生徒会書記長さん

梅鉢

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第二章

16

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ステージには紙ふぶきがキラキラと舞っている。
ステージと離れた後ろからも輝いて見えた。

そしてステージ上にはこれまた光り輝くような美形達が4人、大歓声の中表彰を受けている。

ミスターに松浦。準ミスターに南。
逆転される形となったが差はたったの4票だったから俺が南に入れていたら南はミスターになっていたことだろう。ザマーミロだ。
悔しさを隠すことなく来年こそはと意気込んでいた南は、一部の生徒達を煽りまくっていた。

そしてミスに3年の前副会長の能登さんが。準ミスにそのまま二ノ瀬がおさまった。
南以外はもう制服のままだ。さっきのアピールタイムは女装していたはずだったし、二ノ瀬の女装姿を一目見たかったなと少し残念に思う。

前副会長は顔も確かに良いかもしれないが、二ノ瀬よりは華がない。纏う雰囲気が穏やかなもので誰にでも優しい人。だからこの人は去年も他の綺麗どころやかわいこちゃん達を寄せ付けず1位となっていた。
人柄が容姿にも出ている、そんな人だった。俺も1年のときは大変世話になった人だ。

二ノ瀬は2位でほっとしているようだったが、来年はもう能登さんがいないからお前が1位になる確率が高いんだぞと伝えてあげたい。

しかし、この結果は俺にとっても納得のいくものだった。

そしてこれでメインイベントも終わる。時刻も19時40分だ。

「そろそろ戻りますか」
「そうするか」

あのキスを事故とも思えないし、どう処理したらいいかわからなくなったが、たかがキスなんだろう。
俺は男だし泣くようなことでもない。
だから蚊に刺された程度に変換しておく。

それでいいんだろう? 吉岡。




モニタールームに戻ると北村が片づけをしていた。
俺が食べたゴミなんかも一まとめにしてくれていて。

「ありがとー」
「ああ、そろそろ生徒会室戻るぞ」
「はぁーまだ帰られない……」
「来年の学祭は何も気にせずに楽しんだらいいさ」
「そうだな」

廊下を歩いているとき、また南の声で学祭終了の放送が流れた。ちゃっかり、2位だった恨み節と来年は1位にしろと脅迫めいた言葉つきで。
ふてえ野郎だ。
職権乱用じゃないのか、コレは。

隣で歩く北村も苦笑している。

「南って、来年もミスターにはなれないだろうなー」
「そうだな。俺もそう思うわ」

同じことを思っていて笑えた。

1棟の踊り場に出て3棟へと向かおうとすると男にしては高めのハスキーボイスで「翔馬!」と後ろから聞こえた。俺は翔馬なんて名前ではなかったが思わず振り向いてしまった。
俺の後ろにいた吉岡“翔馬”はすでに振り向いていて茶色の髪の毛の男が近寄ってきていた。つんつんとした髪の毛に似合う声質に、垂れた大きな眼。

「学祭終わったしやっと一緒にいれる?」
「いや、まだ。これから生徒会室に行く」
「またー!? なんでそんなにお前みたいな1年まで仕事させるわけ!? 先輩達は何してるんだよ~」

俺達の存在を分かっているだろう男に、そんなでかい声で話さなくても十分聞こえると伝えたいくらいで。

「いや、先輩達は俺達1年以上に仕事量あるから。俺達はほとんど雑用しかしていない」
「だからって。もう20時だぞ? 今日はもうよくないか!?」
「今日は学祭でイベントなんだ。こんな日はどうしたって遅くなるだろう」

歩き出そうとした吉岡に男は腕を絡め、“行かせない”と主張しているようだった。
男の勝手な言い草に腹も立って言い返したくもなるが、それを悟ったかのように北村に腕を引っ張られ、無言で「行くぞ」と促された。吉岡は俺達をかばっていたが俺もその場にいたくなくて早歩きで生徒会室に向かった。

3棟に入り、階段を上る。
俺達の後ろを歩くのは青木だけで吉岡はまだ追いついていない。むしろあそこから動いていなくてこっちには向かっていないかもしれない。

「……今の男だな」
「何が?」
「いや、昼間のあの技術室での……」
「技術室?」

北村が含みをもつ言い方をするから気になるが、当の本人は口を紡いでしまっている。

「多分当たりです。うるさいから目立つんですよ、あいつ。1年の中じゃあ」

後ろからまったく聞きなれていない、いや、まさか青木からこんなにも長い言葉を発せられることにも驚いてしまって、言葉の内容なんてものは理解していなかった。北村が「そうか」とつぶやいてこの話は誰もしなかったが、そこでようやく気がついた。
茶色い頭、技術室、吉岡が助けに行った。
あいつが襲われていたのか。

まぁ、生意気そうだったし。
でもそれが襲っていい理由にもなりはしないけど。

あんな生意気な男をあんな顔して助けに行ったのか。どんな関係かは知らないけどずいぶんと仲がよさそうだった。
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