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第三章
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ここ最近の夜には恒例となっているお勉強タイム。
月曜日が北村、水曜日が松浦、金曜日が南と交代で俺の勉強を見てくれるのだ。
発案者は松浦で、生徒会のせいで成績が悪くなったと言われたくないとの思いからだそうだが、俺に拒否権はなかった。
約270人いる2年の中で30番以内なら良いほうだと思えるのだが、松浦たちにしてみればそんなことも言っていられないのかもしれない。
きっと歴代の役員の中でずば抜けてバカの部類なんだろうな、俺。
1週間お勉強タイムをしてみて、一番分かりやすくて優しいのがもちろん北村で、次に松浦。
南は最悪で頭がいいせいか教え方がおかしい。言葉は足りないはイメージしろだの家庭教師には向かないやつだ。そのくせ人を小ばかにするし「俺の1時間は1万ドルに値するのに~」などとぬかすし散々だ。
だから南は除外して欲しいと松浦に頼んだが南もノリノリで俺の勉強をみると言っていたからとこれまた却下された。
ノリノリだから断れないなんて、そんなの俺でストレス解消したいだけなんだから断ってくれてもいいだろうに。
今日は松浦の番だった。
南以外であればなんだっていい。
松浦が用意した数学の文章問題を解いていく。
数字は好きだから数学はわりかし好き。すらすらと解いている間、松浦は公民の教科書に赤ペンで丸をつけていた。
教科書に直接書き込みするのは好きじゃないんだけどなと思いつつも、それは言えなかった。
全問解き終わり、松浦が採点をする。
平行気味の二重に長い睫毛。それなのに顔が濃いわけでもない。
見事にバランスの取れたパーツに顔。
ミスターコン優勝の松浦と二人きりのシチュエーションはきっと金を出してでも欲しい人はたくさんいるんだろうな。
売れるものなら売ってあげたいこの状況。
整った横顔を眺めていると採点が終わったようで用紙を戻された。
「数学は大丈夫だな」
「おお! 20問パーフェクト」
「公民は暗記しろ。教科書に印つけておいたから。とにかく覚えろ」
「はーい」
「次は物理だ」
「まだやるの……」
「まだって、まだ40分しかたってないだろ」
「そうかもしれないけど、松浦だってまだ風呂も入ってないだろ。もう22時過ぎてるし」
「じゃあ宿題出しておく」
「……えー」
松浦だって仕事してきているはずだし、疲れているだろうになぜこんなに元気なのか。
「次のときに公民の簡単なテストするから今回の範囲分覚えておけよ」
「えー」
「じゃあな」
「ありがとーございましたー」
何も持たずに来た松浦だったから、立ち上がるとすぐにドアに向かって歩き出した。
22:30近いし、俺の部屋から松浦が出るところを見たら勘違いしちゃうかもしれないな。
何も考えずに、靴を履いている松浦の背中に「青木はこのこと知ってるの?」と問いかけた。
今まで二人の関係を聞いてこなかったが、なんとなく、聞いてみたくなって。
靴を履き終わって振り向いた松浦は少し楽しそうに唇を引き上げた。
「もちろんだ」
「……そっか」
それ以上は話すこともなく、松浦は何かを窺うように俺を見ていた。
気まずくなって視線を外すと松浦はそのままドアを開けて帰っていった。
とりあえず、青木が俺にやきもちなどを焼かないでくれたらそれでいい。
公民の教科書をめくっていくと今回の範囲が膨大すぎる上に赤丸だらけでめまいがしそうになった。
ここ最近の唯一の癒しが体育の授業だ。
それもA組との合同となると俄然やる気が出た。
南にやり返す絶好のチャンスだからだ。
この日はバスケだった。身長が違うからポジションも違うわけだが、それでも中まで切れ込んで南の前からわざとシュートを決めた。
「チビの癖にジャンプ力は一丁前だよね~」
「平均身長よりも高いわ!」
オフェンスに回った南の尻を蹴った。
すると遠慮なく笛が鳴る。
「佐野ー今の蹴りファウルね」
「えーボール持ってないところまでそんなに注意払うなよ」
「いや、普通だろ」
バスケ部の渡部が審判をしているが、友人のよしみで見逃して欲しい。
というか、そんなに真面目に審判しないで欲しい。たかが体育のゲームじゃないか。
「佐野ってほんと暴力的だよね~花菱さんはなんでこんなのを書記にしたのか不思議~」
いや、ほんと俺もそれは不思議ではあるけどさ。
前書記長の花菱さんはとても優しくて頭のいい人だった。ただどこかフワフワとしていていつも心ここに在らず、といった感じのつかみどころのない人でもあった。
俺をタイプとは言ったけど、俺をどうこうするわけでもなく一緒に仕事をしただけだった。
でも俺を選んでくれたおかげで生徒会特権をもらえたから、花菱さんにはとっても感謝している。
そういう点でいくと、吉岡は俺に感謝していたりするんだろうか。
