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第五章
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「好きって一度しか言わないと言ってましたが、普通に言ってくれましたね」
「あ?」
「『好き』ですよ」
「は?」
事後、2人でだらだらとベッドで過ごしていたら(と言ってもうつぶせに寝転がった俺の腰をマッサージさせていた)吉岡がとんちんかんなことを言ってきた。
何言ってんだコイツと思ったが最中に『好き』と言えと強要され余裕のない声で好き好き言いまくったのは俺だった。
なるほど、そういうことか。
「言わされたんだからノーカンだぼけ」
「そうなんですか。まぁいいですけど」
「これから先何度でも聞けそうだし」とつけたされた。言わせる気満々のセリフにシーツに埋めていた顔をムッとさせてみたが見えるはずもなく。
しかし吉岡の指使いはどうなっているのだ。気持ちよすぎる。
どこまでも器用にこなすこいつは本当何ものなのだろうと不思議に思う。それも今では俺の恋人となったわけだが。
恋人、という言葉にピンと来ないのは仕方ないのだろう。今まで先輩後輩でやってきたのだしおかしな関係はずっとあったわけだし、今更お付き合いしましょうよろしくお願いしますというのもなんだか違う気がした。
俺と吉岡の関係はなんと表現したらいいのだろう。公にしたくはない、かと言ってコソコソ隠れて会うのもイヤだ。
「なぁ、俺たちって付き合ってるわけ? 恋人なの?」
分からないことは聞いてみればいい。もう吉岡相手に遠慮なんてしなくていい。
手を休めず「佐野さんがそうしたいなら」と返事をした吉岡もそういったことにあまり執着はなさそうだった。
俺も実際のところよく分かっていないが多少の束縛はしたいわけで。もちろん俺以外の人間と寝るのは言語道断。ということはやっぱり何かしらの名称があったほうが都合いいし束縛する権利もゲット出来るのか。
「あのさー、お願いあんだけど」
「どうぞ」
「俺以外と遊ぶなとかそこまでは言わないけど俺以外と寝るな。エロ禁止。そんな束縛はしたいんだけど。ということは『恋人』という位置が欲しいな、なんて」
「………………分かりました」
吉岡にしてはめずらしく妙に間が長くて、しかも腰を揉んでいた手も離れてしまってどうしたんだろうと肘を突いて振り返ってみると顔をほんのり赤くさせた吉岡が手で口元を覆っていた。
恥ずかしそうに下を向いて俺の視線を避けているようだった。
「なにそれー! めっずらしー! 吉岡照れてんの!? マジで!? 何に反応してそんななんの!?」
うける! とまではさすがに口には出せなかったが思いっきり心の声が弾け飛んでしまった。
照れる吉岡にギロリと睨まれるがまったく怖くない。可愛いとすら思えてしまう俺はきっと吉岡病。
「……佐野さんからそんなこと言われるとは思ってもなかったので……。と言うか、佐野さんキャラ変わってないですか」
「気のせいだろ」
いつも吉岡と話をすると負けた気分になっていたが今はなんだか買った気分。会話に勝ち負けがあるのか分からないけど。
気分よくいると腰を揉んでいた手がやらしい手つきでジャージの上から尻を揉み始めた。
「おい」
「佐野さんにからかわれるのも悪くはないですが仕返ししたくなりますね」
「おいこら」
「さっきまで俺のが入っていたからきっとまだ柔らかいでしょうね」
「おい脱がすなっ」
「ほら、中はまだぬるついてる」
「あっ、この野郎っ」
すばやい動作で下着の中に手を入れて孔へと指を突き入れられた。
恐ろしいほどの動きは俺を青くするに十分だった。今まで散々弄られていたのにもう無理だ。勘弁して欲しい。
起き上がって吉岡の腕を掴むが吉岡は食らいついて指を体に埋め込んだままで出ていこうとはしなかった。
「ああっ、って、おい吉岡っ! 抜けって、もう無理だからっ」
「自分の『恋人』を可愛がりたいのは自然のことかなと思って」
「じゅーぶん! 可愛がられました! 今日は!」
「今日は、ですね」
「……はあ。まぁ、今日は……」
入れられるのは体力を要するが俺だって吉岡の体に触りたいし俺で気持ちよくなって欲しいからこれからもセックスしていきたいし。
まぁ、うん、そういうことだな。
指が抜かれて切なく息を吐いてしまい吉岡に笑われた。
ムカつく。
ずれたパンツとジャージを整えて吉岡に向かって正座をした。
俺の気持ちはきっと吉岡が考えている以上に重たい。なんせ焼き餅焼きのようだから。さらに開き直っているからなお吉岡にはストレートなものをぶつけていくと思われる。
男同士なんて不毛でしかないけど暗いものはないのはやはり若さか。いや、考え込むと深みに嵌ってしまうからの開き直りなのか。
考えてみてもごちゃごちゃとまとまらないのはいつものこと。
クソ真面目な外見の無表情男がいつも俺を見てくれているから、だから俺もそばで見ていたいし、一番近くにいたいなーというのが素直な気持ち。
「これからよろしくお願いします。……翔馬」
呼んでみたかった名前を口にしてみたら目の前にある無表情が一瞬驚いたものになり、そして照れたように笑う吉岡を大切にしていきたいなと年上っぽいことを思ってみた。
