生徒会書記長さん

梅鉢

文字の大きさ
上 下
56 / 112
第三章

12

しおりを挟む

路地裏で男達と鉢合わせしてからビルに連れてこられたのは長いような、でもほんの一瞬の出来事だった。

ビル内の廊下は窓があるのに全部に遮光カーテンが付けられているのか隙間からの光だけしかなく薄暗い。それなのに男達はなれたものなのかずんずんと先へ進む。
抱き込まれた体はまったく言うことが聞かず、強張らせるだけしか出来なかった。知らない土地での知らない場所。始めは手でふさがれていた口も何かの布を押し込められ、乱暴なそれに時々えずいては涙目だった。

「ぼくちゃん、着いたよ。ようこそ~」

低くかすれた男の声。
後ろ向きで抱えられていたため、ガチャリとドアが開かれるのを耳だけで捕らえ、中へ連れて行かれる。
部屋に入っても薄暗い。真っ黒な部屋に小さな青い間接照明だけが壁にいくつかあるだけだ。

どこか信じられない気持ちがあった。つれてこられたたはいいがまだ夢かもしれないと、抱き込まれた腕は痛いが本当にこの感覚は現実のものなのかと。意識と体が別物になっている気がしていた。だいたい俺を捕まえてどうしようというのだ。こいつらは「ぼくちゃん」と俺を呼んだから男だと分かっているはずだ。かつあげだったら路地でもできたはずだし、買ったものも興味がないのか捕まえられたときにむしり取られてその場で捨てられた。
こんなところまで連れてきて一体なんだというのだ。

「よいしょー」
「……うっ!」

ぐるぐると思考を巡らせていると体を思い切り投げ飛ばされた。ぐっと眼をつぶって耐えたが、マットのようなものがあって痛みはなかった。マットがなかったら下手したらどこかケガをしていたに違いない力強さと勢いだった。男子高校生を軽く投げ飛ばす力があるって何者だよ。
マットは身じろぐのと同じくボヨボヨと動き、感じたことのないふわふわした感触はちょっと思考を停止させた。だから口を塞いでいた布を取り、ゆっくりと眼を開けて見た世界に驚いてヒュっと息を飲んだ。

そう長い距離でもなかったが、廊下を歩くときも男達はほとんど会話がなかった。そしてこの部屋に入ってきたときも静かだった。それなのに眼を開けるとそこには俺を見下ろしたり覗き込んだりする5人の男がいた。

驚きと得体の知れない恐怖で体が強張る。

「あ、怖がってるし」
「男だし俺はいらねー」
「俺も」

3人が興味なさそうに俺から去ってゆく。残ったのは路地から俺を連れてきた2人。
体を動かそうとするが、このマットは重心部分が沈むように出来ているのかバランスも取りづらい上に俺も体をうまく動かせなくてうまく出来ない。肘と足でなんとか後ずさりするが俺を「ぼくちゃん」と言ってはニヤけるスキンヘッドの男にあっさりと腕を捕らえられた。分かってはいたけど、力強いそれは俺の力じゃ振りほどくなんてことは出来なくて。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...