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第二章
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しおりを挟むあさってに学園祭をひかえ、準備に慌しくなってきた。放課後の生徒達も大会が近い一部の部活のやつら以外の生徒は学園祭準備に追われている。
衣装作りで被服室は連日ごった返しているし、調理室もいつになく賑やかである。
チケットを売りさばく生徒も見かけるようになった。前売り券はちょっと安くなるから出来れば買っておきたいけど、確実に行けるかといわれれば怪しいから迷ってしまう。
北村と並んで生徒会室に向かう。
渡り廊下を通って3棟へ行く途中、こちらをチラチラ伺いながらもじもじとしている生徒が2人いた。学年章の色が3年だった。
1人はチケットを持っていて、一人は集金袋なのかでかいがま口を首にぶら下げている。
二人とも決してかわいいとは言えない風貌で、しかしもじもじとしていて薄気味悪い。
知っている奴でもないのでそのまま2人の前を通り過ぎようとすると、やっとそこで「あのっ」と声が掛けられた。
北村が真面目に「なんですか?」と返すが、俺は無言で振り向き、無意識で北村の影に隠れた。
頬を赤らめて北村を見上げるが、どうしてそれほど男にときめかれるのかまったく不思議。
「あの、俺たち学祭でクレープ屋をするんですが、チ、チケットどうですか?」
「ああ、クレープのチケ。俺はいらないです。佐野は?」
「いらね」
「そ、そうですか。すみません、お時間をいただいて。当日も買えるので、ぜひ」
「はい、お疲れ様です」
クレープ。
行きたかった模擬店の一つだったが、なんだかあいつらと会いたくないから行かないことに決めた。
だいたい年下の俺たちになぜ敬語なのか。2人の挙動不審も手伝って、不信感しかなかった。
俺はそれほど人見知りもしないけど、知らない奴とは必要以上にしゃべりもしない。今までに何度か連れ去られようとしたことなどがあったせいだろうけど、本能が“無理”と感じた人間はどうしても無理なのだ。
3棟に入ると急激に人の気配がなくなる。
そこでちょっとほっと息を吐いた。
「そういや北村んとこなにやんの?」
「コスプレ写真館」
「ああ、それ北村のクラスなんだ」
「コスプレが趣味のやつらがいっぱいいたみたいで、知らない間に決まっていたんだ」
知らない間に決まっていたとか、俺と一緒で笑えた。
でも隣のクラスだったら安心だ。
「どんな衣装があるんだ?」
「え、佐野、興味あるの?」
「まあ、ちょっと」
あまりにも北村が驚くものだから、俺は変なことでも言っている気がしてくる。
「気ぐるみとか着てみたいじゃん」
「ああ、もふもふ?」
「もふもふ」
「気ぐるみもあるけど、肉襦袢もあったはず。でも女物とゲームものが多いって言っていたけど。あと特撮か」
「結構本格的だな。割引とかないの?」
「あるよ、ちょっと待って」
北村は立ち止まり、かばんの中から財布を取り出した。
長財布の札入れから小さな赤い紙を数枚取っては俺に寄こした。
「これ、割引券。クラスの奴らに1人3枚ずつ配られたんだけど俺いらないから」
「おおー。半額割引じゃないですか。衣装1枚につき写真1枚のセットで1000円、のこの券で半額ね。サンキュー」
「ヘアメイクもプロを頼んでいるらしいし、写真も写真部が張り切っているから、それなりにまともらしいぞ」
「お前のクラスはやる気まんまんだな。うちと違って」
「佐野のとこなんだっけ」
「サッカーワールドカップ垂れ流し。しかも予選から」
「ああ、そうだった」
やはり苦笑せずにはいられない。このやる気の違いもクラスの色だ。
良いも悪いもない。
そういえば当日は吉岡と一緒だが、吉岡はコスプレとかするだろうか。
絶対しなだろうれけど、誘ってみて反応を見るのも楽しそうだ。
焦ることもなさそうだが、嫌そうな顔はれられるかな。
「カナタなんてノリノリでさ、コスプレしたまま見回りするなんて言っていたな」
「そんなんで動けるのか?」
「動きやすい服装は選ぶと思うけどな。でもみんな喜ぶんじゃないのか。カナタのコスプレ見れて」
「好きな人にはたまらないだろうな」
あいつなら何を着ても似合うことだろう。うらやましいかぎりだ。
俺と吉岡で1枚ずつとして、まぁ吉岡はしないだろうけど一応とっておいて、あと一枚ある。
渡部あたりにでもあげようかな。
あいつもノリがいいほうだから、喜ぶかもしれない。
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