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第三章
吉岡
しおりを挟む3章13pの吉岡視点
吉岡が部屋にはいってきたときにはいつも通り静まり返っていたが、その奥にあるマットの上では見慣れた行為が行われていた。珍しくもなんともない部屋の景色。
大抵は女であることが多いが、覆い被さっているのがジョウジだったことで組しかれているのは男だと知る。
相も変わらずバカなことをしているものだと思うが慣れてしまった今は何も考えずにその場に溶け込むことができた。
ごつい皮のソファや古びたパイプ椅子まで統一性のないこの部屋の様々な椅子が並べられた一番奥に向かう。
相手が男だからジョウジとリツしか行為に参加していないが、他のやつらも暇潰しで公開レイプを楽しんでいる。吉岡の目の前に座っている男だけは足を揺すってつまらなそうではあるが。
しかしこんな昼間から男を拐ってきたとは、抵抗なく連れて来れたんだろうか。暴れられては目立ってしまうし、そもそも人を拐ってくるのは夜がほとんどであったから珍しいなと思った。
この部屋では何をするわけでもなく酒を呑んでだらだらとすることが多く、その勢いで喧嘩をしに出掛けたり女性に暴行を働いたりするのだ。吉岡としては喧嘩はストレス発散になるために通っていたから暴行には参加したことがなかった。どこの誰かも分からないような女など抱きたくないのが本音だ。
9割方が女、あとの1割弱が男、という割合でこの部屋では暴行が繰り返された。
今日の生贄の顔は吉岡からは見えないが、背格好が若くみえた。
きっとジョウジ好みのキレイな顔の男なんだろうと、眺めながら今までの経験を思い起こした。
組しかれた男が「やめろ!」と大声を出したとき、吉岡は一瞬の間をおいたあと眉を寄せた。
まさか、と思う。こんなところで会うわけがない。
しかし男がこちらを向いたことで声を聞いたときの胸のざわつきは確信に変わった。咄嗟に佐野の名前を呼び、立ち上がった吉岡。呼ばれた佐野は虚ろな表情で視点が定まっていないようだった。
1つ小さく息を吐き、吉岡は佐野に近づいた。佐野の姿を見て間に合ったのだと安堵するが相手はジョウジだ、そう簡単には手放さないだろう。
このまま何事もなかったかのように連れて帰りたかったが無理とわかっている。
……なぜここに佐野が……。
ギリ、と奥歯を噛み締めた。兎に角ジョウジが納得する終わり方が何であるのか様子を見なければならない。
佐野を宥めようと近付くと佐野は吉岡の名を呼んだ。涙を流し、必死に。そんな佐野を見て吉岡は何か自分の中で満たされていくものを感じた。沸々と体が熱くなり、初めて味わう異変に戸惑いで思考が停止してしまうが今はそれどころではないのだと佐野に手を伸ばした。
***
佐野がイくのを誰にも見せないよう唇を塞ぐ。戸惑いのなかに艶の含んだ佐野の声にあてられ、吉岡も気持ちが昂ぶり始めていた。
ジョウジの行為は舐めるだけだと高を括っていたが、佐野がイき、気を失ってしまってからも萎えたモノを口から出そうとはせずに口の中で弄んでいた。多少の満足は得られたはずだ。青白い顔をして眠る佐野の頭を撫でつつ、しつこい愛撫を繰り返すジョウジに冷たい視線を送った。
「おい、もういいだろ。離せ」
萎えたペニスを口から離そうとせず、ジョウジは吉岡と視線を絡ませる。佐野にしたのと同じく、見せつけるように舌先でねっとりとペニスを舐め上げた。
「まだだね。やっぱりケツももらうわ」
下卑た笑顔を向けられ、冷静であるつもりだったが気がつけば拳をジョウジの鼻目掛けて繰り出していた。本気を出していたわけではないので、ジョウジも笑っていた。こめかみに青筋が浮きだってはいたが。一触即発とまではいかないが、二人のの間に不穏な空気が流れる。
リツが「まあまあ」と割って入ろうとしたときにガチャリと静かにドアが開いた。この部屋はチーム内の者なら誰でもいつでも自由に出入りしていた。24時間鍵が掛かっていない。盗られるものもないし鍵なんぞ持ち歩く連中でもなかった。
「む? 翔馬もヤってんの? 珍しー」
呑気な声が部屋に響く。
どんないい女を連れてきても、どれだけ誘っても部屋の奥にあるマットに吉岡が来ることは今まで一度もなかったのだから男が驚くのも無理はなかった。
「へー俺も混ぜてよ」
この部屋の男たちにはなかった朗らかな表情で部屋の奥に足を進める。
吉岡は返事をせずにぐったりしてしまった佐野の衣類を整え始めた。ジョウジは吉岡に殴られたせいで鼻血が出たようで「おあ、口に入ったっおえっ」などと騒ぎながら部屋から出ていってしまった。
「え、なに、終わったの? 俺来たばかりなんだけど」
ヘラヘラと笑いながら近付く男に一瞥した吉岡は「終わりだ」と強い口調で告げた。佐野の身支度を終え、車を呼ぶ。その間、片時も佐野のそばを離れることはしなかった。そんな吉岡の様子をまわりはニヤニヤしながら眺めていた。車の主から連絡が来て佐野を抱えて部屋を去ろうとしたとき「そんなに大事なら首輪でもつけてれや」と声が背中にかかる。少しだけ後ろを振り返り「死ね」と一言告げて扉を閉めた。
end
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