生徒会書記長さん

梅鉢

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第三章

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苦手な商法や英語のテストも難なく終わり、無事、2年2学期の期末テストが終わった。やれるだけやったし、やっと勉強地獄から開放される喜びが湧き出る。
肩の力がすーっと抜けていくが、肩はガチガチだ。仕事をしていたほうが何倍もましだ。

力を出し切った俺はチャイムが鳴ってもボーっと教室の椅子に座って窓の外を眺めた。曇ってはいるが雨や雪が降るという空ではない。
寒いからすぐに帰ってこよう。
これから下界に行くのになんだか足が重かった。あんなに楽しみにしていたのに。
テストが終わってほっとしすぎているのか、それともこの中途半端な天気のせいなのか。気を抜いたときに風邪をひきやすいから暖かい格好で出かけよう。

「佐野、どうだった?」

いつの間にか、俺の横には松浦が立っていて俺を見下ろしていた。
呆けていた俺を不振に思ったのか、若干眉を寄せた。

「多分大丈夫」
「そうか」
「うん。過去最高になれそうな気がする」

ぼけっとしながらも思ったことを口に出すと松浦は嬉しいのかニィっと笑った。

「今日と明日は仕事も休みだ。ゆっくり羽を伸ばすといいさ」
「へーい」

俺のテストの様子だけが聞きたかったようで、松浦はすぐに帰っていった。入れ替わりで北村が教室にやってきた。俺を迎えに来たのだ。

北村にも同じようにテストの手ごたえを伝えながら寮へと戻っていった。
そこでお礼を言うが、松浦に言うのを忘れてしまっていた。御礼用に購入した洋菓子を持っていくときでもいいかと思い直す。



私服に着替えて北村と玄関で落ち合い、数分前に呼んだタクシーを待つ。

日は出ていないが気分は遠足だ。
初等部のころは遠足がなにより楽しみだったな。
歩いて行くのも、バスで行くのも、社会見学だといって電車で行くのもすべてが楽しかった。

「タクシーで行くってなんか味気ないかな」
「さあ、どうだろうな。バスも近くにあることはあるが」
「バスかー。懐かしい。中等部の時に乗ったっきりだな~」
「俺もだ。施設訪問したとき以来乗っていない。下界行くときはいつもタクシーだしな」
「今日はバスにしておけばよかったなー」

滅多に下界に行こうと思わないし、行きたいと思っても面倒で先延ばしにしてしまうから、なかなか遠足気分を味わうことが出来ない。
小さいボックスで揺られていくのも静かでいいが、やはりわくわく感がなかった。
窓の外の景色は少しずつ拓けてくる。山から平野、そして街へと。

北村も窓の外を見ながら、俺たちは会話もあまりなく目的地に向かった。

駅で降ろしてもらい、駅裏通りへ行く。
駅前と違ってそれほど栄えてはいないがそこにしかないショップが結構並んでいた。
駅裏メイン通りは明るくはあるが、一たび路地に入るとそこはすえた臭いのする古い街があった。
あまりガラのよくない地域とは聞いていたが、まだ時間は早いしメイン通りさえ歩いていれば大丈夫だ。

目当てのショップで北村にも見てもらいながら服を数点購入した。ネットでばかり買っているが、こうやって素材やサイズを確認しながら買うのはやっぱりいいよな。思っていたのと違うということがない。

「北村はどっか寄りたいとこないわけ?」
「いや、特に。ただちょっと小腹が空いたから何か食べたいな」
「だな。じゃー約束どおりジャンクなものにするか」

最近この駅裏通りに出来たというジャンクフード店へ向かう。ショップの紙袋がでかくて邪魔だ。ボコボコと歩くたび足に当たって痛いし。
こういったところがネットショッピングを止められない理由になったりするのだろう。荷物が邪魔すぎる。

店に入って注文をしようとするが、どうやらバンズから中身まですべて好きに注文できるらしい。
よく分からないので一番人気のオススメでと頼んだら、バイトのお姉さんはとびきりの笑顔で受けてくれた。

そうだ、これだよこれ。
普段の俺の生活に足りないものはこのお姉さんの笑顔。というか、女の子成分だよ。
何が悲しくてあんな男だらけの学園に3年も閉じ困らなきゃならんのだ。父親の出身校だと言って幼稚舎から通わされて何の疑問も持たずにココまで来てしまったが、さすがに高等部になれば共学のほうが楽しそうなことにも気づく。
女の子のような男はいても実際には女じゃない。
このふわふわした肌がいいんだよ。柔らかくて、いい匂いがしそうな感じがたまんない。
男のごつい骨組みと違うから肩だって華奢だし。手首だって骨が細いからちょっと力入れて掴んだら折れちゃいそうなくらいだ。男にはないものだ
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