生徒会書記長さん

梅鉢

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第五章

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御飯を食べ終え、連れてこられた先は吉岡のベッド。吉岡の匂いがいっぱいのここはドキドキと心臓が落ち着かない。

シャツを割って入り、手を滑らせてくる吉岡の肩を押してストップを掛けるが吉岡の手には力が込められ離れるどころかきつく抱きしめられる。
首筋に顔を埋めてはちゅるちゅると音を立てて舐め始めた。ぞわぞわとするが抵抗が弱いものとなってしまう。
以前に増して強引な吉岡。
体だけの関係に嫌気がしたのに、また戻るのも心が拒否している。いくら好きでもこんな関係は嫌だ。嫌だったから怒りを伝えて、距離を取られて、自分の気持ちに気が付いたのだ。

「やだって、吉岡っ、やめろっ」
「はぁ……トイレじゃないですし、ここならいいんじゃないですか」
「いや、まぁトイレはいやだけど、そういうことじゃなくて……」
「そういうことじゃなくて?」
「……えと、いくら俺がもう怒っていないからって遠慮なさすぎじゃないか」
「遠慮? そうですね、遠慮していたんですね、きっと」
「いや、なんかそういうことじゃなくて……」
「そういうことじゃなくて?」
「……」

会話がかみ合っているようでかみ合っていないような。俺が吉岡に何を伝えたいかはっきり言えないものだから会話も可笑しいものになるのか。
いいあぐねていると顔を上げた吉岡は目を伏せて俺のシャツのボタンを丁寧に外しにかかった。

「会わなければ会いたくなるし、会ってしまえば近寄りたくなる。近寄ってしまえば触りたくなります」

言い終え、伏せていた眼をゆっくりと上げ、俺のそれと絡ませる。真剣な眼差しに釘付けになってしまった。ああ、こいつはいつもこうやって真っ直ぐに俺を見ていた。歪んだものなどなく、ただ真っ直ぐに。

それに吉岡の言っていることはよく分かる。俺もそうだ。吉岡に対しての感情だ。吉岡も俺に対して同じ感情を持っているのか。
それじゃあ吉岡が俺を好きみたいだ。

「……お前、俺を好きなわけ?」
「好き?」

自意識過剰な言葉は、本当に心臓に悪い。これで違っていたら目も当てられないというか立ち直れないというか、ああ、なんでこんなことを言ってしまったんだと即後悔が竜巻のように脳を駆け巡る。
だって吉岡も俺を好きみたいにいうから。熱の篭った瞳で見つめられて頭が“これは好意だ”と勝手に受け取り麻痺してしまったのか。

それなのに吉岡は本当に考え込んでしまったのか艶っぽさの消えた真面目な表情で思案中だ。

「……あまり、というか今まで人を好きになったことがなっ」
「やっぱいい! 深く考えるな。やめろ。俺も適当なこと言っただけだから」

豆腐メンタルなのか嫌な言葉を聞きたくなくて吉岡の口を塞いだ。
会話を途中で止められた吉岡の眉間には皺が寄せられていて珍しくてちょっと嬉しくなるけど、こんなときに喜んでいる場合ではない。
俺は玉砕したくない。だから俺から気持ちを伝える気も更々ない。

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