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第一章
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しおりを挟む一人部屋になってからも1年が過ぎた。相部屋が長すぎて麻痺していたが1人は快適だとしみじみ思った。
書記が務まるかどうかなんては考えず、なんとかなるだろう、そんな程度しか考えず1人部屋ほしさに引き受けた。
裸でウロウロしても誰に気を使うこともないし、やりたいときに好きなだけエロ動画を鑑賞してオナニーも出来る。
前書記長には感謝したものだった。
しかし成績上位の奴らにやっかまれることが度々あって一時期は辟易したこともあった。ただそのかわり球技大会(主にドッヂボール)でやり返し、全員黙らせてやった。
寮の部屋に戻って着替えもせずにベッドにダイブした。
勉強をしなければならないと思う反面、勉強なんて嫌いだから見たくもないといじけている自分がいた。さきほど会議室でバカにされたのが大きかったかもしれない。
南は隣のクラスで合同体育の時間にやり返せるから、そのときまでの我慢、そう考えながら目を閉じた。
とりあえず、明日は仕事がない。勉強してなんとか20位以内に入らないと親に怒られてしまう。期末テストは全部で5日間と長丁場だ。コース選びに失敗したせいで専門科目が多すぎて、15教科もテストがある。得意なものはそのままでもいいから少しでも苦手なものに手を付けたい。
勉強をしているわけでもないのに頭を使った気がしたせいか、腹が減った。
寝転がって皺になった制服のままカードキーだけを持って食堂に向かわず、まずは隣の北村の部屋へと行く。
コールボタンを連打するとすぐに北村はやってきた。連打するのは俺くらいらしく、カメラを確認しないんだとか。
風呂に入っていたようで濡れた髪の毛をタオルで拭いていた。
お構いなしに「腹減ったー」と言えば、北村は面倒くさそうに眉を寄せる。
「待って、用意する」
「早くね」
常々「お前は我がままだ」と言われるが、その我がままを受け入れているのは北村本人だ。昔から一緒だと家族以上に我がままを言ってしまう。ましてやこいつは生徒会でも一緒だし。
まだまったく乾いていない髪の毛をそのままに、北村はシャツだけを変えて出てきた。さすがに風呂上りとあっていい匂いがする。
俺の目線の高さにある北村の黒い襟足からポタポタとしずくが垂れて、シャツを少しずつぬらし始めた。
もともと男の色気をまとう北村なのに、今は濡れそぼっているからさらに色気が増殖されている気がする。
会長である松浦が体も顔も男前過ぎるが、こいつはこいつで負けていないと、俺は思っていた。だからすでに親が決めた婚約者がいるということがあまりにも勿体なくて。高等部を卒業とともに入籍らしいが、初等部から男だらけの学園にいて、中等部からは寮に入ってさらに男だらけの日常。
人生もっと遊んでもいいんじゃないかと思う。
バチはあたらないぜ、北村よ。
食堂へ着き、席に座ってタッチパネルに付属されたカードリーダーにカードキーを差し込み、今日のメニューを確認していると食堂がざわつき始めた。この色めいたものを含むざわつきは大抵決まっている。松浦か南、そして風紀委員長の3人くらいだった。
入り口を見ると案の定、松浦が入ってきていた。
いつもと違うのは松浦の隣に見たことのない男が一緒にいることだった。サラサラした黒髪の男はだるそうな表情を浮かべ、松浦が熱心に話しかけているようだったが、まったく興味なさそうだった。松浦があんなに熱心に話しかけられたら他の生徒だったら泣いて喜ぶだろうに。
それにもっときりっとしていればいい男なのに、やる気のない感じが男の価値を下げているように見えた。
松浦がそんな態度を取られるのが珍しくてちょっと笑ってしまう。
だんだんと俺たちに近づいてきて分かったのが、ブレザーの校章横についた学年章が青色だったこと。
俺たち2年が赤色で、青色は1年の色だ。
「あれ、もしかして会長補佐? 知り合いなのか?」
「松浦が一方的っぽいなー」
北村も松浦たちを見ていたようで、やはり学年章に注目したようだ。
もしかしなくてもそれで合っている気がするが、なんでまたあんなにやる気のなさそうな男を選んだのか心底不思議だった。
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