。
「俺も、お前のために出来ることならしようと思うよ」
「本当ですか。もう勃起して痛いくらいなんですけど、舐めてください」
「え」
「舐めてください、俺の。佐野さんの中、可愛がる前に」
「えー」
そうくるの?
エロい注文は来ないと思っていただけに戸惑ってしまう。しかもフェラなんてしたことないし。してくれとも言われなかったからだけど。
「しょうがねーな。今日だけだぞ」
「えっしてくれるんですか」
「お前がしろと言ったのに」
照れくさそうに驚くから、吉岡の首根っこを捕まえてキスをした。
しゃぶる前から期待に満ちた吉岡の息子さんは普段よりも反り立っていて、浮き出た血管がグロテスク。さらに舐めた途端膨張も普段より増していた。
まったく可愛くないそれに恐れをなした俺は(そもそも吉岡は体力馬鹿)、今日は抜きっこだけで終わろう、なんなら素股でと提案し、しぶしぶ受け入れてもらった。
なにかと最後の主導権は俺にあるので、このまま握って離すもんかと誓った。
おしまい
しかし吉岡は俺よりもよっぽど仕事ができるし、なんなら俺のスケジュール管理すらこなしていたので引継ぎらしい引継ぎなどなく、楽に過ごさせてもらっていた。
他の連中、松浦&青木なんかは無言で書類のやり取りをしている。声に出せばいいものの、何かを紙に手書きのメモを熱心にやりとしていた。2人ともイライラしたものを隠さず眉間に皺を寄せているから雰囲気が悪い悪い。
そしていつも通りのふざけた南をブリザードでかわすに二ノ瀬。引継ぎは進んでいるのか不明だが二ノ瀬なら大丈夫だろう。
田口は北村にお小言をたくさんもらって頭から湯気が出ている。ここは、まぁ、田口は俺のようにデキル補助を見つけたらなんとでもなるよ、ドンマイ。
うん。前書記の花菱さんもすごく優しかったし、俺は幸せな生徒会人生だったのかもしれないな。
この部屋とももう少しでお別れ。2年の間色々なことがあった。嫌なこともあったけど、今思うと全部がいい思い出になってしまうから不思議だ。
殺伐とした中でも、どこかほのぼのとしたものも纏うこの生徒会室。その空気を壊すのはいつも南だった。
「なあ、もし自分が女だとして、この中から相手を選ぶなら誰選ぶ?」
一瞬でシーンとなった室内。しかもそれはいつだか俺が二ノ瀬に問うた気が。そして呆れられて恥ずかしい思いをした気が。
視線だけチラリと動かせば、二ノ瀬とばっちり眼が合って苦笑された。他のやつらは止まっていた手を動かし始め、どうやら南の質問には答える気が無さそうだった。
「あ、今付き合っているやつは除外でね。面白くないから」
この空気が分かっているくせになおも続ける南。でも俺はちょっと気になるな。吉岡が女なら誰を選ぶのか。それも今付き合っている俺を除外してというのだから興味がわく。
「もし」の話が考えられないという二ノ瀬も無視を決め込んだのか、また俺に少し困ったように笑ってPC画面に視線を落とした。
「清清しいくらいのスルーだけど、佐野、お前興味あるだろ」
内心ギクリとするが、表に出さないようにため息をもらした。しかし別に知られても困るわけでもなく、恥ずかしいわけでもない。
俺も吉岡が除外だから、他となるとやっぱりこの人しかしないと思うわけだ。俺の保護者。
「そりゃ北村しかいないわ。とにかく優しいし」
「ああー海斗。 大本命じゃん。つまんないね、お前。大穴で俺がいたんだけど」
「ほんと大穴だわ。南は一番最後ね」
「ええー俺優しいのに」
「どの口が言うか」
南とは能登さんが卒業してから以前のような関係に戻った。ただどこかわだかまりはあるが、お互い上辺の関係を保っている。もう深入りはしてこない。
そして俺から指名を受けた北村は頬杖をついて「俺が女なら佐野やだな……」とポツリと呟いていた。北村だって俺のことが好きだと思っていたのに。
「ひどい!」
「ふふ、佐野がふられてる」
「だって佐野わがままだし。お前が女ならまぁ俺も受け止めてやろうと思えるかもしれないけど、俺が女だったら佐野は無理だ。悪いな」