……それはないな。
1人部屋でも2人部屋でも吉岡は吉岡、そんな感じがする。
月曜日が北村、水曜日が松浦、金曜日が南と交代で俺の勉強を見てくれるのだ。
発案者は松浦で、生徒会のせいで成績が悪くなったと言われたくないとの思いからだそうだが、俺に拒否権はなかった。
約270人いる2年の中で30番以内なら良いほうだと思えるのだが、松浦たちにしてみればそんなことも言っていられないのかもしれない。
きっと歴代の役員の中でずば抜けてバカの部類なんだろうな、俺。
1週間お勉強タイムをしてみて、一番分かりやすくて優しいのがもちろん北村で、次に松浦。
南は最悪で頭がいいせいか教え方がおかしい。言葉は足りないはイメージしろだの家庭教師には向かないやつだ。そのくせ人を小ばかにするし「俺の1時間は1万ドルに値するのに~」などとぬかすし散々だ。
だから南は除外して欲しいと松浦に頼んだが南もノリノリで俺の勉強をみると言っていたからとこれまた却下された。
ノリノリだから断れないなんて、そんなの俺でストレス解消したいだけなんだから断ってくれてもいいだろうに。
今日は松浦の番だった。
南以外であればなんだっていい。
松浦が用意した数学の文章問題を解いていく。
数字は好きだから数学はわりかし好き。すらすらと解いている間、松浦は公民の教科書に赤ペンで丸をつけていた。
教科書に直接書き込みするのは好きじゃないんだけどなと思いつつも、それは言えなかった。
全問解き終わり、松浦が採点をする。
平行気味の二重に長い睫毛。それなのに顔が濃いわけでもない。
見事にバランスの取れたパーツに顔。
ミスターコン優勝の松浦と二人きりのシチュエーションはきっと金を出してでも欲しい人はたくさんいるんだろうな。
売れるものなら売ってあげたいこの状況。
整った横顔を眺めていると採点が終わったようで用紙を戻された。
「数学は大丈夫だな」
「おお! 20問パーフェクト」
「公民は暗記しろ。教科書に印つけておいたから。とにかく覚えろ」
「はーい」
「次は物理だ」
「まだやるの……」
「まだって、まだ40分しかたってないだろ」
「そうかもしれないけど、松浦だってまだ風呂も入ってないだろ。もう22時過ぎてるし」
「じゃあ宿題出しておく」
「……えー」
松浦だって仕事してきているはずだし、疲れているだろうになぜこんなに元気なのか。
「次のときに公民の簡単なテストするから今回の範囲分覚えておけよ」
「えー」
「じゃあな」
「ありがとーございましたー」
何も持たずに来た松浦だったから、立ち上がるとすぐにドアに向かって歩き出した。
22:30近いし、俺の部屋から松浦が出るところを見たら勘違いしちゃうかもしれないな。
何も考えずに、靴を履いている松浦の背中に「青木はこのこと知ってるの?」と問いかけた。
今まで二人の関係を聞いてこなかったが、なんとなく、聞いてみたくなって。
靴を履き終わって振り向いた松浦は少し楽しそうに唇を引き上げた。
「もちろんだ」
「……そっか」
それ以上は話すこともなく、松浦は何かを窺うように俺を見ていた。
気まずくなって視線を外すと松浦はそのままドアを開けて帰っていった。
とりあえず、青木が俺にやきもちなどを焼かないでくれたらそれでいい。
公民の教科書をめくっていくと今回の範囲が膨大すぎる上に赤丸だらけでめまいがしそうになった。
ここ最近の唯一の癒しが体育の授業だ。
それもA組との合同となると俄然やる気が出た。
南にやり返す絶好のチャンスだからだ。
この日はバスケだった。身長が違うからポジションも違うわけだが、それでも中まで切れ込んで南の前からわざとシュートを決めた。
「チビの癖にジャンプ力は一丁前だよね~」
「平均身長よりも高いわ!」
オフェンスに回った南の尻を蹴った。
すると遠慮なく笛が鳴る。
「佐野ー今の蹴りファウルね」
「えーボール持ってないところまでそんなに注意払うなよ」
「いや、普通だろ」
バスケ部の渡部が審判をしているが、友人のよしみで見逃して欲しい。
というか、そんなに真面目に審判しないで欲しい。たかが体育のゲームじゃないか。
「佐野ってほんと暴力的だよね~花菱さんはなんでこんなのを書記にしたのか不思議~」
いや、ほんと俺もそれは不思議ではあるけどさ。
前書記長の花菱さんはとても優しくて頭のいい人だった。ただどこかフワフワとしていていつも心ここに在らず、といった感じのつかみどころのない人でもあった。
俺をタイプとは言ったけど、俺をどうこうするわけでもなく一緒に仕事をしただけだった。
でも俺を選んでくれたおかげで生徒会特権をもらえたから、花菱さんにはとっても感謝している。
そういう点でいくと、吉岡は俺に感謝していたりするんだろうか。
……それはないな。
1人部屋でも2人部屋でも吉岡は吉岡、そんな感じがする。
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