生徒会書記長さん

梅鉢

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第一章

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南の前に置かれたノートPCからピーっと警告音が鳴る。
画面に映し出されている学園の地図に赤い点が点滅していた。
頬杖をついた南が赤い点をクリックすると“保健室”と表示が出た。

「こりゃ怪我人の手当てだな。実行委員の救護班じゃ足りないならとりあえず保健委員全員呼び出しかな~」

その言葉に松浦がマイクを取って、保健委員を保健室に呼び出す。
そして後ろにいる俺たちに振り返った。

「誰かちょっと見てきてくれ」
「はい」
「2人いるなら俺も行きます」

真面目な田口と二ノ瀬が席を立つが、2人を制して俺が立ち上がった。

「俺1人で行くよ。けが人の確認だし」

保健室なら冷暖房ばっちり完備だし、俺が行ってもいいなーなんて思って。要は楽をしたいのだ。この先呼ばれるかもしれない暴力沙汰や炎天下の準備などにはどうしても行きたくないのだ。
田口みたいにごついのは暴力沙汰にもってこいじゃないか。こんな確認ごときで田口を使うなんて勿体ない。

「佐野は1人で行動するな」
「は?」

椅子を長テーブルに閉まっていると、松浦が椅子の背もたれに腕を掛けながら呆れた顔を向けてくる。
何故1人で行動しては駄目なのか、去年は確かに前書記と一緒に行動したけれども、去年のを見ているからだいたい把握できている。眉間に皺をよせて「何で」と聞くとため息が返ってきた。
一々腹の立つやつだ。

「団体戦のあとで殺気立っている奴らあちこちにウジャウジャいるのに、ってことでしょ。ちょっとは考えなよね」

画面に顔を向けたままの南が言った。こいつもこいつでいつもバカにしてくるからムカつく。今も絶対バカにしていた。

「佐野さん1人が駄目なら俺も行きます」

なんだか雰囲気が悪くなっていたころに、二ノ瀬がもう一度立ち上がった。
こいつは本当に気の使うやつだな。でもありがたい。
「じゃあ一緒に」と、最後まで言い切らないうちに「俺が行く」という言葉が被さった。

「俺、書記なんで。書記長補佐しておきます」

松浦に対してそう言い、席を立った吉岡は俺を見ることなく、前を進んだ。
この場合の書記だの何だのはあまり関係がないと思うけど。

「吉岡、佐野をよろしくな」

松浦も、なんで俺が足手まといみたいな言い方をするかね。
だいたい何かあっても逃げ足ならこの学園のトップ3には入るっているし。

「ありがとな、二ノ瀬」

立ちすくんでいる二ノ瀬に礼を言って吉岡のあとに続いた。

あの綺麗な背筋は見ていても飽きない。だから吉岡に追い付いてもやつの背中を見ていたくて、ゆっくりと俺を待つかのように歩いていた吉岡と同じペースで歩いた。

それに、俺はなんだか足取りが軽い。嬉しいのかもしれない。吉岡も俺を気遣っているのが嬉しいのだ。
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