分からんでもない、もっともな返事に納得せざるを得ない。くそう。
「吉岡、お前の佐野はこんなこと言ってるけど、お前はどんなんだよ」
お、今度ばかりは南よくやったと言いたい。それほど気にしていないように隣を見たが、手元を止めずに「俺も北村さんで」とただ一言。本気で言ってないだろと突っ込みたくなった。
馬鹿馬鹿しい、という態度が丸分かりだ。それに乗っかるように二ノ瀬と田口も「俺も北村さんで」と言いやがった。なんだよ、1年連中……じゃないな、2年連中は何の妄想や空想も膨らませることが出来ないやつらばかりか。つまらないにもほどがある。いや、確かに面白くて吉岡と付き合っているわけではないし、俺が求めいているのはそこでもないけど、こんなときはノリが悪いのもちょっとな。
「みんな誠実そうな男が好きなんだね。でも海斗なんて優しそうに見えて感情薄っぺらいからね~!」
「感情剥き出しのお前よりマシだから北村を選んでんだよ、分かれよ変態」
「感情どころか思考回路駄々漏れのバカには言われたくないかなー。んで、松浦と青木は」
青木からは「北村さん」とすぐに返事があったが、松浦は少し間を空けてから首だけ動かして南をジッと見つめた。
「俺が女だったら、お前かもな」
南も不意打ちだったらしい。一瞬の瞠目のあと、松浦から体を引いて『なんだこいつ』みたいに表情を曇らせている。
選ばれてまったく嬉しそうじゃないなんて。南は何がしたいのだ。北村は笑いたいのを我慢しているのか口元が歪んでいた。分かる、その気持ち。
「一応聞いておこうか。なんで俺なの?」
「お前のこと、振り回したら楽しそうじゃないか。本気で惚れたら誰よりも守ってくれそうだし、何でもしてくれそうだしな」
「いや、松浦が女だったら本気で惚れないよ」
「それはまた別の話だろ」
確かに今までも松浦は南のことを優遇しているとしか思えないことがあったが、やはり南の中身を結構気に入っていたりするのだろう。松浦も青木とくっついているし、そうじゃなければ南を選ぶなんて、俺にはない趣味をお持ちのようだ。
「じゃー次は反対でいこう。自分以外が女だったら、誰を選ぶ?」
「まだやるのか……」
「さっきぶっちぎりで一位なったからって調子に乗るなよ海斗」
「このメンバーでどうやって調子に乗れるんだよ……」
「じゃーまずこの手の質問にノリノリの佐野から。これも吉岡以外ね」
「えー!」
俺からかい。
自分が男のままで、他が女なら。
「いや、もうこれも北村で……」
「佐野って本当につまんないなー」
南がそう言うかいなや、2年全員「俺も北村さんで」と声が飛ぶ。おいおい、乗っかりすぎだろ。南も呆れたように見回し、「またまた一番人気の海斗は誰をご指名?」と聞いてきた。
「お前らが女だったらとか、真面目に想像できないんだが」
「誰もセックスを想像しろって言ってないんだからさー適当でいいから答えなよ」
「セっ……」
真面目な北村になんてことを言うのだこの馬鹿は。
「セっ……は想像できないけど、佐野かな。わがままも慣れているし、自己主張もあるから付き合う分には楽だな。俺は割りとなんでもいい性質だから」
「へー。よかったね、佐野。ある意味両思いになったんじゃない」
「えーそれ両思いか?」
俺が女なら北村を選び、北村は女の俺を選ぶ。確かに両思いな気がするがなんか違う。別に嬉しくもない。
先ほど誰とも異なる人物を発した松浦が気になり、俺から「松浦は?」と問いかけた。
俺に一瞥し、また少し間が空いて「佐野かな」と思っても見ないご指名が。なんとさっき南の反応を馬鹿にしたくせに、俺も同じ態度で松浦を見てしまった。『なんだこいつ』と。北村とは割りと仲がいいのを自覚しているから、北村に選ばれてもフーンくらいだったけど、松浦に選ばれる理由が分からない。
「聞くけど、佐野の何がいいの?」
「気の強いのは嫌いじゃない」
その場のみんな「ふーん」みたいな雰囲気だった。と言うことは青木は気が強いのか。普段しゃべらないから分からないわ。でもよく喧嘩の雰囲気出しているから気が強いんだろうな。
