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第四章
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しおりを挟む始業式も終わり、久々に訪れた生徒会室はやけにひんやりとしていた。まだ誰もきていないようでリモコンを手に取り暖房をつけた。
会いたくない奴がいたって、やはり俺はこの部屋が落ち着くんだな。妙な心地よさがある。
休憩室の冷蔵庫からお茶を取り出して飲みながら机に向かう。
机の上って性格が現れるんだろうか、結構個性が出ている気がする。わりと皆、それぞれに生理整頓されているが、南なんかは無駄に物がないし、本当に仕事しているんだろうかと思わせるくらい小奇麗。松浦なんかも小奇麗なイメージがあるが、打って変わって雑然としていて、書類の束がそろえられずに平積みしてあった。もうどこに何があるのかは本人にしか知らないだろうな。二ノ瀬も松浦に近いものがある。あとは皆同じくらいきれいな机だ。
こういうのにも血液型とか関係するんだろうか。そういえば誰の血液型も知らねえわ。興味もなかったしな。
イスに座ってくるくると回して遊んでいるとドアが開かれた。
「佐野さん」
「おー久しぶりー。今年もよろしくー」
「こちらこそよろしくお願いします」
ニコニコと人好きのする笑顔で二ノ瀬が入ってきた。俺や北村にはわりとこんな笑顔を見せるけど他ではあまり見たことがない。いつもはクールな美人のイメージ。南の前では不機嫌さをモロに出すが美人は迫力があるから結構怖いときがある。
でも、二ノ瀬の笑顔ってば、
「……癒されるわー」
「え?」
「あ、わり、なんでもない」
うっかり声に出してしまっていた。
二ノ瀬がもし女だったらイけるな、俺。俺よりも背が高くても全然あり。俺はかわいい系より美人系が好きだし。
じーっと二ノ瀬を見すぎていたようで、二ノ瀬は苦笑しながら首を傾げていた。また凝視しながら考え事をしてしまう悪い癖が出てしまった。
「悪い、二ノ瀬ってほんと男にしておくの勿体ないくらいだなーって思っててさ」
「はあ……。嬉しくはないですが」
「だよな、ごめん」
「いえ、佐野さんも結構いけるとおもいますよ」
「えー無理無理。俺モロ男だし」
「それを言ったら俺もそうですよ」
まぁ、俺よりもガタイはいいかもしれないけど、顔の作りが全然違うからなー。
ちょっとした疑問、悪戯? が湧き出て二ノ瀬に聞いてみることにした。
「なぁ、もし自分が女だとして役員の奴らと付き合わなきゃならないとしたら誰と付き合う?」
「は? はぁ? 自分が女だったら? 非現実すぎて想像できませんね」
ものすっごい呆れられた視線を向けられ、少し焦ってしまう。単なるくだらないおしゃべりじゃん、とは思うが二ノ瀬ってば冗談があまり通じないんだっけ。
「すまん、たまにクラスのやつらとそーいうくだらない話しをしたりしててさ。いや、忘れてくれ」
「はぁ。佐野さんも変なことを話題にしているんですね」
「う、うう、まぁ……」
顔が女顔だからこんな『もしも』の話にのってくれるかとおもいきや、ぶった切られてしまった。すまん、二ノ瀬。心はやっぱり男だなと1人納得した。
頭を冷やしていると次々と人がやってきた。部屋中で新年の挨拶が飛び交う。南と吉岡の顔は見ることが出来なかった。
「久しぶりにそろったところで今年もよろしく。俺たちはあと半年もしたら退く。1年連中は積極的に仕事するように。以上」
会長として挨拶をすることはあと何回残っているんだろうな、松浦。お前の挨拶が寂しく感じたのは初めてだわ。
「そうそう、俺らももう少しで終わりだし新年会したいね~このメンバーで」
名案が浮かんだとでも言うように表情を明るくさせて手を叩く南だが、誰一人賛同するものがいないのか部屋の中は静まり返ったままだった。
仲良しこよしの関係でもあるまいし、今更新年会とか興味がない。酒も飲めないのにジュースで乾杯ってか。
松浦から回された来年度の予算を決めるに当たっての書類を一枚とって残りの一枚を吉岡に渡した。
「ノリ悪いしー」
ブーブー言う南を見かねて北村が「新年会なんてする仲じゃないだろ、俺たち」と俺とまったく同じコトを考えていたようで笑えた。
てことは南以外は全員同じコトを考えていても不思議じゃないな。いや、南だってきっと仲良くないことは分かっているが、あえての新年会しようということなんだろう。
役員連中が仲良しだったとしても南の発案のイベントはすべてゴメンこうむりたい。
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