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第四章
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しおりを挟む夢見る乙女ならそういった行為は「好きな人とじゃなきゃダメ! 好きな人としか出来ない!」なんて考えるんだろうがあいにく俺は男だ。目の前にかわいい女の子がいて『好きにしていいです』とあったらやってしまうかも。好きじゃなくたって性行為は出来る。
俺に対して多少の好意はあるんだろうと思うが、9割方、俺を都合のいい性欲処理の相手としてでも見ているのか。仕事がらみで一緒にいること多いし部屋も近いし、便利な相手として認識されているのかもしれない。
なるほど、まとまった。もやもやしていたが考えがまとまってスッキリした。
廊下を歩く足取りも軽くなる。
しかし近い存在のヤツが性欲処理の相手としているなら、さっき会ったバスケ部のやつもそうなんだろうか。一般の生徒は迎えに行かないと入られない生徒会専用の寮にもいたくらいだし。学園祭の時だってそうだ。ただのクラスメイトって間柄ではないだろう。
あいつも吉岡と色々しちゃっているんだろうか。キスとか、その先、……セックス?
思わず立ち止まってしまう。
本当に単なる友達の可能性だってある。俺だって北村とは友達だし、2人きりで寝ていたって何も思ったことがないし考えたこともない。北村もきっとそうだろう。だが北村は彼女がいて超ノーマルだ、という前提がある。
吉岡は違う。決して女には見えないガタイの、どこからどう見ても男の俺にまで手を出しちゃう節操の無さを考えると、俺の考えはきっとビンゴだ。バスケ部の男と吉岡の2人はただならぬ関係なんだろう、きっと。
なんかムカつく。
せっかくスッキリとした頭の中だが、また変なもやが掛かる。ついでに苛々も発生した。
校舎を出て寮へと急ぐ。雪は降っていないが風が冷たくて足早に玄関を通り過ぎた。
自室の前までくるとどうしても意識せざるを得ない。だって苛々の元凶の部屋が目の前にあるんだもんなぁ……。
これはもう諦めなければいけないことだ。誰でもない俺が吉岡を補佐として選んでしまったんだ。今こうなっているのは自業自得だと思えば……いや、やっぱり諦めきれん。腹が立つのは腹が立つんだ。俺を性欲処理の一人として扱われていることに!
かと言って、腹が立つからとこのまま吉岡に文句を言いにも行けるメンタルもない。さすがに性的なことを含んでいるため言いにくいし、そこまで気にしていたのかとも思われたくない。吉岡のことで悩んでいるとでも思われたくもない。俺にとっては取るに足らない出来事だと思わせておきたいが、言わないことが吉岡の思惑通りかもしれないと考えるとまた憎たらしくなる。
結局何したってグダグダとしてしまうのか。
部屋に入り、冷たい体を温めようと入浴した。体が温まると心も休まる。湯船につかるのは体にも心にも癒しをくれた。瞼が重くなって眼を閉じてしまったらこのまま眠ってしまいそうなほどだった。眠ってしまう前に上がり、髪を乾かす。
テーブルに置いたスマホのLEDライトが緑色に点滅していた。
ぼさぼさの髪の毛のまま手にするとメッセージが2件入っていた。1件は北村で、もう1件は、
“今寮に帰っていますか? 昼食一緒に食べませんか?”
またしても吉岡からの誘惑だった。俺の胃袋ときたら正直者で、すでに吉岡から俺に対しての餌付けに成功していたのか腹が空き始める。だからといってあんなことがあったしほいほい行くわけにはいかない。あの行為含めてOKしているとも思われたくないから。
他にも相手がいるならそいつとしたらいいし。何も俺じゃなくてもいい話なんだろ。やりたいもの同士がやったらいいってことだ。
“悪いけど先約ある。”と断りのメッセージを返してソファに体を沈ませた。先約なんてないけど。
さっきまで眠たかったのにメッセージを見たら頭が冴えてしまった。なんてことだろう。あのまどろみタイムを楽しみたかったのに。
割と切り替えは早いほうだと思うが、今日はグダグダと考えてしまってダメだ。でもこれくらいなら寝てしまえばスッキリできるはず。昼食を食べたら昼寝をしようと決め、今日の昼食はそうそう頼むことがないデリバリーにした。
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