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第二章
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朝、肌寒さに眼が覚めた。薄掛けの毛布がベッドから落ちていて俺には何もかかっていなかった。
そろそろ寒くなってくるから、毛布も一枚くらい出しておこうかな。落ちてしまえば元も子もないけど。
教室に行くまでの道のり、時々好奇の視線が刺さった。なんだろうと思っていると途中で会った渡部に「やるねーお前」と薄気味悪い笑顔で言われた。
挨拶も抜きにいきなりなんだんだ。
「何がよ」
「噂なってんぞ、副会長と書記長の密会」
「密会!?」
「実は付き合っているけど隠していたとか。浮気性な副会長に健気な書記長、とも」
「うわー……」
噂はたった一晩で尾ひれ羽ひれにとんでもないことになっていた。
ただ一緒に食堂でメシを食べただけなのに何でそんな噂が。確かに南は俺で遊んでいたが、そこからどうやってそんな噂に飛躍するんだ。
「なんであんな性悪と付き合わなきゃらなんのだ。だいたい俺が健気って時点で俺が好きみたいじゃないか」
「あーこの噂やっぱ違うの?」
「当たり前だろ! そもそも南の部屋にも行ったことねえし遊んだこともねーよ!」
「言われてみれば一緒にいるとこ見たことねーしなぁ」
「もし誰かにそれ聞かれたら全否定しておいてくれ」
「りょーかーい」
朝から疲れる。げんなりとしてしながら席に着くと、ある疑問がわいた。
「そういや、今までだって南は寝た相手と食堂にいてもそれほど噂にならなかったのに、俺と噂になったのはなんでだ?」
隣に座る渡部に聞けば、渡部は情けない顔で首を傾げた。
「まぁ、生徒会って時点でね、妄想しちゃうんじゃね。あ、あとお似合いだっても言ってたな、みんな」
「お、……」
お似合い……。
南に弄られている俺がお似合いなのか。
思ったよりも面倒くさいことになってしまったから、スマホを取り出して急いで南にメッセージを送る。
元凶はあいつだから、責任も取ってもらわないと。
“俺がお前と密会していて健気な俺は浮気性のお前とお付き合いしているとかわけのわかんないことになっているから噂大好きスピーカータイプの生徒を捕まえてとりあえず全否定しろ”
句読点を打つもの面倒くさく、一気に書いて送信。
この学年にも何人か噂好きの顔面スピーカーがいる。奴らにこの噂を全否定しておけば瞬く間にそれも広がることだろう。
人の噂も75日というが、そんなに待っていられないし、いつ南の過激なファン達に殺されるかも分からない。
とりあえず、このクラスでも数名が俺をチラチラ気にしているからそいつらだけでも否定しておくか。面倒くさいわほんと。
手の中にあったスマホが震えた。南からの返事だった。“りょーかい♪”の文字とともに、薄気味の悪いスタンプも一緒に。
いざとなったら出来る男、南だ。大丈夫だろう。
その日1日は周りの視線が落ち着かなく、生徒会に行けばまた何かあると悪いから初めてさぼった。
忙しいことは忙しいが、俺が一日くらいいなくとも吉岡ならなんとかなれるはず。他も仕事の出来るやつばかりだし。
次の日になると早くもいくらか治まっていた気がした。噂は否定されたのか?