そして俺も気が強いと思われているのか、松浦には。「アレは馬鹿なだけだよ」と勝手に返している南のことはみんな無視をしていた。ありがとう、みんな。
「ところで、カナタはどうなんだ?」
「んー?」
「選んでないだろ。自分が女でも、周りが女でも」
「ふふ」
ばれちゃった、みたいに無駄に笑顔を振りまいてきた。好きな人にはたまらないそれは、この生徒会室では一切通用しない。しかし「秘密」と言いやがったときにはあちこちから非難がましく鋭い視線を送られていた。言いだしっぺ、この野郎と聞こえてくるようだ。
「別に俺が誰を選ぶか興味ないでしょ?」
確かに興味ない。俺が興味あったのは吉岡だけだったし。
まぁいいか、と仕事を再開した。それぞれも瞬時に苛立ちが溶けたのか、キーボードの音が鳴り始めた。
「えーマジで興味なさすぎじゃない?」と言う恨み言も全員無視をしていた。
寮へ帰り、吉岡を問い詰めてみた。
適当に北村、と言っていたが本当のところどうなんだ、と。
こんなところでまたその話題か、と聞こえるくらい表情豊かに呆れられた。
「あの中だったら、北村さんは妥当な判断だと思いますが」
「まあね」
「そもそも、佐野さん以外興味ないですよ、俺」
「あー、うん。俺もそうなんだけどさ。そうなるとあの質問自体成立しないだろ」
ソファの足元に体育座りをしていると横に吉岡も並んだ。俺の腰に腕を巻きつけながら。
「佐野さんを除外されても、俺は佐野さんです」
「あー、う、うん」
耳に口付けられたまま話をされ、鼓膜が吉岡の声で擽られて全身がゾクゾクした。ふるっ、と体を震わせると気を良くしたのか、耳に唇をつけたまま吉岡は続けた。
「佐野さんしか選びたくないんです。そもそも、俺が初めて好きになったのは佐野さんです。あなたが男でも女でもどうでもいいんです」
「……う、うん……」
「佐野さんが好きなんです」
「わ、分かったよ。分かった。……ひっ!」
耳の中に舌を這わせ、時々耳を甘く噛んできた。声だけですでに官能を思い出させられていたと言うのに、直接的な刺激はもう無理。
「勃ってますね」と股間に手を伸ばされ、ぐーっと吉岡の肩を押しやった。
「だって俺お前の声に弱いし……」
それにやりたい盛りだし、と続く前に膝裏と背中を支えられ、そして視界がぐらりと揺れた。床からの、軽々としたお姫様抱っこにびっくり仰天だ。
「ベッドに運んでいいですか?」
「いいけど、お前って本当に力あるね。こんなん初めてされたわ」
「ご所望であれば、いつでも」
「俺のためならなんでもするわけ?」
「俺に出来ることなら、なんでもしたいと思っていますよ」
おお、俺は幸せものだな。好いた相手にこんなことまで言ってもらえるなんて。いつも貰ってばかりだし、今日は返してあげようかな、なんて思わせてくれるほど吉岡の目は優しくて。これからスケベなことをヤルなんて微塵も感じさせないような。
「俺も、お前のために出来ることならしようと思うよ」
「本当ですか。もう勃起して痛いくらいなんですけど、舐めてください」
「え」
「舐めてください、俺の。佐野さんの中、可愛がる前に」
「えー」
そうくるの?
エロい注文は来ないと思っていただけに戸惑ってしまう。しかもフェラなんてしたことないし。してくれとも言われなかったからだけど。
「しょうがねーな。今日だけだぞ」
「えっしてくれるんですか」
「お前がしろと言ったのに」
照れくさそうに驚くから、吉岡の首根っこを捕まえてキスをした。
しゃぶる前から期待に満ちた吉岡の息子さんは普段よりも反り立っていて、浮き出た血管がグロテスク。さらに舐めた途端膨張も普段より増していた。
まったく可愛くないそれに恐れをなした俺は(そもそも吉岡は体力馬鹿)、今日は抜きっこだけで終わろう、なんなら素股でと提案し、しぶしぶ受け入れてもらった。
なにかと最後の主導権は俺にあるので、このまま握って離すもんかと誓った。
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