書記長さんおしまい
「あ?」
「『好き』ですよ」
「は?」
事後、2人でだらだらとベッドで過ごしていたら(と言ってもうつぶせに寝転がった俺の腰をマッサージさせていた)吉岡がとんちんかんなことを言ってきた。
何言ってんだコイツと思ったが最中に『好き』と言えと強要され余裕のない声で好き好き言いまくったのは俺だった。
なるほど、そういうことか。
「言わされたんだからノーカンだぼけ」
「そうなんですか。まぁいいですけど」
「これから先何度でも聞けそうだし」とつけたされた。言わせる気満々のセリフにシーツに埋めていた顔をムッとさせてみたが見えるはずもなく。
しかし吉岡の指使いはどうなっているのだ。気持ちよすぎる。
どこまでも器用にこなすこいつは本当何ものなのだろうと不思議に思う。それも今では俺の恋人となったわけだが。
恋人、という言葉にピンと来ないのは仕方ないのだろう。今まで先輩後輩でやってきたのだしおかしな関係はずっとあったわけだし、今更お付き合いしましょうよろしくお願いしますというのもなんだか違う気がした。
俺と吉岡の関係はなんと表現したらいいのだろう。公にしたくはない、かと言ってコソコソ隠れて会うのもイヤだ。
「なぁ、俺たちって付き合ってるわけ? 恋人なの?」
分からないことは聞いてみればいい。もう吉岡相手に遠慮なんてしなくていい。
手を休めず「佐野さんがそうしたいなら」と返事をした吉岡もそういったことにあまり執着はなさそうだった。
俺も実際のところよく分かっていないが多少の束縛はしたいわけで。もちろん俺以外の人間と寝るのは言語道断。ということはやっぱり何かしらの名称があったほうが都合いいし束縛する権利もゲット出来るのか。
「あのさー、お願いあんだけど」
「どうぞ」
「俺以外と遊ぶなとかそこまでは言わないけど俺以外と寝るな。エロ禁止。そんな束縛はしたいんだけど。ということは『恋人』という位置が欲しいな、なんて」
「………………分かりました」
吉岡にしてはめずらしく妙に間が長くて、しかも腰を揉んでいた手も離れてしまってどうしたんだろうと肘を突いて振り返ってみると顔をほんのり赤くさせた吉岡が手で口元を覆っていた。
恥ずかしそうに下を向いて俺の視線を避けているようだった。
「なにそれー! めっずらしー! 吉岡照れてんの!? マジで!? 何に反応してそんななんの!?」
うける! とまではさすがに口には出せなかったが思いっきり心の声が弾け飛んでしまった。
照れる吉岡にギロリと睨まれるがまったく怖くない。可愛いとすら思えてしまう俺はきっと吉岡病。
「……佐野さんからそんなこと言われるとは思ってもなかったので……。と言うか、佐野さんキャラ変わってないですか」
「気のせいだろ」
いつも吉岡と話をすると負けた気分になっていたが今はなんだか買った気分。会話に勝ち負けがあるのか分からないけど。
気分よくいると腰を揉んでいた手がやらしい手つきでジャージの上から尻を揉み始めた。
「おい」
「佐野さんにからかわれるのも悪くはないですが仕返ししたくなりますね」
「おいこら」
「さっきまで俺のが入っていたからきっとまだ柔らかいでしょうね」
「おい脱がすなっ」
「ほら、中はまだぬるついてる」
「あっ、この野郎っ」
すばやい動作で下着の中に手を入れて孔へと指を突き入れられた。
恐ろしいほどの動きは俺を青くするに十分だった。今まで散々弄られていたのにもう無理だ。勘弁して欲しい。
起き上がって吉岡の腕を掴むが吉岡は食らいついて指を体に埋め込んだままで出ていこうとはしなかった。
「ああっ、って、おい吉岡っ! 抜けって、もう無理だからっ」
「自分の『恋人』を可愛がりたいのは自然のことかなと思って」
「じゅーぶん! 可愛がられました! 今日は!」
「今日は、ですね」
「……はあ。まぁ、今日は……」
入れられるのは体力を要するが俺だって吉岡の体に触りたいし俺で気持ちよくなって欲しいからこれからもセックスしていきたいし。
まぁ、うん、そういうことだな。
指が抜かれて切なく息を吐いてしまい吉岡に笑われた。
ムカつく。
ずれたパンツとジャージを整えて吉岡に向かって正座をした。
俺の気持ちはきっと吉岡が考えている以上に重たい。なんせ焼き餅焼きのようだから。さらに開き直っているからなお吉岡にはストレートなものをぶつけていくと思われる。
男同士なんて不毛でしかないけど暗いものはないのはやはり若さか。いや、考え込むと深みに嵌ってしまうからの開き直りなのか。
考えてみてもごちゃごちゃとまとまらないのはいつものこと。
クソ真面目な外見の無表情男がいつも俺を見てくれているから、だから俺もそばで見ていたいし、一番近くにいたいなーというのが素直な気持ち。
「これからよろしくお願いします。……翔馬」
呼んでみたかった名前を口にしてみたら目の前にある無表情が一瞬驚いたものになり、そして照れたように笑う吉岡を大切にしていきたいなと年上っぽいことを思ってみた。
書記長さんおしまい
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