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第三章
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部屋には時々艶っぽい息遣いが漏れるだけで言葉はなかった。お互いに舌を絡めては唇を吸いあった。唇を嬲られながら耳や項を吉岡の冷たい手が何かの意思を持って触られるとどんどん体が熱くなってくる。そもそも飛び出しそうだった心臓もきっと吉岡にはばれている。布団を剥ぎ取られた後、上に乗っかられて抱き合う形でキスをしているのだから。
キスが気持ちよくて、熱くなった体には吉岡の手が気持ちよくてぼんやりとしてしまうが何かもやもやする。
やっとで離れた唇は濡れていてそれがまた恥ずかしくてわざとムッとした表情を向けた。
「……毎度そうだけど、なんかお前が主導権握ってるみたいで嫌なんだけど。俺の方が年上なのに」
「年なんて関係ないですよ。だって佐野さん童貞ですよね」
「ど、ど! おおおお前だって!」
「俺は14のときに卒業しました」
「うそっ!?」
あまりの衝撃に愕然としてしまい、今までのエロかった雰囲気をあっという間に払拭してしまった。はずなのに「残念でしたね」と、いやらしく眼を細めた吉岡はスウェットの裾を割ってわき腹を撫でてきてエロ雰囲気再開だ。
俺はそれどころじゃなくてちょっと待てよと吉岡の手を掴んで止めさせた。掴んだ俺の腕を吉岡は一睨みし、ため息をつきながら体を起こした。
「まだ何か?」
「童貞だからって、なんで俺が組みしかれてんの」
「ダメですか?」
「ダメだろ」
「じゃー俺に入れますか?」
「入れる? 何を? どこに」
「ですよね。じゃー俺主導で」
「ストーップ!」
うんざり、とでも言うように眉間に皺を寄せる吉岡はなかなか見たことがなくてちょっと面白かった。いや、そんなことを思っている場合でもないけど。
眉間の皺を撫でてみたくて手を伸ばそうとしたとき部屋のコールが鳴り響いた。驚いたのは俺だけのようで、吉岡は宙に漂っていた俺の手を取って唇を寄せていた。そりゃ日常の中にあんな部屋でのやり取りを見たり、ストレス発散方法が喧嘩だったりするわけだから何かあっても動じないように作られるわなとちょっと納得。
「早くどけよ」
「え、出るんですか?」
「当たり前だろ」
だらりと力の抜けてしまった吉岡を押しのけベッドから降りた。
歩きながら勃ってしまったモノのポジションをせっせと直すが張り詰めたものは早々には治まってくれそうになかった。でかめのパーカーを羽織るが気になってはやり前のめりになってしまう。仕方ない。
リビングに出てモニターを確認すると北村だった。考え込むように難しい顔で腕組みをしている。
「北村さんですか? 昨日の夜も来られましたよ。体調が悪くて寝ていると伝えましたが。あ、街では俺と偶然出会って、そこで具合が悪くなったことにしているので」
「……そうか。ありがとうな」
「佐野さん、寝た振りしますか? 俺がまた出てもいいし。ソレ、治まってないみたいだし」
ソレ、と指すものが恥ずかしくてとっさに両手で隠したがばれているだけにこの動作も恥を煽るだけだった。お前のせいで、と言ってやろうと思ったけどなんだかそれが吉岡を喜ばせるような気がして言うのを止めた。
「だいぶおさまってきたし、いい。出る」
「そうですか」
ドアを開けると一瞬驚いたように眼が開かれたが、すぐにほっとしたように息を吐く北村がいた。昨日はあの場所で別れてしまっていたから心配していたんだろうな。
「おはよー」
「佐野……」
珍しく北村がもごもごと口を動かしてはっきりしない様子に首を傾げた。俺の保護者でもなんでもないんだし、ましてや俺だって立派な男子高校生だ。確かに危ない目にはあったけどそれもこうやって助かったし北村の気にやむことは一切ない。まぁ、昨日のことはこいつは知らないわけだけれども。
「大丈夫か? まさか体調悪いとは思っていなかったから……残して悪かったな。無理にでも送ればよかった」
「別に急に腹痛くなっただけだから。それに吉岡に会ったからなんともねーよ。北村が気にする必要はないって」
クソ真面目な顔で謝ってくる北村にへらへらと笑って返せば、安心したように眉が下がった。それよりも体がギシギシしてずっと立っていられない。中へ入れよと促せば、北村は素直に入ってきたが靴を脱いだところで身をビクリと震わせて立ち止まってしまった。北村の視線の先を振り返るとそこには腕組みをしながら壁に寄り掛かる吉岡が。
さっきまであれほど吉岡のせいでぐるぐると頭を悩ませたり妙な雰囲気に流されそうになったりしていたというのにすっかり忘れていた。鳥頭って長所でもあり短所でもあるわけだけど、こうも頭から色々抜けてしまうんじゃ俺自身、行く末が心配になってくる。
「おはよう吉岡。泊まったのか?」
