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第一章
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そういえば吉岡は唇の端を切っていたり痣を作っていたりしていた。アレは喧嘩によって作られた傷なんだろうか。
だとしたら本人が“強い”と言い切れるのはこの外見にして場慣れでもしているんだろうか。
本当に人は見かけによらないものだ。
「分かったよ。吉岡とこんなときに喧嘩している場合じゃないし」
右手をヒラヒラと振り、前を向きなおした。歩き出そうとしたとき、その右手を力強く掴まれて後ろに思い切り引っ張られた。あまりの強引さによろけてしまい、そしてよろけた先には吉岡がいた。
俺がぶつかってもびくともしないのは、俺が思っている以上にやはり強かったり、体幹がしっかりしていたりするんだろう。
いったいどうしたんだよと驚いて吉岡を見上げれば、すぐ近くにあの切れ長の瞳が俺を不機嫌に見下ろしていて。しかもなんかいい匂いするし。
眼鏡の銀色がやっぱりこの人を余計に冷たく見せている。
「もう少し、自覚しておいて欲しいです。狩られる側の人間だってことを」
狩られる?
「何言って……。とにかく、離せっ」
掴まれた右腕を引くと、それはあっさりと解放された。
結構強い力で掴まれていたから、少し痛い。
右腕をさすりながら吉岡を睨むが、吉岡はあの不機嫌さがなくなっていていつもの涼しい表情で窓の外を見ていた。
こんなことしておいて眼も合わせないことにも頭に来る。
腹がたって仕方ない俺は今度こそ出口に向かって大股で歩き出した。
どうせ今日は1人で行動しちゃダメとかうるさく言われるのなら、吉岡じゃなくて二ノ瀬といるほうが100倍マシ。
そんなことを考えていると、俺の思考を読んだかのように吉岡が「今日一日、俺が補佐をしますので」と悪魔の囁きが聞こえ、聞こえなかったように出来ないだろうかと返事をせずに歩き続けた。
本部にもどると北村、青木、田口の3人がいなかった。
松浦は足と腕を組んで偉そうにふんぞり返っているし、南はPC画面に夢中、二ノ瀬は競技中のグラウンドを眺めていた。
「ただいまー。去年よりも負傷者多いけど保健委員が来たからなんとかなりそうだった。けが人もだいぶはけていたわ」
「お疲れさん」
1列目には松浦と南、そして3列目に二ノ瀬。俺は2列目に座っていたから当然同じ場所に座ったが、二ノ瀬と同じく3列目にいた吉岡は俺の横、北村の席に座りやがった。
こいつ、俺の補佐をするとかいいつつ、監視しているだけなんじゃ……。
それに気がついた南が後ろを振り向いて俺と吉岡を交互に見やる。表情を変えずに「ふ~ん」とつぶやいてから、また画面に首を戻して。
面倒だから何も言わないでおこう。
南に何かを言っても返されるだけだし、俺のストレスがたまるだけだ。まず口で勝ったためしがない。
「そういや他の3人どこに行ったんだ?」
「柔剣道場裏と校門の同時2箇所から喧嘩があったらしく風紀からのSOSだ」
「同時に来たのか……」
「とりあえず、柔剣道場裏の人が足りないようだったから、3人ともそっちに行ってもらっている」
こんなところに偉そうに足や腕なんか組んでいないで、松浦が行けば一番手っ取り早く解決できるんじゃないかと思えるが、現状把握のために会長様と副会長様はずっとここで待機なんだもんな。ちょっとうらやましいわ。
しかしよかった。喧嘩騒ぎは好きじゃないから、ちょうどいいときに保健室に行けて。
だとしたら本人が“強い”と言い切れるのはこの外見にして場慣れでもしているんだろうか。
本当に人は見かけによらないものだ。
「分かったよ。吉岡とこんなときに喧嘩している場合じゃないし」
右手をヒラヒラと振り、前を向きなおした。歩き出そうとしたとき、その右手を力強く掴まれて後ろに思い切り引っ張られた。あまりの強引さによろけてしまい、そしてよろけた先には吉岡がいた。
俺がぶつかってもびくともしないのは、俺が思っている以上にやはり強かったり、体幹がしっかりしていたりするんだろう。
いったいどうしたんだよと驚いて吉岡を見上げれば、すぐ近くにあの切れ長の瞳が俺を不機嫌に見下ろしていて。しかもなんかいい匂いするし。
眼鏡の銀色がやっぱりこの人を余計に冷たく見せている。
「もう少し、自覚しておいて欲しいです。狩られる側の人間だってことを」
狩られる?
「何言って……。とにかく、離せっ」
掴まれた右腕を引くと、それはあっさりと解放された。
結構強い力で掴まれていたから、少し痛い。
右腕をさすりながら吉岡を睨むが、吉岡はあの不機嫌さがなくなっていていつもの涼しい表情で窓の外を見ていた。
こんなことしておいて眼も合わせないことにも頭に来る。
腹がたって仕方ない俺は今度こそ出口に向かって大股で歩き出した。
どうせ今日は1人で行動しちゃダメとかうるさく言われるのなら、吉岡じゃなくて二ノ瀬といるほうが100倍マシ。
そんなことを考えていると、俺の思考を読んだかのように吉岡が「今日一日、俺が補佐をしますので」と悪魔の囁きが聞こえ、聞こえなかったように出来ないだろうかと返事をせずに歩き続けた。
本部にもどると北村、青木、田口の3人がいなかった。
松浦は足と腕を組んで偉そうにふんぞり返っているし、南はPC画面に夢中、二ノ瀬は競技中のグラウンドを眺めていた。
「ただいまー。去年よりも負傷者多いけど保健委員が来たからなんとかなりそうだった。けが人もだいぶはけていたわ」
「お疲れさん」
1列目には松浦と南、そして3列目に二ノ瀬。俺は2列目に座っていたから当然同じ場所に座ったが、二ノ瀬と同じく3列目にいた吉岡は俺の横、北村の席に座りやがった。
こいつ、俺の補佐をするとかいいつつ、監視しているだけなんじゃ……。
それに気がついた南が後ろを振り向いて俺と吉岡を交互に見やる。表情を変えずに「ふ~ん」とつぶやいてから、また画面に首を戻して。
面倒だから何も言わないでおこう。
南に何かを言っても返されるだけだし、俺のストレスがたまるだけだ。まず口で勝ったためしがない。
「そういや他の3人どこに行ったんだ?」
「柔剣道場裏と校門の同時2箇所から喧嘩があったらしく風紀からのSOSだ」
「同時に来たのか……」
「とりあえず、柔剣道場裏の人が足りないようだったから、3人ともそっちに行ってもらっている」
こんなところに偉そうに足や腕なんか組んでいないで、松浦が行けば一番手っ取り早く解決できるんじゃないかと思えるが、現状把握のために会長様と副会長様はずっとここで待機なんだもんな。ちょっとうらやましいわ。
しかしよかった。喧嘩騒ぎは好きじゃないから、ちょうどいいときに保健室に行けて。
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