生徒会書記長さん

梅鉢

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第五章

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あまり会話もなくもそもそと食べていると「肉の量すごいですね」と少し低めの声がした。
見上げるとカードキーを手にした二ノ瀬が後ろから俺を覗き込むようにして立っていた。

「佐野さんってそんなに食べるんですね」
「肉うまいじゃん」
「俺はたんぱく質を補う程度なので肉は鶏肉ばかりです」
「ふーん。食べ物に気を使ってんの? つか、隣座る?」
「いえ、友人が向こうのテーブルで待っているので」
「そっか。じゃあまた放課後に生徒会室で」
「はい。バスケ部の副部長さん、でしたよね。すみません、食事中に話しかけてしまって。では失礼します」
「おー」

俺の友人にもさりげなく気を使える二ノ瀬は出来る子。こういっちゃなんだけど、顔で選んだという南だが役員選びは一番良かったのではないかと思える。他のやつらだって出来るやつらだけど、こうやって気を使えるということはこれからの人生に大きく響いていくんじゃないのか。
渡部の名前は覚えていなくとも、ちゃんとどこの誰だかが分かっていたし。

「今のヤツ、あれだろ、ミスコンに出てたよな」
「そうそう。2位だった。でも二ノ瀬自体は超がつくほどノーマルな感じ」
「すげーもてそう」
「実際もててると思うけど」
「生徒会ってそういうやつらばっかり集まってるよなー。なんか狙われてるわけ?」
「えー全員がそうじゃないし、たまたまじゃねー」

狙ったやつもいるけど。

渡部にしては珍しく、生徒会の話に食いついてきた。

「そういや、なんで1年のとき佐野が補佐に選ばれたんだ? 理由とかあるんだろ?」
「理由ー? 分からないし。いきなり呼び出されて任命書を渡されただけだし」
「何もない訳なさそうなんだけどなー」
「だよな。俺が顧問に何故選ばれたか理由を聞いたら南に『佐野以外は順当。家柄も頭も外見もいい』とか言われた気がする。俺以外ってことは、やっぱり俺がイレギュラーなんだろうな。ということで選ばれた理由は分からない。適当じゃねーの。くじ引きとか」

口下手な俺でも言われなれた嘘をつくどうも饒舌なる。クラスのやつらなんかには散々きかれたセリフだったためすらすらと出てきた。ただずっと仲のよかった渡部は俺が役員に選ばれたときに大笑いしただけだった。あと、まぁ頑張ればとも言われたのか。
だからここにきて興味を持ってるのかただ聞きたいだけなのか、どうしたのだろう。

「くじ引きで役員決められたらダメだろ。でも南の言っていることも確かだよな。みんなそれぞれすべてにおいて上位なんだからさ。生徒会にしては佐野は……頭が平均よりもいいくらい? 」
「まーね……」
「俺よりも頭いいんだから落ち込むことないじゃん」

うるせーと心の中で悪態をつき、残りのカレーをむしゃむしゃと大口開けて食べる。
スパイスの効いたカレーは少しぬるくなってもうまい。
カレーでふやけてしまったカツだってうまい。

「副部長お疲れ様です」

どこかで聞いたハスキーボイスで挨拶をされるが副部長と言われているから俺にじゃない。ただ、その声とは別に嗅ぎ慣れた香りが近くにあった。匂いに敏感なのもやな体質だな。
視線だけを少し横に動かす。「お疲れさん」と声を出す渡部の横に生徒が2人重なるようにいた。顔を上げてしまったら、その生徒2人の顔が見えてしまう。
俺に話しかけられているわけじゃないから少なくなってきたカレーを今度は少しずつゆっくりと咀嚼した。カレーがなくなってしまえば何に集中していいのかが分からなくなってしまうから。

「部長にはメッセージしたんですが今日、所用で部活出るのが遅くなります」
「おー了解」
「では、また部活で」
「おう、じゃーな」

二ノ瀬と違って出来の悪いやつだな。俺に対してもともと態度の悪いやつだったから仕方ないのか。いや、仕方ないじゃねーよ。俺は先輩だ。

「佐野さん」
「っ!」

まさか呼ばれるとは思わなくて、食べていた肉がグッと喉に詰まる。
口に手を押さえてげほげほとムセながら上を見た。さきほどまで白崎という生徒の後ろに重なるようにしていた吉岡は少しずれて俺の斜め前まで来ていた。
咳が止まらず、激しさを増す。吉岡に向けて口を押さえていないほうの手をかざし、ちょっと待ってくれと促す。
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