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しおりを挟む今日は月が明るい。空気も澄み切っているため、暗いはずなのにいつもより道が歩きやすい。
昨日、魔術師と出会った時間よりも遅い時間ではあるが、またここを通らないかな、なんて淡い期待を持ちながらダラダラと納屋を目指した。
会ってどうするわけでもない。自分から話しかけるなんて出来やしない。ただ、あの光る瞳が気になったし、日常からかけ離れた昨日の事柄は、興味というものをヨリの中で芽生えさせてくれていた。
薄暗闇で、冷たい風のせいでざわめく木々の中、水色ローブの魔術師は昨日と同じようにゆらゆらと現れてくれた。ローブで顔は見えないが、歩き方があの魔術師のものだった。魔術師ははじめからヨリに用事でもあるのかと思うくらい、舗装された道をそれて獣道を歩き、ヨリのもとまでやってきた。自分が望んでいたことが現実となったため、なにか勘違いでもしそうになってしまう。
「こんばんは」
「あ、こん、ばんは」
まさか挨拶もされるとは思わなくて、失礼のないよう今日はしっかりとお辞儀もした。
こんな夜でもフードをしっかりと深めにかぶっているため、口元がかろうじて見えるくらいだ。表情はまったく読み取れない。
ずい、と一歩近づかれ、距離が近くなる。少し仰け反ってしまうが、そのとき揺れた右手を魔術師に取られてしまった。
まじまじと見られ、「結構状態もいいね。中も確認させて」と言われた。
いいともダメとも返事をしていないのに勝手に温かなものを送ってくる。ヨリの返事など待つ気もないようだった。
「また荒れているね。やっぱり一回では癒しきれない」
「で、でも、今日、痛くなかったです。本当です!」
魔術師様が落ち込んだのかと思って咄嗟に、空いている手で未だに温かなものを送っている魔術師の手を握った。
あかぎれが治って指が痛くないのは本当だし、初めての事だらけでとても嬉しかった。
まさか王宮に勤める人に出会え、しかも魔術を使ってもらえるなんて、きっと一生ないことだったろうから。
精一杯目を輝かせた。それに、これをやってくれているときの魔術師の緑色の瞳はキラキラと輝いていてとても綺麗だった。大きいフードで隠れていた目元。それなのに、今このときだけ緑色の小さな星が廻りに瞬いているように輝いて見えた。ある種自分だけの特権のように勘違いしてしまう。
色がないとも思わなかった人生だが、この魔術師に出会って代わり映えのない景色に輝くような色でも付いたように見えた。
「別に、癒しの力など本当はどうでもいいのだけどね」
「あ……」
みっともなく縋るように言ってしまい、魔術師は自分に何も求めてはいなかったのだと恥ずかしくなった。握っていた手も離し、握られている右手も居心地が悪くてもぞもぞと動かした。しかし魔術師の手を握る力は強くて逃げることを許さないようだった。手の甲に当たる、すらりとした魔術師の指に納まっている銀輪が少し痛かった。
「鍛錬に励めと煩いから」
何が煩いのかも聞けず、温かなものが体に入ってくるのが再開した。手だけではなく、体中を巡る。
どこかゾワゾワと産毛でも撫でられているような、くすぐったい気持ちにもなった。
「あ……」
体中、巡るそれが下腹部に廻ったとき、どうしようもなくジクジクと熱を持ち始めたモノにどうしたらいいか分からなくて足をもじもじとしてしまう。
本当に変な気分だった。熱を持った性器は布を押し上げ始めているのに、恥ずかしいだけで嫌じゃないのが怖かった。
体を巡る温かくふわふわとしたもの、内側から熱を持って全身に広がる。
腿の内側が震えてうまく立てない。崩れそうになるとそれを待っていたかのように、魔術師が危なげもなく抱きかかえてくれた。
思わず体の力を全部抜き、目を閉じてしまう。繋いでいた手が離れたためにもう新しく魔力は流れてこないが先ほどまで巡っていたものがまだゆっくりとヨリの血肉を這うように蠢いていた。
「……は、ぁ……」
「ふむ。キミは妙に力の入りがいいね。僕の癒しの出来がいいと錯覚してしまいそうになる。こんなに簡単に全身に広がるはずないんだけどな」
「……え?」
魔術師に寄りかかり、ぼんやりとする頭で聞き返すが、もう一度言われたところで理解は出来いだろう。
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