そういえば何で吉岡は俺の部屋にいたんだ。それに北村が昨日の夜に来たとき吉岡が対応したといっていたからそれからずっといるのだろうか。予想通り吉岡が「泊まりました」と返していた。北村ですら泊まったことが無いというのに、こいつは。昨日の状況を考えれば仕方の無いことなのかもしれないが当たり前のように俺の部屋にいる吉岡にちょっとムッとする。
キスが気持ちよくて、熱くなった体には吉岡の手が気持ちよくてぼんやりとしてしまうが何かもやもやする。
やっとで離れた唇は濡れていてそれがまた恥ずかしくてわざとムッとした表情を向けた。
「……毎度そうだけど、なんかお前が主導権握ってるみたいで嫌なんだけど。俺の方が年上なのに」
「年なんて関係ないですよ。だって佐野さん童貞ですよね」
「ど、ど! おおおお前だって!」
「俺は14のときに卒業しました」
「うそっ!?」
あまりの衝撃に愕然としてしまい、今までのエロかった雰囲気をあっという間に払拭してしまった。はずなのに「残念でしたね」と、いやらしく眼を細めた吉岡はスウェットの裾を割ってわき腹を撫でてきてエロ雰囲気再開だ。
俺はそれどころじゃなくてちょっと待てよと吉岡の手を掴んで止めさせた。掴んだ俺の腕を吉岡は一睨みし、ため息をつきながら体を起こした。
「まだ何か?」
「童貞だからって、なんで俺が組みしかれてんの」
「ダメですか?」
「ダメだろ」
「じゃー俺に入れますか?」
「入れる? 何を? どこに」
「ですよね。じゃー俺主導で」
「ストーップ!」
うんざり、とでも言うように眉間に皺を寄せる吉岡はなかなか見たことがなくてちょっと面白かった。いや、そんなことを思っている場合でもないけど。
眉間の皺を撫でてみたくて手を伸ばそうとしたとき部屋のコールが鳴り響いた。驚いたのは俺だけのようで、吉岡は宙に漂っていた俺の手を取って唇を寄せていた。そりゃ日常の中にあんな部屋でのやり取りを見たり、ストレス発散方法が喧嘩だったりするわけだから何かあっても動じないように作られるわなとちょっと納得。
「早くどけよ」
「え、出るんですか?」
「当たり前だろ」
だらりと力の抜けてしまった吉岡を押しのけベッドから降りた。
歩きながら勃ってしまったモノのポジションをせっせと直すが張り詰めたものは早々には治まってくれそうになかった。でかめのパーカーを羽織るが気になってはやり前のめりになってしまう。仕方ない。
リビングに出てモニターを確認すると北村だった。考え込むように難しい顔で腕組みをしている。
「北村さんですか? 昨日の夜も来られましたよ。体調が悪くて寝ていると伝えましたが。あ、街では俺と偶然出会って、そこで具合が悪くなったことにしているので」
「……そうか。ありがとうな」
「佐野さん、寝た振りしますか? 俺がまた出てもいいし。ソレ、治まってないみたいだし」
ソレ、と指すものが恥ずかしくてとっさに両手で隠したがばれているだけにこの動作も恥を煽るだけだった。お前のせいで、と言ってやろうと思ったけどなんだかそれが吉岡を喜ばせるような気がして言うのを止めた。
「だいぶおさまってきたし、いい。出る」
「そうですか」
ドアを開けると一瞬驚いたように眼が開かれたが、すぐにほっとしたように息を吐く北村がいた。昨日はあの場所で別れてしまっていたから心配していたんだろうな。
「おはよー」
「佐野……」
珍しく北村がもごもごと口を動かしてはっきりしない様子に首を傾げた。俺の保護者でもなんでもないんだし、ましてや俺だって立派な男子高校生だ。確かに危ない目にはあったけどそれもこうやって助かったし北村の気にやむことは一切ない。まぁ、昨日のことはこいつは知らないわけだけれども。
「大丈夫か? まさか体調悪いとは思っていなかったから……残して悪かったな。無理にでも送ればよかった」
「別に急に腹痛くなっただけだから。それに吉岡に会ったからなんともねーよ。北村が気にする必要はないって」
クソ真面目な顔で謝ってくる北村にへらへらと笑って返せば、安心したように眉が下がった。それよりも体がギシギシしてずっと立っていられない。中へ入れよと促せば、北村は素直に入ってきたが靴を脱いだところで身をビクリと震わせて立ち止まってしまった。北村の視線の先を振り返るとそこには腕組みをしながら壁に寄り掛かる吉岡が。
さっきまであれほど吉岡のせいでぐるぐると頭を悩ませたり妙な雰囲気に流されそうになったりしていたというのにすっかり忘れていた。鳥頭って長所でもあり短所でもあるわけだけど、こうも頭から色々抜けてしまうんじゃ俺自身、行く末が心配になってくる。
「おはよう吉岡。泊まったのか?」
そういえば何で吉岡は俺の部屋にいたんだ。それに北村が昨日の夜に来たとき吉岡が対応したといっていたからそれからずっといるのだろうか。予想通り吉岡が「泊まりました」と返していた。北村ですら泊まったことが無いというのに、こいつは。昨日の状況を考えれば仕方の無いことなのかもしれないが当たり前のように俺の部屋にいる吉岡にちょっとムッとする。
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