こんなに早く治まるとは思わなくて1人ほくそ笑んだ。
それなのに、朝のSHR前に息を切らした北村が俺に駆け寄ってきた。
「おい、佐野! お前カナタと…!」
「おそーい!」
「え、遅い!?」
情報が遅すぎるわ北村よ。
教室で南のことを口にするのもはばかられて、無言で驚いている北村の腕をとって廊下へと出た。
一昨日の夜、食堂であったことと昨日の噂話を簡単にだが説明した。
「やっぱりそんなところか。驚いたんだ、まさかカナタが佐野に手を出しているとはと思って」
「出されてもいないし、それどころかバカにされまくってんだけど」
「ああ、まあね。でも対象じゃなくても、佐野を構うってことはそれなりに気に入っているってことなんだけどね」
「南に気に入られてもあまり嬉しくないし」
「佐野に対しては結構遠慮ないからね」
苦笑しながらも納得してくれた北村にホッとする。しかし治まっていたと思っていた噂が、未だに拡散しているのは困る。
北村にも全否定をお願いして教室に戻った。
そろそろ寒くなってくるから、毛布も一枚くらい出しておこうかな。落ちてしまえば元も子もないけど。
教室に行くまでの道のり、時々好奇の視線が刺さった。なんだろうと思っていると途中で会った渡部に「やるねーお前」と薄気味悪い笑顔で言われた。
挨拶も抜きにいきなりなんだんだ。
「何がよ」
「噂なってんぞ、副会長と書記長の密会」
「密会!?」
「実は付き合っているけど隠していたとか。浮気性な副会長に健気な書記長、とも」
「うわー……」
噂はたった一晩で尾ひれ羽ひれにとんでもないことになっていた。
ただ一緒に食堂でメシを食べただけなのに何でそんな噂が。確かに南は俺で遊んでいたが、そこからどうやってそんな噂に飛躍するんだ。
「なんであんな性悪と付き合わなきゃらなんのだ。だいたい俺が健気って時点で俺が好きみたいじゃないか」
「あーこの噂やっぱ違うの?」
「当たり前だろ! そもそも南の部屋にも行ったことねえし遊んだこともねーよ!」
「言われてみれば一緒にいるとこ見たことねーしなぁ」
「もし誰かにそれ聞かれたら全否定しておいてくれ」
「りょーかーい」
朝から疲れる。げんなりとしてしながら席に着くと、ある疑問がわいた。
「そういや、今までだって南は寝た相手と食堂にいてもそれほど噂にならなかったのに、俺と噂になったのはなんでだ?」
隣に座る渡部に聞けば、渡部は情けない顔で首を傾げた。
「まぁ、生徒会って時点でね、妄想しちゃうんじゃね。あ、あとお似合いだっても言ってたな、みんな」
「お、……」
お似合い……。
南に弄られている俺がお似合いなのか。
思ったよりも面倒くさいことになってしまったから、スマホを取り出して急いで南にメッセージを送る。
元凶はあいつだから、責任も取ってもらわないと。
“俺がお前と密会していて健気な俺は浮気性のお前とお付き合いしているとかわけのわかんないことになっているから噂大好きスピーカータイプの生徒を捕まえてとりあえず全否定しろ”
句読点を打つもの面倒くさく、一気に書いて送信。
この学年にも何人か噂好きの顔面スピーカーがいる。奴らにこの噂を全否定しておけば瞬く間にそれも広がることだろう。
人の噂も75日というが、そんなに待っていられないし、いつ南の過激なファン達に殺されるかも分からない。
とりあえず、このクラスでも数名が俺をチラチラ気にしているからそいつらだけでも否定しておくか。面倒くさいわほんと。
手の中にあったスマホが震えた。南からの返事だった。“りょーかい♪”の文字とともに、薄気味の悪いスタンプも一緒に。
いざとなったら出来る男、南だ。大丈夫だろう。
その日1日は周りの視線が落ち着かなく、生徒会に行けばまた何かあると悪いから初めてさぼった。
忙しいことは忙しいが、俺が一日くらいいなくとも吉岡ならなんとかなれるはず。他も仕事の出来るやつばかりだし。
次の日になると早くもいくらか治まっていた気がした。噂は否定されたのか?
こんなに早く治まるとは思わなくて1人ほくそ笑んだ。
それなのに、朝のSHR前に息を切らした北村が俺に駆け寄ってきた。
「おい、佐野! お前カナタと…!」
「おそーい!」
「え、遅い!?」
情報が遅すぎるわ北村よ。
教室で南のことを口にするのもはばかられて、無言で驚いている北村の腕をとって廊下へと出た。
一昨日の夜、食堂であったことと昨日の噂話を簡単にだが説明した。
「やっぱりそんなところか。驚いたんだ、まさかカナタが佐野に手を出しているとはと思って」
「出されてもいないし、それどころかバカにされまくってんだけど」
「ああ、まあね。でも対象じゃなくても、佐野を構うってことはそれなりに気に入っているってことなんだけどね」
「南に気に入られてもあまり嬉しくないし」
「佐野に対しては結構遠慮ないからね」
苦笑しながらも納得してくれた北村にホッとする。しかし治まっていたと思っていた噂が、未だに拡散しているのは困る。
北村にも全否定をお願いして教室に戻った。
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