生徒会書記長さん

梅鉢

文字の大きさ
上 下
15 / 112
第一章

13

しおりを挟む
体育祭当日、見事な秋晴れ。
「日ごろの行いがいいせいだ」と背伸びをしながら言う南に全員が呆れたように小さく息を吐いた。

この日の俺たちは“なんでも屋”なため、全員が本部席に待機している。基本、競技には出る。しかしそれ以外は警備をしている風紀に呼ばれれば行くし、準備をしている陣営が足りなければ実行委員のところに行く。会長の松浦と副会長の南の二人以外はとにかく呼ばれたら行かなければならない。

去年は揉め事が結構あった。勝負事に殺気だった奴等がゴロゴロいたせいだ。
前書記長についていっただけで俺が何かを解決などしてはいないが、あちこち走り回った気がする。

生徒達は炎天下の中グラウンド周辺にある桜の木の下に椅子を置き、木陰で涼みながら参加している。俺たちはスポットクーラー数台と扇風機を置き、テント内が涼しくなるようにしていた。
だからテント下でのんびりとお茶を飲みながらだらだらしている俺は、必要以上に問題を起こさないでくれと懇願するばかりだ。
そもそもこんな暑い日に競技にだって出たくないのに、警備や準備なんてしたくない。こんなことを思うのは贅沢で、役員の風上にも置けないかもしれないが本音だった。

基本は各クラス対抗戦で、1クラスが1つのチームである。しかし学年対抗の団体戦もある。その場合の点数は勝った学年の全クラスが同じ点数をもらえる仕組みで、団体戦だからかなりの高得点をもらえた。
だからいつも団体戦は血の気の多いものが集まり、そして問題が起こっていた。
こんな男ばかりの閉鎖空間でエネルギーを発散する場なんてないに等しい。南みたいな特殊な人間は常に発散できているが、全うな奴らはこんなときにしか発散できない。
いつの時代も問題視されていたようだが、生徒達からは絶大な人気を誇っていた。

俺は徒競走とリレーのみと、走るだけのシンプルなものにしか出ない。団体戦なんて恐ろしいものには絶対に出ないと決めている。周りも「佐野は出るな」と薦めてはこなかったからラッキーだった。

この団体戦は物取り合戦で、2学年対抗で行って各学年が総当りする。向かいあうように1列に並び、その真ん中にタイヤ30個を1列に置いてそのタイヤを自分の陣地に多く持って帰った方が勝ちの単純なものであった。

この団体戦が始まるとケガ人が続出する。両手でタイヤを掴むから、大抵は蹴りを食らわせて相手の手を離させるといったものが多い。だから一番立場が弱い1年にケガ人が一番多く、2年が二番目に多い。3年はほとんど無傷だった。
たちの悪いものだとスパイクなどを用意していたから流血も避けられないでいた。
競技の間の怒号もこの競技の醍醐味かもしれない。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...